初めて着る袴は、やっぱりちょっと緊張する。
実家からは遠いからって、お父さん達は来てくれなかった。
袴姿を見せられないのは少し残念だけど、ジーンがいてくれるから寂しくはない。
「可愛いよ、」
「……それ、今朝から何回も聞いてる」
「だって、可愛いんだもん。やっぱり髪はアップにしなくて正解だね、ハーフアップが一番似合う」
ふんわりとしたカールをつけて、少しだけ盛ったハーフアップ。
これもジーンが強く勧めてきたものだ。
実は袴もそうな辺り、ジーンの趣味がいいのか私の趣味が悪すぎるのか……。
前者だと願いたい、切実に。
卒業証書を先生から渡されて、友達と思う存分おしゃべりをして。
写真もいっぱい撮ったし、校門の前でジーンと一緒の写真も撮ってもらった。
相変わらず彼は誰だの何だのと騒がれたけど、私が答える前にジーンが「の恋人だよ」と答えてしまった……。
阿鼻叫喚になりました、うん。
最後の最後でとんでもない騒ぎになりました。
来てくれたのは嬉しいけど、こういうのは嬉しくない!
「ちゃんは、やっぱりこっちで働くの?実家に帰る?」
「このままこっちで働くつもり。今のバイト先で雇ってもらえるんだ」
「えー?じゃあ、就活なかったんだ。いいなあ」
「あははは。でも、英語をバシバシ使う、結構厳しい職場だよ」
就職については、事前にナル君から「このまま働いてくれ」と言われている。
おかげで氷河期真っ只中の今のご時世、就活はしなくて済んだ。
だけど絶対、あれは新しい人員の補充がめんどくさかっただけだ。
自信を持って言い切れる。
だって最近、仕事の内容がさらに難しくなってるもの。
あれは絶対、経費削減もといナル君の面倒削減だ。
「げ……じゃあ、あたしパスだわそこ。何での英語の成績があんなによかったのかよくわかった」
「英語だけは特進だったもんねー」
「2年からずっとでしょ?マジすごい」
「えへへ、ありがとう」
自分でも頑張ったと思っているけれど、人から褒められるとやっぱり嬉しい。
てれりと顔をゆるめたところで、携帯のバイブが小さく鳴った。
「 あ、ジーン」
「あの超美形彼氏!?何だって!?」
メールの内容を確認している間にも、友達は興奮して覗きこもうとしてくる。
それを必死に防御しながら、並んだ文面に顔がほころんだ。
「これ以上ほっとくと拗ねちゃうよ、だって」
本当はもっと長かったけれど、要約して伝えると、きゃあ!と黄色い声があがる。
「何それ!?超可愛い!!」
「拗ねっ子だから、ジーン」
「いいなあ、あたしもそんな彼氏ほしい」
「あはは、頑張れ!」
笑って手を振って、ジーンの下へ。
大学の友達だって、会おうと思えばいつだって会える。
この4年間、帰省の度に花音に会ってきたもの。
「ジーン!お待たせ!!」
「!!」
満面の笑顔で両手を広げたジーンの腕の中に飛び込めば、着崩れしないようにそっと抱きしめられた。
「卒業、おめでとう」
「4年間、支えてくれてありがとう」
笑顔のジーンにお礼を言う。
本当にいろいろな場面で、この4年間ジーンに支えられ続けてきた。
彼がいなかったら、私は多分、一人暮らしなんてできなかっただろう。
精神的に辛いときはそっと支えてくれたし、肉体的に辛いときはできる限りのサポートをしてくれた。
本当に感謝だ。
いい香りのする胸に顔をうずめると、腕の力が強くなった。
「はこれから、ナルのところで働くつもり?」
「うん。そうしてくれって言われてるし」
「そっか」
何とも言えない表情で微笑んだジーンは、そこで一つ大きく息を吸った。
真剣な瞳が私を貫く。
「あのね、。が卒業したら、言おうと思ってたことがあるんだ」
「な……何?」
気迫に半分呑まれながら訊き返すと、一拍おいて形の整った唇が動いた。
「結婚しよう」
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