まだよラピス、もう少し。
あと少しだけ、お願い。
呼んでいる。呼んでいる。
故郷が私達を呼んでいる。
阻む力も限界があるのだよ。
わかってる。わかってるの。でも、まだ行けない。
せめてもう少し、あの子が独り立ちするまで。
必死の思いで懇願すると、ラピスが少し沈黙する気配があり、そして。
やってみよう。ただし、その瞬間に旅立つことになるかもしれない。
それで充分よ。ありがとう、ラピス。
小さく微笑んで会話を切って、は大きく息を吐く。
知らずににじみ出た脂汗をぬぐうその背後から、密やかに声がかけられた。
「。どうした」
緩慢に振り向いたその視線の先には、絹糸のような銀色。
「 セフィロス」
「顔色が悪いぞ」
汗で額に張りついた前髪をそっと払われ、は小さく苦笑した。
「 時が、近い。今もかなり無理を言って留まっている」
それを聞いた瞬間、一瞬だけセフィロスの瞳が凍りついたのがわかる。
しかしすぐに元に戻ると、小さくうなずいた。
「……そうか。限界はわかるか?」
冷静な声で尋ねたセフィロスに、も小さく答える。
「このまま順当に進んでいって、クラウドがソルジャーになるかならないか」
「一月半といったところか」
「ええ」
淡々と進む会話の中で、はセフィロスの瞳がどんどん凍りついていくことに気づいていた。
魔晄色の瞳が、どんどん冷たい色になっていく。
「セフィロス」
世界の干渉を阻むことの代償として、動くのも辛いほどの苦痛が身体を苛む。
それを無視してセフィロスに手を伸ばし、近くにあった頭をかき抱く。
「愛してるよ、セフィロス。どこにいても、何をしていても、君が私の大切な息子であることに変わりはない」
どうか、どうか、忘れないで。
「だから、待ってて。必ず帰ってくるから、待ってて。何年かかろうと、私は私の姿のままで、君のところに帰ってくるよ」
ぴくりと反応したその髪をなでていると、ややしてセフィロスもためらいがちに腕を回してきた。
「…………るから」
かすれて小さくなった声が、消えいりそうになりながら耳元で聞こえる。
「待っているから。何年でも待っているから。だから、必ず戻ってきてくれ……」
「約束するよ。 その証を」
両腕につけていた華奢なブレスレットを片方外し、ラピスの力をこめてからセフィロスに渡した。
「私と違って、セフィロスは時と共に姿が変わっていくからね。次に会った時にも、君が君だとわかるように」
「……ありがとう」
まだ中性的な線を残しているとはいえ、大きな手にはやや不釣り合いなブレスレットを大切そうに握りしめ、セフィロスがかみしめるように呟く。
一見してわからなくなるほど永い別離かもしれない。
どれほど長くかかるかわからない、それでもきっと彼は大丈夫だ。
安心したように微笑んだは、クラウドが順調にソルジャー試験を通過するのを見届け、そして 。
「!、俺、受かっ 」
跡形もなく、まるで最初から存在しなかったかのように。
「 ?」
彼がソルジャーとなったその日、消え去った。
|