クラウドからの連絡を待ちつつ進むこと10日。
小さな村に宿泊したりはしていたけれど、大抵は野宿という日が続き、さすがに身体が辛くなってきた。


「次の村で、ちょっと連泊しよう……。身体もたない……」


げっそりと呟きながら、ライフルで休んでいる鳥をずどん。
今夜のお肉の確保終了だ。
携帯鍋でコンソメと一緒に煮込みながら、道中で適当に摘んだ野草も突っこむ。


「久々の鳥肉……!」


ウサギやら狼やらが続いていたので、これは冗談抜きで嬉しかった。

あ、次の村で銃弾補充しなきゃ。
固形食もなくなっちゃったし、ためてた毛皮とかアイテムとか、そろそろ売り時だろうか。


煮込み終わったスープをたいらげて寝る準備をしていたら、荷物の中からバイブ音が聞こえた。
もしやと思って慌てて出ると、思った通りに低めの声がする。


   、今どこだ?」
「ええと……シュピッツルから10キロくらい北にきたところ。わかる?」
「……森しかないじゃないか。無理するなよ、今コスタ・デル・ソルを出た」


呆れたようなクラウドの言葉の中に、またもや聞き捨てならないものが混ざっていた。
思わず焚き火の跡を踏みつけながら食いついてしまう。


「今!?何してるの、早く街に戻んなさいな」
「だから、大丈夫だって。こそ無理するなよ」
「次の村で待ってるよ。さすがに身体が限界」
「だろうな」


小さく笑ったクラウドは、携帯の電源を常に点けておくようにと言って切った。
私も手早く荷物をまとめて、最低限のものだけ持って樹によじ登る。
荷物を踏み台にするのはいつものことだ。


ごめんクラウド、私の足跡つきの荷物を運んでもらいます。












こんなところに村があっただろうかというような小さな村にたどり着いてクラウドに連絡すると、それからさらに4日ほどで合流できた。
早すぎると驚いた私に、これでもゆっくり来た方だとクラウドが肩をすくめる。


やっぱりバイク、いいなあ。
乗れればかなり楽に   いやいや、そうすると生態調査が荒くなってしまう。
ここはやはり、徒歩で行くのが一番だろう。


そんなことを思っていたら、おもむろにクラウドが後ろを向いた。


「ヴィンセント、頼む」
   わかった」
「え?」


クラウド一人かと思っていたけれど、どうやらもう一人いたらしい。
暗がりにまぎれて全然気づけなかった。

赤と黒の服を纏った不思議な雰囲気の人は、さっさと中に入って荷物を持ち上げてしまう。
それが2回分の荷物全てだったものだから、慌ててストップをかけた。


「お、重いって!いくらなんでも、その量は無理でしょう!」
「ヴィンセントは大丈夫だ。これくらいなら余裕で運べる」
「でも、1回で全部だなんて   


私が進む速度が遅かったのも、この荷物があったからなのだ。


   待てよ、だから2人で来たのか?
もしや一気に片づけてくれようとしたのだろうか。


「じゃあ、よろしくお願   
「頼んだぞ、ヴィンセント」


そう思い直してクラウドに手を振ろうとしたら、何故かその場でヴィンセントというらしき人を見送っていた。
ヴィンセントも心得たようにうなずいて、一瞬でその場から消えてしまう。

あの不可思議な消え方は何なんだ、一体。


「クラウド、あの人誰?」
「仲間だ。ちょっと変わってるが、いい奴だよ」
「ふうん……で、クラウドは一緒に行かないの?」


もう運ぶものはないよと首を傾げると、クラウドの青い眼が呆れたように細まった。


「俺は、あんたと行く」
「え?どうして?」
「……あんたなあ……」


さらに呆れたようにため息をつかれたけれど、私と行動しても運ぶものなど何もない。
仕事にならないとクラウドを見上げると、仕事にはなると返された。


「元々俺は、運び屋じゃなくて何でも屋だからな。今回の調査が終わるまで、のボディーガードをするよ」
「それはありがたいけど……他の依頼はどうするの?」
「別に、どうも。全てに必ず答えるってわけでもないしな」


断れば済むとあっさり言うけれど、こんな奴が実働部隊だと、さぞあの女の子は大変だろうと思う。
自由すぎるぞ、クラウド。


じとりと見つめても、クラウドはどこ吹く風だ。


「ティファにも連絡はしてある。割増料金を払ってもらえってさ」


待て待て待て。


話の流れからいって、ティファというのは最初に電話を取ってくれた彼女のことだろう。

それはいい。
それはいいが、ちょっと待て。


「何で私が割増を払うことが決定してるのさ!?オーケーしてないよね、私!?」
「あんたみたいに危なっかしい依頼人、荷物を運んではい終わりとはいかないだろうが。割増って言っても、精々俺の食費分を払ってもらうくらいだよ」
「食費かあ……」


1人あたりの食費は、どんなに多く見積もっても1日2000ドル程度。
それでこの先身の安全が保証されるなら、かえっていいかもしれない。

頭の中でシミュレーションをしてみて、別にいいかと結論を出した。


「うん、それならいいか。状況次第では、その他に別料金も支払うよ」
「それはありがたい」


微かに笑ったクラウドが、床に置いておいた調査道具を持ち上げる。


「じゃあ、行くか。ずいぶん待たせただろ?」
「え、もうそろそろ日も暮れるし……お夕飯食べてから行かない?」
「途中でも食べられるだろ?」


早く行こうと急かすクラウドに、思わず大声で突っ込んでしまった。




   っ、だから、夜はきっちり休みなさいな!!そんなに急ぐ旅でもないし、夜通しの移動も朝早くの移動も禁止!!」




誰かこの人に、普通の旅というものを教えてやって!!