対峙した青年は、息をのむほど綺麗な顔立ちをしていた。
憂いを帯びたその表情に笑いかけて、右手を差し出す。




「……あなたが、ザックスの親友ね?」
「…………すみません」
「謝らないで。あの馬鹿、何回人生やり直しても、多分同じことしてたと思うから」




絶対に友達は裏切らない、ザックスはそんな男だったから。


ザックスが命を懸けて助けた人がいると、レノから聞いたのはつい最近だった。
2年前に星を救い、そしてこの間また星を守った青年。


何でもバハムートがエッジを襲って大騒ぎになったらしいけれど、その時エッジにいなかった私にはいまいち現実味がない話だ。
地質調査でミディールの方に赴いていた私を出迎えたレノが、この青年のことを教えてくれた。


会いたいなら紹介してやると言われた時、正直迷った。
私にとって、ザックスはいまだに昔のことではなかったのだ。


いつの間にかいなくなっていたエアリスのことも気にかかっていたし、退職したからといって神羅と完全に縁を切れるわけでもない。
生活のあちこちにザックスの記憶がよみがえるこの7年間、心のどこかがずっと重苦しかった。


星を救ったという目の前の青年は、英雄というにはあまりにも細く小さな身体だった。
あまり話上手とはいえない彼の、とつとつとした語り口は、かえってその旅の大変さを物語る。


私よりも年下のこの青年が、世界の運命を背負ったのか。
そう考えると、胸がつぶれそうになった。


   そう。エアリスも、死んだのね……」
「彼女の、一族の都で……」


優しい笑顔を浮かべていた彼女もまた、星を救うために死んでいったのか。
幸せそうに笑い合っていた2人を思い出してうつむくと、クラウドとレノが呼んでいた青年が苦しそうな顔になった。


「本当に   
「謝らないで」


すみませんと言いかけた彼を遮って、その綺麗な顔を見ながら小さく笑う。


「ザックス、最期は笑ってたんでしょ?」
「え、あ   はい」
「じゃあ、あなたが謝ることはない」


ザックスはきっと、あんまり後悔していなかったから。
後悔はただ一つ、きっとエアリスのことだけだったから。

2人が再び会えたなら、きっともう後悔なんてどこにもないんだろう。


「それに、どうして私に謝るの?」
「それは   


口ごもるその様子で、直感的にレノが何かを言ったんだろうと察しがついた。


あの野郎、後で仕返ししてやる。
引きつりそうな口元を必死にセーブして、クラウドの手を握る。


「レノの言ったことは華麗にスルーしてくれて構わないから。あの阿呆が何を言おうが、信じちゃ駄目よ」
「はあ……」
「とにかく、クラウドは悪くない。君が生きていてくれて、本当によかった」


それだけは真実掛け値なしに思っていたから、自然に微笑むことができた。


「君がいたから、私はエアリスもザックスも幸せなんだって知ることができたもの」
   
「会ったんでしょ?」


この間。


それはクラウドの幻覚だったのかもしれないけれど、私は本物だと信じている。
ライフストリームというところで幸せならば、もうそれでいい。


「何だかすっきりしたわ、ありがとう」


死に際を看取った彼と話をして、その後の彼の話を聞いて、ようやくザックスは死んだのだと納得できた気がする。
死んでも彼を見守ってくれているのだと知って、あいつらしいと苦笑がもれた。


「死んでからもお人好しなんだから……困っちゃうわね?」
「……ザックスは、そういう奴だから」
「その通り」


顔を見合わせて笑い合い、ちょうどドアを開けて顔を出した迎えのレノに手を上げる。


「それじゃあまた、いつか。今日はありがとう」
「こっちこそ」


握手を交わして踵を返したところで、ふと気づいて振り返った。


「星を救ってくれた   一般的に言えば、英雄ね。ありがとうと言うべき?お疲れ様、と言った方がいいのかしら」
「……もう、わかっているだろう?」


苦笑したクラウドに微笑んで、最後に一言。




「ザックスの夢、英雄になることだったって   知ってた?」
「え   




知らずにその夢を引き継いでくれたクラウド。
そのことが無性に嬉しかった。




「ザックスの命。無駄にならなかったのよ」




君がしっかりと、受け継いでくれた。


人は死んだら、ライフストリームに行くのだという。
私が死んだら、頑張って探してみよう。


「本当にありがとう、クラウド」


それ以上後ろを振り返ることなくドアを閉めて、レノのバイクの後ろにまたがる。


「もういいのか?」
「うん。わざわざありがとう」


投げられたゴーグルを手早くつけて、目の前の腰をしっかりとつかんだ。


「行って」


激しいエンジン音と土埃で、クラウドと会うためだけに訪れたコテージが霞んでいく。




「…………さよなら」




呟いた声はやっぱりかき消されて、誰にも届くことなく終わった。







さようなら、ザックス

(今度はきっと、笑顔で声をかけられる)