はた。

はたはた。
はたはたはたはた。


さっきから絶妙なリズム感を刻んでいる尻尾をちらちらと見つつ、手に持っているものを揺らす。


はたはたはた、はた。
はたはた。
はた。


「……ユウ、やっぱりこれ、好きなんじゃないの?」
「ち……ちがうばか!べつにすきじゃない!」


この間シャレで買ってきた、毛でできたぽんぽんつきのねこじゃらし。
喜々として見せたら、ずべしとはたかれたのはよく覚えている。
もちろん私も冗談のつもりだったし、ユウが遊ぶとは思っていなかったから、別にいいんだけれど。


……耳をぴくぴくと動かしながら、尻尾でリズムを動かすこの様子は、どう見ても心惹かれているようにしか見えない。




「…………」




ひゅおん、とねこじゃらしを一回転させてみると、ユウの身体がびくりと反応した。
飛びかかりたいのを必死にこらえてるのが丸わかりだ。


「……ユウ、一緒に遊ぼうよー」
「やだ!」
「ちぇー……」


ねこじゃらしだと考えなくても、ラビットファーに似ているこの毛玉、結構お気に入りなのだ。
ぐにぐにと手でもてあそびながら口をとがらせて、仕方がないので口元にあてる。
もっふもっふの触感が気持ちいい。

頬にあてたり手でいじったりとしばらく遊んでいたら、ユウがじっとこちらを見ていた。


「……、それ、すきなのか?」
「うん?うん、好きだよ」
「ねこじゃらしなんだろ、それ」
「でも、この毛気持ちいいじゃない」


ファーものの手触りが大好きな身としては、このもふもふはたまらない。
もう一度頬につけてにへらと笑うと、ふいと横を向かれてしまった。


あら、馬鹿にされちゃったかな?


まあ仕方がないかと腰を上げて、お昼を作ろうとキッチンに向かう。
簡単にできるチャーハンを作って、ユウが用意してくれたお皿に盛り付ける。
シーフードたっぷりのチャーハンを食べながらも、ユウの視線はねこじゃらしにちらちら。


……気になりますと、態度で示していた。
それを本人は隠しているつもりなのが、またなんとも言えず可愛い……!


「よそ見して、どうかした?」
   なんでもない!」


そ知らぬ振りで訊いてみると、慌てて顔を戻してスプーンを動かす。
その後もやっぱりねこじゃらしが気になる様子を見せながらも、ユウはきちんとお片付けを手伝ってくれた。


もしかして、このままずっと我慢しっぱなしなんだろうか。
それはそれで少し寂しい。


そんなことを思いながらひょんひょん振って遊んでいたら、ユウがずずいと手を出した。


「……かして」
「遊ぶの?」


とうとうやる気になってくれたか!


嬉しくなって首を傾げると、ちょっぴり赤くなったユウにねこじゃらしを奪われた。
そのままがしがしと爪で引っ掛かれて、毛がふわりと少量舞う。


「あ、ああああああ!」


毛、毛が!
ファーが!!


「ユ、ユウ、もうちょっと優しく……!」
「しらない!!」
「うああああああ」


目をきらきらさせている様子はとっても可愛いけど、可愛いけど……!
楽しんでるのもものすごくわかるけど……!


「もふもふがはげてく……」


可哀相なもふもふ……。


しょんぼりと呟いて興奮しきりの尻尾を眺めていたら、まあいいかという気分になってきた。

ユウには滅多にお散歩をさせてあげられないから、どうしても運動不足になってしまうし。
その分、ストレスもたまるだろう。

ねこじゃらしで気分壮快になるなら、それもいいじゃないか。
ぼろぼろになったら、また買ってこよう。


「ね、貸して!」
「やだ!!」
「いいじゃん、一緒に遊ぼうよ!」


がっしがっしと夢中で遊ぶユウからねこじゃらしを奪還すると、ものすごく不満そうな顔で睨まれた。
おおう、凶悪だ。


ひょーんひょんと目の前で振ってみせれば、つられるように右、左。
それでも両手ではっしとつかまれて、そのまま上に持ち上げてみる。
みょーん、と、まるで猫のようにユウの身体も背伸びした。
足下がちょっぴりぷるぷるしているのが見えたから、おとなしく下に下ろす。


ぷるぷるしているユウは、もちろんとても可愛かったですとも!!


!」
「おっと、ごめんごめん」


ついにんまりとしていたらしい。
尖った声で名前を呼ばれて、再びはたりとねこじゃらしを動かす。
飛びつくように反応したユウを見ながら、喉がかわいたなあとぼんやり思った。

まあ結局、ユウが遊び疲れてお昼寝するまで、飲み物なんて飲めるはずがなかったんだけれど。