ゴンガガにつくと、ほどなく数人の人が近づいてきた。
その中の一人、髭のある落ち着いた雰囲気の男性にサンプルを渡すと、クラウドは小さくうなずく。
「頼む、リーブ」
「クラウドさんの頼みなら、断ることはできませんよ」
「よく言うよ」
肩をすくめてわざとらしく息を吐いたクラウドに、リーブさんも苦笑する。
「この間だって、結局レッドにまたがってただけじゃないか」
「それは言わん約束ですて、クラウドはん」
……なまった。
いきなりなまった。
ダンディなのに、いきなりなまり始めた。
一度なまったら直らなくなったらしいリーブさんとクラウドの会話を聞きつつ、その後ろであくせくと働いている人達をぼんやりと見る。
彼らが羽織っているジャンパーに描いてあるマークは、ここ数年でできたWROのもの。
かなり有名なそれをリーブさんも着ていることを考えると、クラウドも何らかの形でこの団体と関わりを持っていたのだろう。
……WROでせっせと働くクラウドが想像できないのは何故だろうか。
そんなことを思いながらまじまじとクラウドを見ていたら、突然振り向いたクラウドと視線が合った。
「、冷凍でいいのか?」
「え?あ うん。細胞が損傷しないから、できればそっちの方がいいな」
「ほな、瞬間冷凍で送りましょ。確か機材を持ってきとったはずです」
「ありがとうございます」
「住所は?」
「ミッドガルの元八番街、ラリームの研究室にお願いします」
てきぱきと話を進める2人に取り残されそうになりながらかろうじてそう言うと、リーブさんに驚いたような表情をされる。
それはそうだろう、ミッドガルは今現在、廃墟と言ってもいいような状態だ。
実際、あの研究所の周りにも、住んでいる人は誰もいない。
「……あそこに、住んではるんですか」
「幸い、研究機材はほぼ無事だったので。他に引っ越すよりも手間が少なかったんです」
研究仲間にはエッジに住んでいるメンバーもいるけれど、私は数少ないミッドガル住まいのクチだ。
まだ住めるし、どのエッジにも割と近いから楽だし。
街の外れだったのが幸いして、こちらもあまり損傷はなかった。
「って、実は色々すごいよな……」
「そうかな?慣れれば結構便利だよ」
交通手段さえあれば、さほど不便ではないというのが私の実感だ。
エッジはスラムとプレートの上がごちゃまぜになったような場所だし、ひょっとするとミッドガルの方が治安はいいかもしれない。
軽く笑ってクラウドにそう言うと、リーブさんが「一度、ミッドガルの人口調査をせなあかんかもしれん」と呟いていた。
もしや、ミッドガルはすでに無人だと思われていたのだろうか。
それは危険だ、何かあった時に救援が望めない。
「探せば結構いると思いますよ。新しく家を建てる余裕もなかった人とか、私みたいに引っ越すのが面倒だった人とか」
「……なるべく、エッジに移住してもらいたいんですけど……」
「 仲間と、相談してみますね」
多分、誰一人として賛成はしないと思うけれど。
そんな言葉はひっそりと胸の中にしまって、リーブさんににっこりと答えた。
宿屋で荷物の整理をしながら、クラウドが呆れたように肩眉を上げる。
「リーブに言ったこと、本当にする気なんかないだろ」
「そりゃあねえ。誰も知らないみたいだけど、電気もガスもちゃんと通ってるんだよ?機材はそろってる、エネルギー源もある、どこに引っ越す理由があると?」
仲間の誰に訊いてもそう答えるにきまっていると肩をすくめると、片手で顔を覆われてしまった。
「……そうだよな。あんたの仲間なんだから、そんな答えしか返ってこないよな……」
「あら、失敬な。個性豊かな奴らですわよ?」
モンスターの魔力からマテリアの代用品を作れないかとか、色々な毒を抽出してはその解毒剤を作るのに命をかけてたりとか、どのモンスターがどれとどれの交配で誕生してるのかを寝る間も惜しんで調べたりとか。
他にもまだまだいるけれど、ざっとしたところを挙げていくと、途中で片手に遮られた。
「もういい……充分わかった」
「そう?明日はこの付近も探索したいな、また新しい発見があるかもしれないし」
「わかった」
久しぶりに食べた温かい(ちゃんとした)夕飯はとてもおいしくて、思わず野菜炒めをおかわりしてしまったほどだ。
やっぱり人間、食はとても重要だとしみじみ感じる。
お腹もくちくなって、明日向かうポイントも大体の目星をつけた。
仲間からの情報とサンプルの催促のメールに苦笑しながら、この先のルートを思い描く。
平地をずっといけば、このまま楽にグランドキャニオンまで行ける。
けれど、可能なら山越えをしてみたい。
猛毒を持つ虫型のモンスターがいるのだと、解毒剤マニアから情報をもらったのだ。
「、決まったか?」
「うーん……山越え、してもいい?」
「はぁ!?」
そろりと訊いてみたら、案の定何を言っているんだこいつという目で見られた。
わかってるけど……わかってるけど……!
私も見たことがないモンスター、できるものならつかまえたい!
やっぱり駄目だろうかと思いながらじっと見ていたら、そのうちにクラウドがたじろいだように声をもらした。
それでもじっと見ていると、首筋に手をあててうつむく。
さらにじっと見る私に、とうとうクラウドの方が音を上げた。
「 っ、限界だと思ったら引き返すぞ!燃料だって、無尽蔵にあるわけじゃないんだからな!」
「やった!ありがとう、クラウド!!」
ようやくもらえたお許しに飛び上がって喜ぶと、諦めたような表情でクラウドがため息をつく。
やっぱりウッカリお人好しな性格を再認識して、ありがたいことだとにんまりしてしまった。
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