これで全ては大円団だし、の役目もおそらくは完了した。
さて帰るかと荷物をまとめていると、ひどく慌てたハウルが部屋に飛び込んでくる。
「、一体何をしているんだい!?」
「何って……いつ飛ばされてもいいように、荷物の整理」
まだ世界からの呼び声は聞こえないが、いつ何時やってくるかわかったものではない。
荷物を全部置き忘れてきましたなどという大惨事は、何がなんでも避けたかった。
「帰る前にはなるべく一言挨拶するようにす 」
「駄目だ」
荷物を整理する手を止めずに話していたを、ハウルが強い口調で遮る。
きょとりとしたの目は、もうすでに別れを前提にしたものだった。
そんなこと、 許さない。
ぎりと奥歯を噛みしめながら、ハウルはもう一度強い語調で繰り返す。
「駄目だ。、傍にいてくれるって言ったじゃないか」
放すものか。
やっと見つけたんだ、大切な存在を。
そんなハウルに、は少しだけ悲しそうに目を細めた。
「私の一存で残れるわけじゃないんだよ。世界の干渉はいつも突然で、私もラピスも抗いきれないんだから」
離れたくないと願っても、泣きながら抱きしめても、最後には必ず引き離されてきた。
そんな別れを何度も繰り返し、彼女はこうして受け入れたのだ。
そんなを強く抱きしめ、ハウルは低い声で呟く。
「放さないよ、。どんな手段を使っても、君をここにとどめてみせる」
「ハウル、それは」
「絶対だ」
呪文のような呟きに戸惑いながら、が小さく身をよじった。
「ハウル、それは私にもどうしようもないんだよ」
「それでも」
「 世界が決めることだから」
期待をもつのは残酷なだけだとたしなめたに、馴染みすぎた声が口を挟んだ。
今しばらくは、ここにいるのもいいのでは?
「……ラピス?」
この子供は、君が手に入らないと世界を壊しかねないしな。
「……でも、世界が」
しばらくはどこも干渉する気はなさそうだ。息抜きだと思って、数十年ほどはここで過ごすのもいいだろう。
私達にとっては瞬きのような時間だろう?と言われ、それはそうだけれどと口ごもる。
確かに数十年ほど定住してもいい気はするが、その間に喚ばれないという保証はない。
別れにおびえながら日々を過ごすのは、精神衛生上とてもつらい。
だからこそ、は数えきれない別れを受け入れてきたのだから。
、何をためらう。私は君の願いを尊重すると、いつも言っているだろう?
世界の干渉から君を隠す。
君が安らいで、一息つけるように。
だから素直になれと背中を押され、は泣きそうになりながらうなずいた。
「……ここに、いたい」
まどろみのように優しい人達と共に過ごしたい。
たとえ一時の休息でしかないとわかっていても。
ずっとずっと戦いの中に身を置くのは、 少し疲れてしまった。
ぽつりと呟いた瞬間、ハウルに腰をさらわれた。
とっさに抵抗する間もなく、そのまま強く抱きしめられる。
「!ここにいてくれるんだね!」
「うん、そうするつ 」
「ああ、!」
そのままワルツでも踊り出しそうな様子で嬉しいと叫び、ハウルはを横抱きにすると階段を駆け降りた。
「ソフィー!ソフィー!!マイケル!」
ソフィーが2回でマイケルは1回のあたり、扱いの違いが透けて見える。
そんな(ある意味)現実逃避をしていたの耳に、とんでもない言葉が飛びこんできた。
「ソフィー、マイケル、僕達結婚するんだ!」
「まあ、おめでとう!」
「よかったですね、ハウルさん!」
「…………は?」
待て待て待て、ちょっと待て。
いつの間にそんなことになったんだ?
「ちょ、ハウル」
「式はどんな風にしようかしら。ハウル、式場はもう決めてあるの?」
「いや、どこかいいところは知っているかい?」
「ハウルさん、リサーチ不足ですよ」
「失敬な。そういうマイケルはどうなんだい?」
「僕は完璧ですよ、もちろん」
などそっちのけでわいわいと盛り上がる3人。
以前から大人びているものだと思ってはいたが、どうしてここでマイケルまで会話についてこれているのだろうか。
呆気にとられる(私の話も聞いて……!)にようやく気づいたのか、ソフィーが小さく声をあげた。
「そういえば も家族になるのよね?」
「え?ああ、そういう風になるのかな……」
テンションについていけないがやけっぱちで疲れたようにうなずくと、ソフィーは顔を輝かせてマイケルをつつく。
「マイケル、それならその格好はやめなきゃ!」
「そうですね。家族に嘘はいけませんからね」
「え ?」
妙に大人びた表情でうなずくと、マイケルが小さく印を切った。
途端にしゅるりとその姿が融けて、どんどん大きくなっていく。
そして。
「改めまして。 マイケルです、よろしく」
「……でか」
「よく知らない相手を油断させるには、子供の姿が一番ですからね」
すっかり青年(と少年の狭間の外見)になったマイケルにしれっと言い放たれて、何だかベッコリへこんでしまった。
よく知らないって言われた。
小さくて可愛いと思っていたのに。
そんなに、さらにソフィーが追い討ちをかける。
「私達、付き合ってるの!!達と一緒に式を挙げちゃうのもいいかもしれないわね」
「……さいですか」
見た目おばあちゃんのソフィーと少年から抜け出そうという域のマイケルが、一体どうやったら恋に落ちるというのか。
それ以前に、原作ではマイケルは15歳ではなかったのか。
……何かもう、好きにしてくれ。
あまりのフリーダムさに疲れ果てながら、が呟いたとか呟かなかったとか。
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