白い肌、青灰色の瞳、桃色の唇。
まじまじと見つめて、やっぱりそうだとうなずいた。


「ねえ、アレン」
「なんですか?」
「ちょっとスカート、はいてみない?」
「スカート?」


何のことだかわからなかったらしいアレンが、こてりと首を傾ける。
その可愛さに顔がゆるむのを感じながら、うなずいて繰り返した。


「うん、スカート」


スカートならば布をぐるっと縫うだけで済むし、手間もそんなにかからない。
既製品よりは数十倍見劣りがするだろうけれど、私が楽しむだけだから特に問題もないだろう。


アレンなら似合う。
絶対似合う。
今なら女装させれば、間違いなくとても可愛い女の子になる。


「私が今はいてるみたいな形のものだよ」
「……さむくないんですか?」
「寒くない寒くない。部屋の中なら暖かいし、大丈夫だよ」


冬の寒さを身にしみて実感しているから、アレンにはそこが一番重要だったようだ。
寒そうにしてないでしょ?と言い添えれば、頬をゆるめてうなずいた。


さんと、おそろい……」
「……うん、まあ、お揃いだね」
「ぼく、それ、はいてみたいです」


幸せそうに笑って呟いたアレンに、少しの罪悪感を覚えながらうなずく。
これで女の子の格好をするのだとわかったら、一体アレンはどうするのだろうか。

案外可愛いと言われたら喜ぶかもしれないとも思うけれど、このくらいの男の子は女の子扱いされるのを嫌がる気がする。


「じゃあ、ちょっと待っててね」


期待をこめて見上げてくる目に心の中だけで謝って、目星をつけておいた布をぐるりと小さい腰に巻きつけた。
このくらいかと適当に切って、適当に縫って、筒状にした上部にゴムを仕込む。
尻尾の位置はどうせはっきりしないからと、大きめにざっくりと穴を開けた。


「とりあえずこれで完成ー」
「すごいです、さん……!」


洋裁の基本のきの字も無視した方法と出来栄えだったけれど、アレンは目をきらきらとさせる。
その視線が純粋すぎてまぶしく感じるのは、きっと私が世間にすれすぎたのだろう。
ほぼ間違いなく。


「はいてみて、いいですか」
「うん。きつかったら教えてね」


パンツをぎこちない手つきで脱いでスカートをはくと、アレンはすっかり女の子仕様に大変身した。
髪が少し長いところが、また女の子に見せるのに一役買っている。


「どうですか?」
「可愛い!」


打てば響くようにウッカリと返事をしてしまって、即座にしまったと口を押さえた。
せめて「似合っている」程度でやめておけばよかったと思ってももう遅く、アレンがぎしりと動きを止めた後だ。


「かわいい……?」
「いや、その、あのね?」
さん、これってかわいいんですか?」


アレンの顔が怖くて見られない。
ものすごく怒っているような気がする。


微妙に目をそらしつつ何と答えようか迷っていたら、アレンがほてほてと近寄ってきた。


さん」


膝に小さな手が乗って、大きな目で見上げられる。
意外にも邪気のない表情でにっこりと笑顔を浮かべ、アレンはこてりと首を傾げた。


「これ、おそろいですよね?」
「え?   あ、うん」


戸惑いながらもうなずくと、アレンの笑みが深くなる。




「じゃあ、さんもかわいいですね!」




ち ょ っ と 待 て 。


どこをどうしたらそんな結論になるんだ。
これはあくまでも「女の子の格好をしたアレン」が可愛いのであって、「女の子の格好」が可愛いわけではない。
そんなことになったら、どんな筋骨隆々な男が女装しても「可愛い」ことになってしまうじゃないか。


「アレンアレン、それはちょっと違うから」
「だって、おそろいなんでしょう?」
「うん、そうだけど、でも違うよ」
「おそろいなら、かわいいのもいっしょですよね!」


いくら違うと言ってもわかってくれそうにないアレンは、ね!ともう一度満面の笑みを浮かべる。
これは駄目だと思いながら仕方なくうなずくと、大喜びで抱きつかれた。


さん、かわいいです!すごくかわいいです!」
「ああ、うん……ありがとう」


何かもう、好きにしてくれという心境だ。
こう何度も可愛いと連呼されると、恥ずかしくてたまらない。
それに全く気づいていないアレンは、嬉しそうに可愛いと繰り返すばかり。

自分はやっぱり寒いからとすぐにパンツに着替えてしまったけれど、ずっと私のスカートを離そうとはしなかった。


「アレン、ありがとう。もうわかったよ」
「だって、かわいいんですもん」
「うんうん、わかったよ」


だからもうやめてくれと両肩に手を置くと、アレンが残念そうにうなずく。
やれやれ、やっとこの気恥ずかしさから解放されるか。
ほっと小さく息をついたところで、アレンに再び裾を引かれた。


「ん?」
「ぼく、おとこのこですからね?」
「……わかってるよ」


どうしてあんなにしつこかったのかと思ったら、実はこっそり気にしていたのか。
苦笑して頭をなでると、銀色の耳が気持ちよさそうにそよいだ。
完全にかどうかはわからないけれど、ひとまず機嫌は直った……かな?