!お疲れ」
「ありがと!」


弾むような声で出迎えてくれたクラウドに笑って、歩いていた足を急がせる。


「わざわざ来させちゃってごめんな」
「こっちこそ、迎えに来させちゃってごめん」


ぱっとバッグを持ってくれたクラウドに、一瞬反応が遅れてしまった。


「い、いいよ!それくらい自分でもてるって!」
「でもこれ、重いだろ」


ずっしりとした重みを主張するバッグを一振りするクラウド。
重さでバッグが暴れている。


「そりゃ、軽いもんじゃないけど……いつも持ってるもん、どうってことないよ」
「げ……いつもこんなの持ってるのか?」
「それでも必要最低限だよ。もっと重い先輩もいるし」


むしろ、私はまだ軽い方なんじゃないかと思う。

もっと色々な論文やレポを詰め込んでいる人なんて、殺人級の重さだから。
医学辞典とか、バッグで人殺せるから。本当に。


「だから、平気。ほら」
「たまには楽しろよ」


返してくれと手を差し出しても、笑って相手にしてくれない。
ため息をついて諦めて、クラウドに任せることにした。


「お友達は?」
「まだいる。気にしなくていいよ、あいつ誰とでもすぐ仲良くなるから」
「ふうん」


ずいぶんと人懐っこいんだなと感心して、どんな人なのかと少し楽しみになる。


色々と話をしながら着いたクラウドの部屋は、思ったよりもごちゃりとしていて、やっぱり男の子なんだなあとおかしくなった。


「入って」
「お邪魔しまーす」


ドアをくぐればすぐに黒髪の青年が手を振ってくれて、さっき電話で話した人だとすぐにわかった。
クラウドにうながされながらその人の横に座って、小さく頭を下げる。


「初めまして、医務局のです」
「俺、ソルジャー1stのザックス!よろしくな」


太陽のように笑ったザックスは、ためらうことなく私の右手を取って上下に振った。


「クラウドのこと、よろしくなー。あいつあんな性格だから、仲良くなるのはちょぉっと大変だろ?」


悪戯っぽくそう言ったザックスの側頭に、空き缶がぱっかんとヒットする。


「痛って!!」
「変なこと言うなよ、ザックス!!」


顔を真っ赤にして怒鳴るクラウドが本当に年相応で、クラウドにもこんな風に言い合える相手がいたのかと安心した。

医務室に来るクラウドは、どんなに酷い怪我でも、いつも一人だったから。
もしかして孤立しているんじゃないかと、実はちょっと心配していたのだ。


、紅茶でよかったか?」
「あ、うん。ありがとう」


ミルクが多めのアールグレイはちょっと甘めで、多分これは私の分だけなんだろうと、何となく見当がついた。
そんなに特別甘いのが好みなわけじゃないけれど、その心遣いが嬉しい。


「でも、よくこんなに早く終わらせられたな」
「昨日までに8割方終わらせてたからね。後はもう実用段階に移すだけみたいな状態だったし、そんなにハードルは高くなかったの」
「……何かやっぱ、ってすごいよな」


かかってもあと2時間くらいだったと笑うと、クラウドがため息をついて呟いた。


「え?何が?」
「俺と同い年なのに、もうそんなに色々できて。神羅に入ったのだって、俺と一緒だろ?」
「ああ、うん、14だったかな」


神羅は実力主義だから、私みたいな若輩者でも、使えると思った案はどんどん採用してもらえる。
研究開発の予算も、うちの部署は多めに回してもらえているし。
普段ずっと研究しているようなものだから、割と頻繁に新薬の開発は進んでいるのだ。


「私はこれがお仕事だしねえ。昨日も言ったけど、専門が違うだけだよ」
「でも、俺は   
「クラウドは」


その言葉の先がわかってしまったから、クラウドが全部を言う前に遮る。


「充分、いろんな人の役に立ってるよ」


このミッドガルの治安を保つために、昼も夜も関係なく見回っているのは、一般兵だ。
本社内の警備もしてくれているし、武器を使えない私達の代わりに、いつも神経を張り巡らせてくれている。


「ありがとう、クラウド。クラウド達がいるから、私達は安心して暮らせるんだよ」


だから、卑下しないでほしい。
役に立っていないだなんて、そんなことありえない。


真剣な顔でそう言うと、クラウドが少しだけ泣きそうな顔で笑った。


「……ありがとう、
「もう、こんなこと言わないでよ?」
「ああ」


冗談めかしてその腕を叩いて、目が合ったザックスと笑いあう。


「なあ、俺にもお礼は?」
「えー……?ザックスのお仕事は、よくわからないもんなあ」
「え、俺、クラウドよりも危険な任務に就く割合は多いんですけど!!」
「だって、ソルジャーってよくわからないんだもん」


私が医務室にいる時間は、あまりソルジャーの人達は来ないし。
時間帯が時間帯だから、来るのは一般社員か、せいぜい訓練が終わった一般兵くらいだ。


「じゃあ、今から知ろうぜ!絶対感動するって!」
「えー、やだなあ」
ひでえ!!」


ふざけあってひとしきり笑った後、3人でいろんな話をした。


2人が話すのは普段聞けない話ばかりで、思わずくいついてしまいたくなるものばかり。
特にザックスは市街地のおいしいスイーツのお店もよく知っていて、今度仲間と行ってみようと頭の中にメモしてしまった。


「甘い物、好きなのか?」
「大好きってほどではないけど、それなりにはね。甘い物食べると気分転換にもなるし、幸せな気分になれるから」


多分それは何よりも、仲間と一緒にすごす時間のせいでもあると思うけれど。
そう思いながらうなずくと、やっぱりも女の子なんだな、と笑われた。