ひとまず夏目君とニャンコ先生は先に帰して(早く帰らないとおばさんが心配してしまう)、私一人だけで椎名君の尋問(間違ってないよね?尋問だよね、これ?)を受けることになった。
場所はもちろん、地獄堂。
の、何故か私の部屋だ。
男の子なんて、夏目君しか上げたことなかったのに!
いくら小学生とはいえ、なんか嫌だ!
「……で?さん、幽霊とか見えてたわけ?」
「ゆ、幽霊は見えないよ」
「じゃあ、あれは何?」
「…………妖。私はそう呼んでる」
妖怪なんて、何だか彼らに失礼な気がしたから。
「ふぅん……。じゃあ、あの真言と呪符は何?」
「オヤジさんから習ったの。私は見えるだけで、祓う力は持ってないから」
真言は覚えるのが大変だったけれど、リズムに乗ってどうにか暗記できた。
いくつかバリエーションはあるけれど、自分の身を守る系以外のものはどうもいまいちだ。
危機感が足りないんだよね、多分。うん。
「オヤジがねえ……」
うさんくさそうに、でも納得したように鼻を鳴らした椎名君は、私にとっての一番の爆弾を投下してきた。
「 あの男の人、何してたわけ?」
夏目君の秘密。
レイコさんが遺した、友人帳。
言うわけにはいかない。
「……私の口からは言えない。夏目君の許可がないと」
「それだけ厄介なものってわけね」
ずばりと切り込まれた。
何なんだ、この小学生。
本当に小学生か、コナンみたいなオチじゃないのか。
「……まあ、そうかな」
曖昧にうなずくと、椎名君が目を細めた。
「さんはどうして、その手伝いなんてしてるの?」
「そんなの……」
そんなの、きまってる。
「私は、夏目君の友達だから」
助けられるなら、少しでも助けになるのなら、力になりたい。
それに、妖は、悪いものばかりじゃないから。
妖だからと、やたらめったら祓ってほしくない。
そんな思いで切れ長の目を見返すと、ふとその眼光が和らいだ。
「……さんは、いつからオヤジのところにいるの?」
「この4月……5月かな?それくらい」
「どうして?」
「拾われたから」
本当に「落ちて」、運良くあの人間離れしたオヤジさんに拾われた。
落ちたのがここじゃなかったら、今頃私はどうなっていたんだろう。
本当に運が良かったと思い出していたら、椎名君が不意に身を乗り出してきた。
「 俺のところに落ちてくれば、もっといい待遇だったかもよ?」
その目から溢れ出る色気にビビりながら、それでもかぶりを振る。
「オヤジさんのところに落ちて、幸運だったと思ってるよ。戸籍もいつの間にか作ってくれたし、こうして呪符をくれたり真言を教えてくれたりした」
「……そう」
あ、ちょっと残念そう。
それにしても、小学生にしてあの色気……只者じゃないな、こやつ。
将来はさぞ有望だろうと思いつつ、この妙に大人びた子供に敬意を表したくなった。
だって彼、本当に踏み入ってほしくない部分には、一言も触れていない。
「 今日買ってきたエロス、飲んでみる?」
ジュースではなく、紅茶。
多分、彼にはそれがぴったりだ。
そう訊いてみると、椎名君は器用に片眉をあげた。
「 喜んで」
私と椎名君が一歩近づいた、ある日のこと。
-----------------------------------
爽さんに捧げます!
この設定を使って、現在進行形で新しいお話を書いていたり(笑)
微糖のびの字もありませんが、喜んでいただければ幸いです。
椎名のキャラがつかめなくて、なかなか難しかったよママン!
そして、どうやったら夏目とこんなに深い友情を育めるのかが謎だよママン!!
|