「 行ってきます」
「いってらっしゃい」
夢の中でそう送り出された当日、いよいよ本命の試験の日だ。
私の精一杯は、はたして合格ラインに届いているのだろうか。
前日に見た倍率速報はありえない数字を叩き出していて、見ただけでくらりと目まいがした。
12倍以上って、どれだけ応募しているんだろう……。
元々あまりなかった自信がほとんどなくなって、思わず夢でジーンに泣きついてしまった。
なぐさめられるどころか、本気で怒られたけれど。
「は自分を信じられないの!?それって、今まで頑張ってた事全部無駄だったって、自分で言ってるのと同じだよ!」
「でも……」
「でも、じゃないよ。僕だって本気で教えたし、だって本気で食らいついてきたじゃないか」
お願いだから、そんなこと言わないでよ。
悲しそうな顔でそう言われ、確かに卑屈だったかもしれないとうつむく。
あの12倍の中には、私と同じように、叶わないかもしれないと思いながらも勉強を続けてきた人達もいるかもしれないのだ。
実質倍数がいくつになるのかわからないけれど、精一杯頑張らなければいけないのだ。
そうじゃないと、今までの自分に失礼すぎる。
「 うん、そうだね」
頑張る、とうなずくと、優しく頭をなでられた。
そんな事を思い出しながら、目の前の試験冊子を見つめる。
大丈夫、きっと頑張れる。
だって私には、ジーンがついているから。
そして。
「どうだった?」
「……受かった……っ!!」
呟くなり涙がこみあげてしまった私を、ジーンが抱き寄せた。
補欠でもないちゃんとした合格は、自分でも信じられない。
『おめでとうございます!合格です……』
アナウンスを流す受話器を握り締めてしばらく呆然とした後、慌てて時間を確かめてベッドに飛び込んだ。
今の時間なら、きっと向こうでジーンは寝ている!
つながりますように、とその時ばかりは祈るようにしながら意識を沈めて 。
「おめでとう」
ジーンがそう言ってくれる事が一番嬉しかった。
「ありがとう」
「お疲れ様。頑張ったね」
「 うん」
よしよし、と言うように背中をなでられて、ますます涙があふれる。
無駄じゃなかった。
諦めなくてよかった。
私でも、手が届いた !
「これで、の受験も終わりだね」
「うん。長かったあ……」
「2年間、お疲れ様」
にこりと笑ったジーンは、わくわくする気持ちを抑えられないように首を傾げる。
「イギリス、来れるかな?」
「行きたいとは思うけど……入学手続きとかあるから、まだちょっと無理かな」
「じゃあ、書類の提出が終わったら教えてね。チケットの手配するから」
「うん」
それからは樹の根元に二人並んで座って、色々な話をした。
ジーンは怒られるのも熱烈歓迎されるのも一段落ついて、今は弟君と一緒に色々な研究をしているとか。
どんな研究をしているのか気になったけれど、ジーンは「イギリスに来たら教えてあげる」と言うだけだ。
あの時は湖のほとりで何か調査をしていたようだし、地質学か環境学でも専門にしているんだろうか。
モニターとかカメラとか山ほどあったし、環境学かもしれない。何となく。
どんなことをしているんだろうと考えるだけで、わくわくしてしまう。
早く会えないかな。
早く行けないかな。
そんなことを考えながらにこにこしていたら、ジーンに思いがけないことを言われた。
「、パスポート取っておいてね」
「 あ!!」
忘れてた!
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