ぶふぅっ!!
「うおっ、汚ねっ!!」
反射的にコーヒーを吹いたに、ザックスが勢いよく飛びずさる。
それすらも気にかけられないほど動転しながら、今度はがぱくぱくと口を開け閉めした。
「な なんで……」
知っているのか。
セフィロス以外、誰にも言っていないはずなのに。
盛大に焦りながらようやく呟いたに、ザックスは軽く肩をすくめる。
「最近のお前を見てりゃ、なんとなくわかるさ」
綺麗に手入れをされたの剣を見ながら、誰ともなしに一人ごちる。
神羅から支給されるものとは全く違う形をしたそれは、長い経年を示すように、しっくりと彼女の一部になっていた。
「お前、最近のクラウドの指導に、すっげえ気合い入ってんじゃん。時々思いつめた顔もしてるし」
どっか行くつもりなんだろ?
けろりと訊かれ、がためらうように視線をそらす。
長いようで短い沈黙の後、小さなため息が落ちた。
「……私の意思で、出て行くわけじゃないけどね。いつまでここにいられるのかがわからない身だってことを、最近やっと思い出したんだよ」
意味がわからないといった表情のザックスにかぶりを振って、が疲れたように微笑む。
「時が来れば、きっとわかるよ。わからなければ、いつか私が戻ってきた時に訊いてもらえれば、それでいい」
「何だそりゃ」
「わからなくていいよ。ただ、いずれ私が消えるだろうってことさえ、気づいてくれてれば」
ぽつりと呟かれた寂しげな言葉を最後に、しばらく室内に沈黙が満ちた。
お互い視線を合わせずにコーヒーを飲み、ぼんやりと壁を見る。
「あ、そうそう。クラウドには、このこと言っちゃ駄目だよ。気づいてなければ、ザックスにだって言うつもりはなかったんだから」
「へーへー」
一瞬前までの空気を吹き飛ばすように振り向いたに、ザックスもまた何事もなかったかのようにひらひらと手をひるがえす。
そんな2人のところに、喜色に満ちたクラウドが駆けこんできた。
「! あ、ザックスも!」
「どうしたの?」
「何かいいことでもあったか?」
のんびりと出迎えた2人に、クラウドが頬を紅潮させて答える。
「ソルジャー試験の2次考査に通ったんだ!!」
「…………は?」
ソルジャーって何だっけ?
あまりにも彼らの常識から外れた報告に、の思考回路がショートした。
あれー?
確か今期のソルジャー試験には、申し込みしなかったはずなんだけどなー?
「お前、いつの間にそんなの受けてたんだよ!?」
大声で叫んだザックスの言葉でようやく我に返り、も慌ててクラウドに詰め寄る。
「クラウド、まだ君には早いって言ったでしょ!?」
試験には受験回数の上限がある。
すでに1度落ちている彼には、もう何回もチャンスは残されていないというのに。
どうしてそんな勝手な真似をしたのかと焦るに、クラウドは小さく肩をすくめた。
「黙ってやったのは悪いと思ってるよ。でも、どうせ1次で落ちると思ってたし……あの時は何がなんだかわかってなかったし、本当の試験がどれくらいのレベルか、知ってみたかったんだ」
実はソルジャー試験よりもハードな訓練をしていた自覚のあるは、それを聞いてこっそりと冷や汗をかく。
(……試験を受けた時に、楽勝でトップ通過できるように目論んでたとか、絶対に言えない……)
言ったら確実に拗ねられそうだ。
可愛い弟子に無視などされたら、打ちのめされすぎて立ち直れないかもしれない。
「2次はさすがにちょっと大変だったけど、1次は案外楽でびっくりした」
ええ、そりゃあ楽でしょうよ。
普段の修行の方が、それの5倍以上ハードですから。
「……よかったね」
「うん!」
心底嬉しそうなクラウドを見ていたら、何だか怒る気が失せてしまった。
苦笑してカップを置き、クラウドを見る。
「……不可抗力だけど、やれるだけやってみなさい。 ザックス、ソルジャー試験って何次まであったっけ?」
試験を受けたことのないは、一応調べてはいたものの、薄ぼんやりとしか記憶にない。
話を振られたザックスも苦笑して、昔の記憶を掘り起こす。
「5次までだったな」
「確か、考査ごとに1か月くらいの間隔があるよね?」
「おう」
「よし」
それならば。
「クラウド。今日からは、みっちりしごいてあげるからね?」
「え」
、激笑顔。
クラウド、青を通り越して真っ白。
「受けるからには、トップで通ってもらうよ」
「…………はい」
しおしおとうなだれたクラウドの肩に、ザックスがぽむと手を置いた。
頑張れクラウド、君の未来はきっと明るい。
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