弾けるような笑顔で花の絨毯を踏みしめて。
僕らの後には幸せな道ができる。






トリックスター






「さあできた」


満面の笑顔でそう言われて、ようやく動くことができると首をばきばき鳴らす。
萩はあんまりいい顔をしなかったけれど、だって鳴っちゃうんだもん!


「萩君、どうなってるの?」
「鏡、見てみる?」


実に楽しそうに言われて、嫌な予感がしつつもこくりとうなずいた。


   姿見、持ってきてもらえますか?」


萩の指示ですぐに姿見(というか立派すぎる巨大な鏡)が用意されて、そこに映った自分の外見に声が出ないほど驚いた。


「萩君、さすがだね……」
「でしょう?」


跡部達にも見せておいでと促されて、勢いよくうなずく。
そのまま急いで走って行くと、満面の笑顔の侑士に抱きとめられた。


「ちょ、侑士?」
「めっっっちゃ可愛えやん、!!」


ぎゅうぎゅうとそのまま抱きしめられて、ちょっと痛くて眉を顰める。




「何やってやがる、忍足」


べったまの一言で急に楽になった。
と思ったら、宍戸とがっくんが侑士を沈めていた。


……そうだよね、こんな役回りだよね、侑士……。


「似合うじゃねえか」
「ありがとう。わざわざ用意してくれたんだよね」


超ミニと言えるかもしれない丈の、黒のワンピース。
太ももが出るのは死ぬほど恥ずかしいけど(見せられるほどの細さじゃないよ!)、べったまがわざわざ作らせたというのがわかりきっていたから、笑ってお礼を言った。

単なる黒のワンピじゃなくて、あちこち凝っててハイニーソがよく合う。
ざんばらに見える袖のひらひらがものすごく可愛い。

つまるところ、着るのがもったいないほど可愛いんだ。


ウェーブがつけられた髪は、上の方だけまとめてカボチャ色のコサージュを。
本当に美容部員だよ、萩……!


「髪伸びましたね、さん」
「そうなんだよねえ。何にも考えてなかったからそれほど気にしてなかったけど、パーマかけてもこんなに長さあるんだね」


そう笑うちょたは、赤いカラーコンタクトをいれた神父様。
銀に赤って……カヲル君?(違うって)


べったまは吸血鬼だし、がっくんはチェシャ猫だし、侑士も宍戸もヒヨもみんな仮装している。
樺地のフランケンは泣きそうなほど似合ってた。





可愛らしいバスケットを手渡されて目を瞬かせる。
横を見ると、がっくんとジロちゃんも籠を持っていた。

わくわくとしているのが丸見えなその様子に、思わず頬がほころぶ。
そんな私に、べったまがにやりと笑った。




「行こうぜ、ハロウィンだ」












お屋敷中を歩き回って、行く先々でドアをノックする。


「Trick or Treat!」


笑顔でそう言えば、お屋敷で働いている人達も笑顔でお菓子をバスケットに入れてくれた。


「お嬢様、どうぞ」
「ありがとうございます」


色とりどりの小さな飴、ビスケット、クッキー、チョコレート。
カラフルになっていく中身を見る度に、顔がゆるんだ。


「すっげー!」
「なあなあ跡部、これって屋敷中こんななのか?」


こちらもバスケットをお菓子で満たしたジロちゃんとがっくんが、目をきらきらさせながらはしゃぎ回る。


「跡部の家のプライベートな場所以外はな。大抵の部屋に使用人がいるから、はずれはねえだろ」
「よっしゃー!!」


喜び勇んで駆けて行く2人を、ヒヨと宍戸が呆れたように見送っている。
それに目を細めながら見ていると、不意に横からこっそりとささやきかけられた。
横を見れば、柔らかく笑った萩。


「楽しい?」
「うん!」


あの後キョンシーに着替えて合流した彼に訊かれて、大きくうなずいた。


メイドさんや執事さんたちも、きっと今日のお仕事がちゃんとある。
それでもこうやって、私達の楽しみに笑顔でつきあってくれる。

こんなに幸せなことって、そうそうない。
髪の毛と一緒に、心までふわふわと跳ねていく。


「景君!」


ポケットマネーでここまで凝ったことをしてくれたべったまに呼びかけると、楽しそうに口元をつり上げながら振り向いてくれた。
その顔に思いっきり笑いかけて、心からの言葉を。


「ありがとう!すっごく楽しい!」
「……当然だろ?」


すごく満足そうな顔が、この上なく嬉しかった。












さて。戦利品の宴だー!!」


高々と拳をあげながら宣言すると、お子様組が呼応するように飛び跳ねる。


「すっげえ量だよな、これ」
「このバスケット、結構大きかったんですけどね」


こんもりと盛り上がった山×3を見て、D1コンビが苦笑した。
萩は綺麗な指先でキャンディーを1個つまんで、光に透かしたりしている。


「……何やってるの?」
「見てみなよ、こうやってみると綺麗だよ」


にっこりと笑いながら促されて見てみると、確かにセロファンの中で飴がきらきらと透き通っている。


「こりゃ、なかなかのもんやなあ」


横で侑士も同じようにして、感心したような声をあげた。


、食わねえの?」


ビスケットをがぶりと頬張ったがっくんにクッキーを差し出されて、思わず2人と顔を見合わせて笑ってしまう。


「岳人は食い気たっぷりやなあ」
「当たり前じゃんか!跡部んちのお菓子、どれもすっげえ美味いんだから」
「確かにおいしいよね、景君ちのお菓子って」


きっとどこか高級なところのなんだろうなあ……。
このチョコ1個で、一体アイスがいくつ買えるんだろうか。


ノンアルコールのシャンパンと籠いっぱいのお菓子で散々騒いで、その日はみんなで仲良くお泊まりした。


てか、部屋のベッドがクイーンサイズとか、ほんとありえないから……!
人生の初体験でした、うん。