ゆったりのんびりとくつろいでいたら、突然視界がぶれ始めた。
これはいつもの兆候かと、は慌てて荷物をひっつかむ。
「!?」
「ごめん、どこかに呼ばれそう」
「そんな !」
顔色を変えたセフィロスが、放すものかと言わんばかりに彼女の腕をつかむ。
反対側を慌ててザックスもつかみ、クラウドもその手を握り 。
そんなことをしても無駄なのだと彼女が言うより先に、いつもの感覚が訪れた。
少しの目まいと立ちくらみのような症状は、最初の頃によくあったそれと同じものだ。
ずいぶん久しぶりの世界に来たのかと周囲を見回そうとしたは、その格好のまま絶句した。
「……どうしてあんた達、くっついてきてるの?」
「人間、やれば何でもできるものだな」
「こら!そんな事言ってもだまされないんだからね!」
何故かひっついてきたソルジャーズ、彼女の腕をつかんだままのセフィロスの頭をはたく。
その反対側では、ザックスがのんびりと上を見上げていた。
「こりゃあ……セトラの都だな」
「ザックス、知ってるのか?」
「こんなとこは見たことないけど、雰囲気からいってまず間違いねえだろ」
クラウドも割と平然と話しているところを見ると、知っている場所ということもあってか、この異常事態に早くも順応したようだ。
喜ぶべきなのか悲しむべきなのか、としては悩むところだ。
「うーん……でも、単に空間移動したにしては、何だか変な感じだったんだけど……」
一体何が違うのかと首を傾げたは、次の瞬間背後からの殺気に素早く反応した。
全員が同時に身構えながら振り向いて 。
「 俺?」
「はぁ?」
「……どういうことだ?」
「ああ…………こういうことね……」
跪いた状態で目を見開くエアリスと、臨戦態勢殺る気満々な見覚えのあるパーティーを見て、だけが疲れたように呟いた。
何がなんだかわかっていないソルジャーズに、がくるりと指を回して注意を引く。
「ここも百万世界の一つ。まあ、みんなを基準に言えば、パラレルワールド 」
「セフィロス、覚悟!!」
彼女の臨時教室は、しかしクラウドB(便宜上こう呼ぶことが、この時の中で決定した)の殺気にあふれる声で遮られた。
エアリスを飛び越えて迫るバスターソードにセフィロスが反応するよりも早く、の剣が攻撃を防ぐ。
「ちょっと落ち着きなさいな、クラウド君」
「お前は お前達は誰だ!どうしてセフィロスと一緒にいる!?」
「どうしても何も、こっちもいきなり呼ばれて引っ張りこまれたんだって。召喚獣じゃあるまいし、ティータイムが台無しだよ」
ほんのちょっぴりミルクティーで汚れたクラウドのパンツを見ながら、早いうちに洗濯をしなければとため息をついた。
まるで私服姿のクラウド達と、旅をしています感ばりばりのクラウド達。
おかげで瞬時に見分けはつくが、たとえ同じ格好をしていても、達にはどちらがどちらかわかるだろう。
クラウドBは、ずいぶんと余裕のない顔をしている。
「 ん?クラウド、お前のその服、サイズ微妙に違うんじゃねえか?プロテクターも随分余裕があるし、パンツもベルトで調節 」
「……っ、ザックス!!」
クラウドBの格好の不自然さに気づいたザックスが言い切るより前に、我に返ったようなエアリスがその胸に飛び込んできた。
想定外の相手からの反応に驚きつつも、しっかりと受け止めているところは、流石というべきか。
「っぶねえなあ。どうしたんだ?エアリス」
「ザックス……ザックス……生きてた !!」
泣きじゃくりながら彼の名前を繰り返すエアリスに、ザックスは困ったように頬をかく。
「ええと……何これ、こっちじゃ俺って死んじゃってんの?」
「……みたいだね」
誰も答えようがない問いに、仕方がないのでが答えた。
小さく肩をすくめたを見て、ザックスはあちゃーと宙を仰ぐ。
「なーにやってんだか、こっちの俺……。ごめんな、エアリス。一緒にいられなくてごめんな」
「ザックス !」
「よしよし、文句でもパンチでも、代わりに俺が受けるから」
「馬鹿!馬鹿!馬鹿!馬鹿……っ」
泣きじゃくるエアリスと、髪をなでてなだめるザックス。
シリアスな雰囲気ぶち壊しの甘い空気に、クラウドBも気を削がれたようだ。
一応は剣を引いたものの、それでもまだ油断なく構えながら、ぎらぎらと光る瞳をセフィロスとに向ける。
「セフィロス 俺は、お前を殺すためにここまで来た」
「こちらのクラウドでは信じられないようなセリフだな」
「だな。一体何がどうなってるんだ?」
さっぱりわけがわからないクラウド達に、唯一全ての事情を知るがざっくりと答えた。
もちろん、クラウドBのパーティーに対するシールドはばっちり展開済みだ。
「こっちのセフィロスがちょっとグレて、悪いことしちゃったんでしょ」
「…………、すまない……」
珍しく傍目にもしおしおとうなだれたセフィロスが、の手を握って落ち込んだ声を出した。
こちらの自分が可愛い(に関しては時々くびり殺したくなる)弟分に殺したいほど憎まれるようなことをしでかしたのが、よほどショックだったのだろう。
そう考えたの内心とは全く逆に、これで彼女に嫌われはしないだろうかと心配になっただけだったのだが。
そんなセフィロスに驚いて声も出ないクラウドBご一行を尻目に、は優しくその頭をなでる。
「セフィロスが謝ることじゃないでしょう?こっちのセフィロスは、きっとちょっぴり愛情不足だっただけだよ」
「 こちらの俺も、愛してくれるか?」
「もちろん!セフィロスには変わりないんだもの。最初の頃のツンツン状態が酷くなったと思えば、どうってことないよ」
不安そうな目をしていたセフィロスは、その言葉で安心したように細く息を吐いた。
その様子を凝視していたクラウドBが、警戒心むき出しでに尋ねる。
「あんたは 誰だ。セフィロスの恋人か?」
「まさか!」
「じゃあ、どうしてそいつと一緒にいる!どうして俺の邪魔をする!?」
どうやらこのクラウドB、自分の知るセフィロスとここにいるセフィロスが別人だという区別がついていないようだ。
目の前しか見えていない余裕のなさっぷりに内心ため息をついて、は晴れやかな笑顔を浮かべた。
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