期末がようやく終わって、ちょっとだけ早い冬休み。
ジーンがどこかに出かけようと言うので、遊園地に行くことにした。


「ひゃあ、寒い!」
「風邪引きそうだね!」
「でも、遊園地だもの!」


何だかよくわからないテンションで、2人とも大はしゃぎだ。
ポップコーンを買って、2人で交互につまみながらあちこち見て回る。


、どこに行こうか?」
「ジェットコースター!お腹が空かないうちに行っちゃおう」
「そうだね!」


ずいぶん並んでいるジェットコースター、けれど並ぶ時間も楽しい。
寒さで手がかじかむけれど、カイロを握りしめて我慢だ。


「この寒さだと、すぐに効き目がなくなっちゃいそうだね」
「うん。大きいの持ってくればよかった……」


首をちぢこめてカイロを両手で握りしめても、冷たい風が指先の温度を奪っていく。
手袋嫌いが仇になったと後悔していたら、ジーンの大きな手が重なってきた。


「大丈夫?」
「あ……うん」
、寒さには弱いもんね」


優しく目を細められて、寒さとは違う頬の熱さを感じる。


「こうしてれば、ちょっとは寒くないだろう?」
「そ、だね」


穏やかな顔が間近に迫って、少しだけうつむいてしまった。
こんなに綺麗な顔、やっぱり反則だ。


けれどジーンはそんなことには気づかなかったようで、カイロを握っていない方の私の手をぎゅっと握った。


「予備のカイロ、ある?」
「もちろん!」
「じゃあ、平気だね!」


行こう!と笑顔で腕を引かれて、いつもよりも早足で順番待ちの列に向かう。


「随分並んでるね」
「ジェットコースターは、やっぱり一番人気だもんね」
「どれくらい待つかなあ」


ずらりと並んだ列は、なかなか進みそうにない。
1時間待ちは覚悟しなければいけないかもしれないと顔をしかめたら、ジーンにたしなめられるように肩を叩かれた。


「待った分だけ楽しくなるよ。がらがらのジェットコースターに乗っても、何だか物足りないだろ?」
「……それもそうだね」


がらがらのジェットコースターなんて、乗ってもあんまり面白くない。
簡単に楽しいものが手に入っても、それはかえってつまらなくなるだけなんだと気づいた。


「並んでる間、いっぱいおしゃべりしようね!」


笑ってそう言うと、ジーンもうなずいて握る手に力をこめる。
あんなに毎日一緒にいても、話すことはなくならないから不思議だ。


「でね、そしたら先生が   
「あ、次で乗れそうだよ」
「ほんと!?」


ジーンの言葉に前を見れば、確かにあと10人くらいしか並んでいない。
嬉しさに顔をほころばせると、ジーンがとても優しい顔をした。


「よかったね、
「うん!」


反射的にうなずいてから、私ばかり楽しんでいるんじゃないかという不安が胸をよぎる。
そっとジーンを見上げてみた限りでは、楽しんでくれているみたいだけれど……。


「どうしたの?


そっと見上げたつもりだったのに、ジーンにはばれていたらしい。
反射的に首をすくめながら、ちらりとジーンをうかがう。


「……ジーン、楽しい?」
「もちろん。どうして?」
「だって、あの……私ばっかり、楽しんでる気がして……」


ぼそぼそと白状したら、不思議そうに首を傾げていたジーンが軽く目を見開いた。


「僕は、と遊びに来れただけで楽しいよ?遊園地も好きだし、つまらなくなんてないよ」
「なら、よかった」


ジーンも楽しんでくれているなら、それでいい。


「せっかくきたんだもん、2人で楽しまないと意味がないもんね」


ほっとしながらそう言ったら、嬉しそうに笑ったジーンに抱きしめられた。


「ありがとう、。僕のことも考えてくれて、すごく嬉しい」
「そんなの   あたりまえだよ。だってジーン、いつも私のこと考えてくれてるじゃない」


ジーンはいつだって、私のことをすごくよく考えてくれているから。
だから、私もジーンのことを考えたい。


それは私にとってあたりまえのことだったから、慌てて顔を上げる。
じっとジーンを見上げると、とろけるような笑顔を返された。


   うん、そう思ってくれることが嬉しい」


ありがとうと耳元でささやかれて、くすぐったさに首をすくめる。
その視界の端で、ジェットコースターが乗り場に戻ってきたのをとらえて、慌ててジーンの胸を押した。

早く進まないと、後ろの人に迷惑だ。


「ジーン!ほら、順番だよ!!」
「……は本当に、ガードが固いなあ」


苦笑しながらジーンが呟いた言葉は、アナウンスとざわめきにまぎれて、よく聞こえなかった。
見上げて視線で問いかけても、笑うだけで教えてくれない。


「何でもないよ。ほら、前」
「あ!」


私達の前で間が開いてしまった列に、慌てて進む。
前から5列目に乗ることができて、セーフティーバーをしっかりとしめながら、うきうきとジーンを見た。


「結構いい位置に乗れたね!」
「そうだね!楽しみだ」












ブザーがなって、車体がゆっくりと動き出す。
どんなコースかがわかっていても、やっぱりどきどきした。

長いようで短い時間が終わった後、お昼を食べてまた色々なところを回る。


「やだ!やだやだやだやだぁ!!」
「大丈夫だって、入ろう?」
「お化け屋敷は嫌ぁ!」


ぐいぐいと引っ張るジーンに力の限り抵抗して、入るものかと踏ん張った。
結局勝てずに入ることになるんだけれど……それはまた、別のお話。