一緒に旅をしてみると、想像以上にクラウドがしっかりしていることを知った。

旅の経験は私よりも抱負らしく、野宿の時もちゃんとした寝床を作ってくれる。
食料の確保も道すがら、食べられる植物をちゃんと見極めてしてくれる。
もちろん肉だって、いつの間にかちゃっかり確保。

ただ、料理はそこまでうまくないらしく、いつも私に丸投げ状態だ。


「クラウドー、味見してくれる?」
「……もう少し胡椒が効いてた方がいいな」
「はーい」


私は薄味が好きだけれど、どうやらクラウドはそれよりも少し濃いめの方が好きなようだ。
動き回るのが仕事だし、味の濃いものを食べないと身体が持たないんだろうか。


、肉焼けたぞ」
「あ、うん。ありがと」


着々と支度をしてさっさと食べてしまうと、体力温存のためにすぐに寝るのが最近のパターンだ。
私がいつまでもふらふらとここに残っているのがいけないんだけど……この季節にしか見られないモンスターがいるという話を聞いたら、もう離れられないではないか。


「なあ……そろそろ動かないか?携帯食料も、あと数日で底を尽きるぞ」
「うーん……あとちょっと。明日粘って駄目だったら、もう移動しよう」
「わかった」


軽くうなずいて納得してくれるクラウドに罪悪感がめばえたけれど、どうしても諦めきれなかった。

今回を逃したら、もう二度と出会う機会がないかもしれない。
それが頭を離れなかった。


「……ごめんね、クラウド」


火の後始末をしている背中に小さく呼びかけると、振り返ったクラウドがひょいと肩をすくめた。


「別に。昔から、わがままに付き合うのには慣れてる。あんたのはわがままにもならないさ」
「……ありがとう」


私がこうやって居座れば居座るほど、クラウドは仕事のための時間を無駄にしていく。
それを何ともないと言い切ってくれるクラウドに、頭が下がりそうだ。

噛みしめるように呟くと、クラウドは苦笑して首を傾げた。


は律義だな」
「いやいや、クラウドが太っ腹なんだって」
「そうか?」
「そうだって」


よくわかっていないらしい彼に、思わず笑ってしまう。

やっぱり、うっかりさんだなあ。
この分だと、私に迷惑をかけられているのにも気づいていないのかもしれない。


「おやすみ、クラウド」
「おやすみ、。出発する時に起こすから」
「ごめんね、ありがとう」


毛布にくるまってうとうとしながら、剣の手入れをしているクラウドの姿を見てふと思った。
   この人、夜はちゃんと寝てるのかしら。












   、出発するぞ」
「……ん。おはよ、クラウド」
「おはよう。ほら、朝食」


ぽいと渡された携帯食料を口に突っ込みながら、すでにバイクにまたがっているクラウドの後ろに座る。
爆音と共に走り出したバイクは、しばらく移動してすぐに止まった。


「あ、ここらへんで止めて」
「ここでいいのか?」
「うん。こういう小さい崖の近くに住んでることが多いんだって」
「へえ……」


聞く限りではサンダーバードの亜種のようなモンスターは、とても臆病で人を襲うことはまずない……らしい。
ただ、子育てをするこの時期だけは例外で、少しでも敵意を見せると容赦なく攻撃してくるのだとか。


「いるかなあ……」
「攻撃魔法でもぶっ放してみるか?」


上を見上げながらぽつりと呟いたら、クラウドがとんでもなく物騒なことを言い出した。
明らかにその方が手っ取り早いと思っていることが丸分かりな様子に、この世間知らずさんめ……!と突っ込みたくなってしまう。


「そんなことして集団で襲いかかられたら大変でしょ?」
「倒せばいいだけだろ」
「無理!鳥は狙いにくいんだから」


へっぽこな私の腕では、撃ち取る前に自分が討ち取られそうだ。
青ざめてぶんぶんとかぶりを振る私を、クラウドが不思議そうに見た。


小さく首を傾げて、そして。




   サンダラ!」
「きゃああああああ、何やってるのぉぉぉぉぉ!?」




よりにもよって、サンダラなんかをぶっ放してくださりやがった。
さらに血の気が引くのを感じながらクラウドをがっくんがっくん揺さぶっていると、上空からいくつもの羽ばたきがし始めた。
まさかと顔を上げると、見たことのないモンスターが群れをなして急降下してくる最中。




   っっ!!」




悲鳴すら上げられずに固まっていた私の腕を、クラウドがぐいと後ろに引っ張った。


、下がってろ」
「クラウド!?」
   仕留めても、死骸があればいいのか?」
「え?   え?」


何を言われているのか理解できないうちにクラウドは臨戦態勢に入ってしまって、そして   




「……クラウドって、強かったのね」
「今更?」




あっという間に数匹を仕留め、残りを崖の上に追い払ったクラウドは、剣についた血糊を振り払いながら苦笑した。

だから倒せばいいと言ったのか。

本当に今更ながらにその意味に気づいて、気まずさを隠すために曖昧に笑う。
小さく笑ったクラウドは、足下に無造作に転がるモンスターを指差した。


「これ、いるのか?」
「あ、うん。いるいる」


貴重なサンプル、ここで回収しないわけにはいかない。
慌てて駆け寄って、羽毛と爪とをシリンダーに詰め込む。
後はナイフを使って簡易解剖をして、大体の生態を把握すれば、ひとまずは終了だ。


「ベストなのは、ミッドガルにいる仲間にサンプル本体を送ることなんだけど……クラウド、一旦戻ってもらっていい?」


動かずに待っているからと見上げると、その先でクラウドが携帯を取り出した。


   ああ、俺だ。魔晄炉の調査でゴンガガにいるって   ああ。今からそっちに向かうから、ミッドガルに荷物を発送してくれないか?」


どうやら、ゴンガガにいる知り合いに、サンプルを送ってもらうつもりらしい。
こりゃあお昼抜きかなと、高くなりかけた太陽とゴンガガまでの距離を考えて、こっそりとため息をついた。