行方不明?ザックスが?」
「誰にも言うなよ、と。表向きには任務による死亡扱いになってんだからな」


誰もいない部屋に引っ張りこまれてささやかれた内容に、目の前が真っ暗になった。


そんな、どうして。
そんなに危険な任務じゃないはずだったのに。


「……誰か、一緒に行ったソルジャーはいなかったの?」
「セフィロスが行ったはずだ。けど、そのセフィロスも行方不明」


どうにもきな臭いと顔をしかめるレノの肩をつかんで、反射的に詰め寄った。


「手掛かりは!?」
「今のところはない。落ち着けよ、と」


情報が入ったら流すと約束してくれたレノに感謝して、迷わず本社を抜け出す。
あの陰険上司に怒られることなんて、今はどうでもよかった。

列車に飛び乗ってスラムに降りて、伍番街の教会へ。




   エアリス!!」
「え?」




顔見知りでもないのにいきなり呼びかけたからだろう、エアリスがきょとんと瞬いた。
そんな彼女に駆け寄ってザックスのことを伝えると、見る間に可愛い顔が不安にくもる。


「ザックス……」
「情報が入ったら、すぐに伝えるから。信頼できる奴が、正確な情報をほとんどリアルタイムで教えてくれるの」


多分確実に、これは外部にもらしたらまずい情報なんだろう。
それでも流してくれたレノの心遣いに、ただ感謝するしかない。


今度高い酒でもおごってやろうと思いつつ、青い顔で震えているエアリスを抱きしめる。


「大丈夫。大丈夫よ、エアリス。こんなに可愛い彼女をおいて、あの馬鹿が死ぬわけないじゃない」


ずっと見てきたから、私にはわかる。
ザックスが心底、エアリスに惚れているということが。


惚れた女一人幸せにできない男を、好きになった覚えなんて、私にはない。


「……ありがとう。あなた、優しいね」
「どういたしまして」


柔らかく笑うエアリスに微笑み返して、何か進展があったらすぐに知らせると約束する。
急いで本社に戻ったら、案の定上司に雷を落とされたけれど、そんなことはもうどうでもよかった。


無事でいて、願うことはただそれだけ。












祈るような日々を過ごしているうちに、いつの間にか5年が過ぎていた。
誰もがザックスを忘れかけたそのある日、レノからザックスの居場所がわかったと教えられ。


「どこ!?」
「……脱走中だ。捕獲命令が出た」


また目の前が真っ暗になった。




「…………何があったの」




自分でも驚くほどの、低い声が出た。


あのザックスが、5年も音信不通になるなんてありえない。
被害が及ぶかもしれないとわかっていても、あの男は絶対に、近しい人には定期的に連絡を入れるはずだ。


だからこそタークスはエアリスをマークしていたし、表向き私もレノにマークされていたのだから。

私にも知る権利はあるはずだと睨みつけると、ため息を一つついたレノが重い口を開いた。


「宝条の実験サンプルにされてたみたいだな。隙を突いて脱走したから、躍起になって探してる」


どういう経緯でそうなったのか、何故抹殺ではなく捕獲なのか、レノにもわからないのだという。


「ツォンさんくらいになれば、知ってんのかもしれねえけどな、と」
「……それがタークスの仕事だものね」


理不尽なその仕事ぶりに、深酒をしたレノが荒れているのを何度も見てきた。
タークスだって、やりたくてやっているわけではないのだ。





強い口調で呼ばれて見上げると、レノは真剣な表情をしていた。


「俺はザックスを捕獲する。いいな?」
「あんたの仕事は邪魔しないよ、レノ。そこまでする権利はないし、できるとも思わない」


ただ、ただ。




「捕獲したら、宝条博士に引き渡す前に   話をさせて」




捕獲した後にできるなら、私が逃がすから。


「……わかった」


うなずいてくれたレノに、友愛のハグを贈った。












手柄を焦った一般兵に、ザックスが射殺されたと聞いたのは、それからしばらく後。
タークスが回収した遺体と対面したけれど、レノに支えてくれなければ動くことすらできなかっただろう。


エアリスには   言えなかった。
せめて彼女には、ザックスが生きていると信じていてほしかったのかもしれない。


意外にも安らかな死に顔を思い出して、多分その選択は間違っていないと思う私は、後で後悔するんだろうか。
いくら考えても、答えは出なかった。









らじょうもんにだって行って
みせる


(そこに君の遺体があるというなら)