教えれば教えるほど成長するクラウドの才能に、はすっかりご満悦だ。


しごきすぎている自覚はあるが、それにくらいついてくるのもまた嬉しい。
正直、ここまでついてこれると思わなかったというのが、偽らざる彼女の本音だ。


必死にはい上がろうとするその貪欲さは、自身にも覚えがあるものだった。


「クラウド、腕が上がってきてるな」
「でしょ?やればできる子だもの」


やはり嬉しそうなザックスにうなずいて、は近い未来の弟子に思いを馳せる。


「このままいけば、1年以内にはソルジャーに昇格できるかもね。そのうち、4人で一緒に任務につけるかも」


4人で揃って向かう任務は、どんなに心浮き立つものだろう。
ソルジャー服に身を包んだクラウドを思い浮かべ、の目がうっとりと細まった。


ゲームの主人公だとか、そういうことは抜きに、きっとよく似合うだろう。
ザックス以上にファンクラブが大きくなるかもしれない。


何気に酷いことを考えられているとは露知らず、ザックスも楽しそうにうなずく。


「楽しみだな。あいつ、頭いいからすぐだろ」
「頭がいいのと身体で覚えるのは、また別物だけどね。現にザックス君はそうですし?」
「ひっで!ひっで!!」


含みのある笑顔で見るに、ザックスがおおげさに反応した。
わざとらしく心臓を押さえたザックスは、ついでにと泣き真似までしてみせる。


「でも、そっちの覚えもいいから大丈夫かな、クラウドは」


小さく笑うは、師匠というよりも母や姉の顔によく似ていた。
子供どころか結婚もしていないはずなのに、母というのはおかしいが。

そんなことを考えているザックスに気づいたのか、が彼を見て目を細める。


「不思議そうな顔してるね。どうして私がこんな顔できるかって?   聞いて驚け」


えっへんと胸を張り。


「私、セフィロスのお母さんだから」




がったんとザックスがコケた。




「おまっ……なっ……ちょ、どうしたんだよ!?」


さすがに予想外だったらしい。
ぱくぱくと口を開け閉めするザックスに内心で爆笑しつつ、すました顔でがつけ加える。


「正確には、義理の親子だけど」


さすがに本物はありえないでしょ。


「私もセフィロスも、家族がほしかった。で、私はセフィロスみたいな息子がほしかったし、セフィロスは母親がほしかった。お互いぴったり!」


にっこりと笑ってみせると、ザックスが疲れたようにうなだれた。


「お前ら、変……」
「何言ってんの、あんたもきっちり組み込まれてるんだからね」
「はあ!?」


あんぐりと口を開けたザックスの顎を押し戻しながら、は左右に指を振った。
ちっちっち。


上下の歯が勢いよくこんにちはしたせいで、ザックスの顎からかなり痛そうな音がしたが、それは華麗にスルーされたらしい。


「セフィロス長男、ザックス次男、クラウド三男。しっかり長兄を支えなさいよ?」


にやりと笑ってそう言うと、ザックスの肩をぽんぽんと叩く。


「冗談抜きで、あんたにはセフィロスもクラウドも支えてほしいんだよね。あの子達、どうにもメンタルが弱いから……」


絶対的な強さを誇る“英雄”ではなく、“セフィロス”はとても弱いから。


自分がいなくなった後の彼が、はとても心配だった。
ザックスならきちんと大切なことがわかっているし、人の感情の機微にも聡い。
おちゃらけているように見えても、この男はとても繊細だ。


「ああ……確かに、それはあるわな。旦那なんか、どっか不安定だし」
「そうそう。ザックスならわかってくれると思ってたよ」


これなら任せられそうだと、の表情も自然とほころんだ。
そんな彼女に対し、急に真面目な表情になったザックスは、難しい顔で考えこむ。


何だどうしたとが首を傾げたその時、ザックスの口からとんでもない爆弾が投下された。




   お前が消えた後、どうやってフォローすっかなあ」