と、いうわけで。私たち全員の意見として、あなたにお願いしたいんだけど」
「お断りします」


即行お断りしたはずなのに、どうして私の名前が堂々と名簿に載っているんだろうか。


















「は?学園祭?」


どうしてそんなものを合同でやる必要があるのか。


「うちの学祭、別にあるじゃないですか」
「氷帝の跡部という生徒が企画したらしくてな……影響力が強すぎて、断りきれなかったらしい」




滅びてしまえ、そんな影響力。




「……先生、私、嫌だとはっきりきっぱり言ったはずなんですけど」
「うん、本人達も断られたとは言ってたんだがなあ。ただ、圧倒的に推薦人の数が多いし、無視するわけにもいかんだろ」
「私の意思は無視ですか、先生」


無視らしい、そうらしい。


「なんで私がテニス部付きの運営委員なんて……」
「そういう事を言ってるからだと思うぞー、先生」

「そうですよねそうでしたよね私ぐらいしかあいつらに色目使わない女子いませんもんね」


安全牌として生贄にされただけなんですよね。


この学校のあまりの適当さに頭痛を感じながらも、いい加減腹をくくるかとため息をついた。
   やるからには徹底的に完璧に。












「こんなに大規模な学祭なのに、2週間しか準備期間がないってのがまずおかしいのよね」


うちの学校、7か月前から準備してるわよ。


テニス部にあてがわれた会議室に向かいながら、会場の広さを確認していく。
一つ一つのブースがかなり広そうだ。
これは配置や店の種類を考えないと、かなり寂しい見た目になるかもしれない。


参加する学校は、全部で7校。
わざわざ千葉や神奈川からも来るなんて、本当に力が入っていること。

それにしても……市立の学校もあるみたいだけど、問題ないのかしら。


手元の資料を確認しながら首を傾げたところで、目的の会議室に到着。


確かにテニス部の顔がいいのは認めるけど、顔だけよくてもねえ……。
基本的に顔がよくて性格が私好みの男に会ったことがないから、多分縁がないんだろうと思う。
さて、精々頑張りますか。


よそ行きの笑顔を張りつけて中に入ると、もうほとんどの部員が集まっているようだった。

ていうか、部員の中で主な生徒だけ?
全員集まると到底この会議室におさまりきらないのはわかるけど、何だか微妙なチョイス……。


「おはようございます」


控え目で爽やかな笑顔で言ったはずなのに、何故か一様にげんなりした顔をされた。


……またファンが乱入してきた、とか思ってるのかしら。
それならそれで自意識過剰気味なお年頃だし構わないけれど、とりあえず私の立場を確立しなくては。


「青学テニス部付きの運営委員になりました、と申します。よりよい学園祭実現のため、精一杯お手伝いさせていただきます」


よろしくお願いします、と30度のお辞儀。


目立たず地味に有能に。
今回のコンセプトは「おとなしく控え目な清純派」。

全員からそれとなく距離を置くには、このキャラが一番効率がいいと思う。


「ふうん……よろしく、さん」


にっこりと完璧な笑顔でそう言ったのは、確か6組の不二周助。

優しそうで格好いいって評判だけど……うさんくさいのよね、この笑顔。
同類な気がする、この私と。

何をたくらんでいるやら、このお人は。


「はい。跡部運営委員長との連絡は、基本的に全て委員総会の際にさせていただきます。何かご不明な点や運営委員への要望がありましたら、その前におっしゃってください」
「わかったよ、どうもありがとう」


人のいい笑顔で答えてくれたのは、3組の大石君のはず。
それとも2組だったかしら。
クラスが多いと曖昧になって嫌ね。


微笑み返しながらそんな事を考えて、部長の手塚君が話しやすいように後ろに下がる。
目線でどうぞと促すと、一瞬だけ驚いたように軽く目を見張った手塚君が小さくうなずいて説明を始めた。


わかりきったその話を聞くともなしに聞き流し、この後の予定について頭の中で整理しなおす。


早めに模擬店を決めて委員長に報告して、必要な資材や機材を確認して手配。
あんまり模擬店が多くならないといいんだけど……。
勝手にやる方は楽しくていいかもしれないけれど、管理する方は大変で仕方ないもの。


それなのに、それなのにこの連中は!!




「それでは、模擬店は喫茶店と金魚すくい、綿菓子の3つでいいな?」




好き勝手やってくださりますね、本当に。


内心で頭を抱えたくなるのを必死にこらえて、手元の手帳に決定事項を書きこんでいく。


「了解しました。模擬店のスペースに関して、何かご要望はありますか?」


たとえば喫茶店なら階段の近くがいいとか、採光のいい所がいいとか。
綿菓子屋なら近くに遊戯スペースが多い場所がいいとか。
金魚すくいなら、水温の関係上北向きの場所がいいとか。

そんな意見を期待したのだけれど、特に要望はないようだった。


「綿菓子だから、そんなに広いスペースはいらないなあ」


これくらいで。


「それでは、各模擬店の場所などはこちらで選別させていただきますね」


なるべくいい場所をとるようにしますと微笑めば、不二君がよろしくね、とうなずいた。


……やっぱりうさんくさい。












委員長に模擬店決定の報告をして、ついでにあれこれ希望を言うと、ものすごくめんどくさそうな顔をされた。

多分注文が多いと思われているんだろうけれど。
やるからには徹底的にやらなければ、私の美学に反するわ。


これから約2週間、力の限りサポートしてやろうじゃないの。
相手が誰であろうと、実力は常に最大限発揮しなければ、ね?