一番最初の記憶は、切れ長の綺麗な目。
「仲良くするのよ」ってお母さんに言われたけれど、そんな必要ないよって言われてるみたいな涼しい目だった。
お互いの親の手前、しばらくおもちゃとか知恵の輪とかで遊んでみたけど、そのうち自然に本を読んでいた。
私達の間に、子供らしい会話は必要なかった。
えー、私自身もお世辞にも子供らしいとは言えなかったし、正直ガキと話すのは疲れる。
なんとかレンジャーって何だ。
仮面ライダーがどうした。
プリティでキュアキュアな奴らがどうした。
それに、必要以上にしゃべるのも疲れる。
そんな私と妙なところで意気投合したらしい裕介は、気づけば立派な幼なじみという関係になっていた。
ちなみに、両親は「やっとにも友達が!」とか涙流して喜んでた。
余計なお世話だ。
さて、見目麗しい裕介は、小学校低学年の頃からモテモテだった。
そのせいで私にとばっちりが……くるわけもなく、遠くからモテっぷりを鑑賞して「すげー、芸能人も真っ青」とか面白がってました。
後で裕介にばれて無言で怒られました。
死ぬほど怖かった。
中学年ぐらいから、裕介はなんか有名なガキ大将とよくつるむようになったようだ。
合い鍵を使って椎名家に入ると、ぎゃあぎゃあと騒ぐ声がした。
ああ、うるさい。
これだからガキは嫌いだ。
「」
「お帰り、裕介。美麗ママからこれ預かってる」
昨日渡された極上プリンを手渡すと、あっという間にガキ大将たちの手に渡っていった。
どんだけ食い意地張ってるんだ、お前ら。
1ダースあるんだぞ、あれ。
「もう帰る?」
「それを私に訊く?」
騒がしいのを嫌う私を、正確に理解してくれている裕介。
それでも一応訊いてくれる裕介に微笑を返して、またねと手を振って家を出る。
寂しくないといったら嘘になる。
裕介がガキ大将に出会うまでは、私達はずっとお互いだけだった。
いくら学校できゃあきゃあ言われていようとも、ランドセルしょってるくせにお姉さんにナンパされようとも、愚痴を聞くのは私の特権だった。
でも、人は変わっていくもの。
裕介が私よりも大事な人ができたのは、とても喜ばしいことだ。
ああ、今日も裕介が女の子に囲まれている。
みんな何故か、手に手にラッピングを持っている。
ああ、そういえば今日はバレンタインだったか。
後で美麗ママ達にチョコを持って行かなきゃなあ。
涼しい顔してチョコを受け取っている裕介の周りには、もう甘ったるい匂いが充満しているに違いない。
哀れ、周囲の男子達。
でもね、これがイケメンと一般人の違いってものなのよ。
そして、イケメンには女の子の幼なじみなんていないのがデフォルトなのよ。
あいにくと、そんな憎まれ役を買って出てあげるほど慈愛には満ちていないからね!
しばらく(めんどくさそうに)女の子達の相手をしていた裕介は、「てっちゃん達と約束があるから」と早々と学校を後にした。
ちなみに、大量のチョコは後で加工した後、ご近所さんに配ってます。
有効利用、これ大事ね。
いつもいつもいつもいつもいつもガキ大将達と一緒にいる裕介。
あのね、幼なじみのよしみで、これだけは黙っていてあげる。
「椎名君って、実はてつし君と付き合ってるんじゃないの……?」
「え!?でも、新島君もいるでしょ!?」
「じゃあ、禁断の三角関係……!?」
男の子達が想像しているよりも、女の子の妄想力はたくましいんだよ。
知ったら閻魔様も真っ青な怒り方をするんだろうなあ。
まあ、私が言い出したことでもないし、一切口出ししてないから関係ないけど。
知らぬ存ぜぬを通せば済む話だ、問題ない。
それに、元はといえば、そんな風に噂されるほどガキ大将達とべったりな裕介に原因がある。
というわけで、今日も私は愛読書を片手に図書館に向かうのだった。
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