男の子の声で、ジェームズ達がばばっとこちらを注視する。
もう何か、いろんな意味で泣きたくなってきた……。


!この僕をおいて、一体どこに行くというんだい?」
「あんたがいないところよ!」
「おやリディア、つれないなあ」
「あんたが変態だからでしょ!」


噛みつくようにリディが答えながら、後ろでにさっさと逃げろと合図をしてくれる。


ありがとう、リディ……!
この恩は一生忘れない……!(部屋でハニーデュークスのヌガーあげる!)


喧々囂々の言い合いをするリディとジェームズから、じりじりと後ずさる。
ある程度離れたところで、一度ジェームズの様子をうかがってみた。


   よし、いける!
全然気づかれてない!


ぐぐっとガッツポーズをとって、後はもう女子寮に一目散。




   あっ、!!」




ジェームズの声が聞こえたけれど、そんなの無視!無視!!
階段を駆け上って部屋に駆けこめば、いつもと変わりない静かさが優しかった。


「……やっぱ外、疲れる……」


はふ、と息を吐いて、ベッドに倒れこむ。
しもべ妖精が取り替えてくれたんだろう、シーツからはお日様の匂いがした。
しばらくごろごろとベッドにじゃれついてから、リディは大丈夫だろうかと不安になる。


「おい」


ジェームズ達本人がどうのこうのじゃなくて、ファンの人達の中にはものすごく過激な人もいるらしい。
そんな人にリディが目をつけられたら、いくらなんでも危ないんじゃないだろうか。


「おい」
「……どうしよう」


「おい、
「あああああリディ、ほんとごめん……!」


「おいってば」
「どどどどうしよう、やっぱ行くべき?行くべき!?でもジェームズ怖い!!」




「無視すんなお前!!」
「ああもう、うるさいなあ!!リディが心配な   の?」




あれ?
何だ、今の声。

聞き覚えがあるけど、むしろ勘違いであってほしい。


だらだらと冷や汗が流れるのを感じながら、そろりと手近な本をつかむ。
よし、魔法史大全(古代)。


ずしりと心地よい重さのそれをしっかりと握りしめて。




「だりぁあああああっ!!」
「うおおっ!?」





思いっきりぶん投げた。
どうかどうか、予想が外れていますように!


祈るような気持ちでぎゅっと目を瞑ったけれど、現実は厳しかった。


やっぱり聞き覚えのある声がして、ぺらりと何かがはがれるようにシリウスが姿を現す。
ものすごくぎりぎりで本をよけたシリウスが、ぜいぜいと肩で息をしながら口を開いた。


「おま」
   っ、ぎゃあああああリディぃぃぃぃぃ!!」


何かを言おうとしていたのはわかったけれど、その前にこっちが限界だ!
力の限りに叫ぶと、ものすごい勢いでリディが駆けこんできた。
どうしたのと訊くより先にシリウスを発見して、親の敵のような目でぎんと睨みつける。




「……っ、出てけー!!」




シリウスがリディの手で追い出されるのを見ながら、大きく息をついた。