「自分の愛息子を守ろうとするのが、そんなにいけないこと?」


ぎゅうとセフィロスを抱きしめ、は高らかに宣言する。
ぎしりと固まったクラウドB達を尻目に、セフィロスも嬉しそうに彼女の肩を抱いた。

今までのセフィロス像を木っ端微塵に打ち砕かれたクラウドB達は、もう砂になってしまいそうな勢いだ。


   セフィロス、すごくいいね」
「だろ?のおかげだよ、の」
「誰かさんと違って、私はしっかり厳しく躾けましたからね」


エアリスの言葉にザックスが笑い、それを揶揄するようにが口を挟む。
一人マイペースなエアリスは、セフィロスをきちんと区別できているようだった。
そこでようやく立ち直ったらしいクラウドBが、武器を取り落としそうな勢いでおそるおそる口を開く。


「あ……あんた、何言ってるんだ?」
「セフィロスはジェノバが母親だって   !!」


悲鳴のように後を続けたティファに苦笑して、はそういえばクラウドBがそんなことを言ったのかもしれないと考えた。
どこでジェノバ=母親説が確定したのかはもう記憶が定かではないが、カームの回想の時点でムービーは流れていた気がする。
どうせその線だろうと当たりをつけて、ははんと鼻を鳴らした。


「あんな人だか魚だかよくわからない物体が母親?冗談じゃない、セフィロスは名実共に私の息子です」
「俺を騙って色々しでかしたあれが母親?冗談じゃない、迷惑しかこうむっていないぞ」


母親はだと胸を張るセフィロスに、ヴィンセントが微妙な表情をしたが、それはそれ。
むしろジェノバを殺る気満々な達に、クラウドB達は戸惑いを隠せないようだ。
ようやく戦闘体制を解いたクラウドBが、困ったようにザックスに視線を向けた。




「その   ザックス、だったか?どうして俺を知っているんだ?」




とても微妙な表情のクラウドBに、ザックスの方がショックを受けたようだ。
慌ててクラウドBに駆け寄り、がっくんがっくんとその肩を揺さぶる。


「ちょ、ちょちょちょちょい待てクラウド、お前俺のこと忘れちゃったわけ!?」


あまりにも激しく揺さぶりすぎて、クラウドBの顔色がどんどん悪くなっていく。
それにも構わず、ザックスはクラウドとの思い出を赤裸々に語り始めた。


「ザックスザックスってヒヨコみたいに俺の後ついてきたし、任務がうまくできなくて俺の部屋に来て泣いたりしたし、元気出せって酒飲ませたらビール1杯で酔いつぶれたり俺の真似してバスターソード振り回そうとしたら逆に   
「ザックス、もうやめてくれ……!」


怒濤のように過去の恥をさらしていくザックスを、クラウドが赤いのか青いのかよくわからない顔色で遮る。
知らない過去に興味津々だったは残念そうだが、彼女に聞かれること自体が恥ずかしすぎてたまらなかった。
そんなクラウドの叫びでザックスがぴたりと動きを止め、脳みそをシェイプされまくっていたクラウドBも吐き気をこらえて一歩離れる。

それでもまだ思い出しそうにないクラウドBに苦く笑い、がすいと手を差し伸べた。


「知りたい?彼が誰なのか、どうして自分の記憶にないのか」
   あんたが、それを教えてくれるとでも?」
「君が望むなら。……とてもつらい、受け止めきれないほどの真実かもしれないけど」


原作では受け止めきれず、壊れそうになってしまっていた。
だからこそ、はクラウドに精神の鍛練を積むよう指導したのだ。
けれど、このクラウドBは   はたして、どうだろうか。


冷静な表情の下で目まぐるしく計算をしつつ、はどうするかと再度問いかける。
長い間ためらうようにその手を見つめていたクラウドBは、やがておもむろに自分の手を重ねた。


「俺は何があっても揺るがない。自分の知らない過去がある方が気持ち悪い」


その言葉に、思わずの頬がほころんだ。

やはり、世界は違えど彼は彼。
根本はどこも変わりはしない。

それが無性に嬉しくて、一層優しく記憶を呼び起こそうという気になった。


「何があっても、恐れないで。君が君であることは、そこにいるティファと私達が誰よりも証明できるから」


   ほら、思い起こしてごらん。
そのバスターソードは、一体いつから持っていたんだっけ?


ジェノバに汚染された記憶の中から、小さなクラウドが必死に抱き締めて守っていた思い出を拾いあげていく。


給水塔での約束の時、ティファを独り占めできたような高揚感を味わったこと。
ティファの後を追いかけて、ニブル山に入ったこと。
懸命に歩いて行く彼女が心配で心配で、気が気でなかったこと。
ソルジャーになろうとミッドガルに行って、あまりの都会ぶりに思わず立ちすくんでしまったこと。


そして   そして?




ソルジャー試験に臨んだけれど   圧倒的なレベルの差の前に、あっけなく1次選考で落とされた。




「う……あ……っ!!」
「大丈夫。君は君、思い出がそう語りかけてくるでしょう?」
「だが……俺は   !!」


恐れないで。
そうささやいて、は次の「クラウド」へと接触する。
少年のクラウドから、もう少し大人びたクラウドへと。


夢が破れたまま、それでも希望を捨てきれずに、神羅の一般兵へとなった。
訓練がきつくて、何度も吐きそうになった。
実際、何度吐いたか知れない。
自信も何もかも失いかけ、それでも故郷に帰ることは意地が許さず。


そんな時、任務で一人のソルジャーと出会った。
あのソルジャーは明るくてとても強くて、そして自分に気さくに話しかけてくれた。
田舎者同士だなと笑って、そして   


   あのソルジャーの名は、何だった?


「っ……が   ぅ……っ!!」