「おーい、こんな依頼が来てっぞー」
「伍番魔晄炉爆破……?」
「報酬が少ないな」
「いいじゃない、引き受けよ?」
どこかで誰かがそんな会話をしている頃、とあるカフェの前にが降り立った。
「ええと……あちゃあ、どれくらいずれたのかわからないや」
きょろきょろと周囲を見回して眉をしかめると、とりあえず歩き出す。
辺りはやけに寂れていて、少なくともプレートの上ではないようだ。
そんな分析をしつつ、は迷うことなく歩いていく。
特に目的地があるわけではないのだが、立ち止まっていても仕方がないということは、その身をもって知っていた。
(必要ならば、ラピスが巡り会わせてくれるし)
何ともお気楽な思考回路で歩いていたら、モンスターに襲われた。
ハウス型のモンスターをとっくりと眺め、しみじみと呟く。
「……HP100前後のザコか……」
あまりにも懐かしい状況にほろりとしていると、背後から鋭い叫び声が飛んできた。
「危ない!!」
「 え?」
聞こえた声も、若い女性のもの。
おいおい、そっちの方が危ないでしょー。
問答無用でモンスターを叩き斬りながら振り向くと、黒髪の可愛いお嬢さんが呆然と立っていた。
「ええと……怪我、ない?」
あまりにも凝視されると、さすがに気まずいものがある。
何となく気おくれがちに声をかけると、少女ははっと我に返ったようだった。
「……すごい!!」
「うわお」
握り拳で力一杯力説されて、思わずがのけぞる。
その間にも少女は駆け寄ってきて、の手をはっしと握りしめた。
「あなた、強いのね!ねえ、一緒に来てくれない?手伝ってほしいの」
「手伝う……モンスター退治か何か?」
モンスター退治なら、自慢じゃないが超得意分野だ。
そんなことを考えながら首を傾げたに、少女は含みのある笑顔を浮かべる。
「モンスター……みたいなものね。 あのね、私達、神羅をぶち壊すのよ」
「 は?」
潜めた声で告げられた言葉に、思わず間抜けな声が出た。
この子はもしかして、もしかしなくとも。
「……私、って言うんだけど。あなたは?」
「ティファよ。よろしく!」
くらりと目まいを感じそうになって、必死にそれを抑えながら、は内心で盛大に文句を言う。
よりによってこの時期かい、ラピス……!!
急いで翔んだ私も悪いけど、もう少し調整してくれても……!
ティファと握手を交わしてセブンスヘブンに連れて行かれると、アバランチではなく普通の人々が騒がしく飲んでいた。
「おう、ティファちゃん!そっちの子はどうした?」
「そこで会って友達になったのよ。ね、?」
多少引きつり気味に頭を下げるに気づいてか気づかずにか(ティファは確実に確信犯)、ティファがをマリンの前に押し出す。
「マリン、よ。しばらくここにいるからね」
「うん!」
「え!?」
「いるわよね?」
「……はい」
逃がすもんですかというように笑顔で圧力をかけるティファに負けて、も内心で涙を流しながらうなずいた。
「よろしくね、マリン」
「うん、!」
とても嬉しそうにうなずいたマリンの頭をなでて、は店の奥に引っ込んだ。
「 さて」
ストーリー通りならば、これから先のどこかのミッションで、クラウドがアバランチに参加するはずだが……こちらではどうなっているのだろうか。
「マーリン、こっちおいでー」
歌うような呼び声にとてとてと寄って来たマリンを膝に抱き上げて、ゆったりとした声で問いかける。
まずは、情報収集から。
「実は私、ミッドガルに来たばっかりなんだけど……セフィロスって今、どうしてるか知ってる?」
「セフィロス?セフィロスに用があるの?」
こてんと首を傾げたマリンは、バレットでなくとも悩殺ものだ。
か わ い す ぎ だ か ら !!
「うーん……セフィロスも、用事がある人の中の1人かな」
悶えそうになるのをぐぐっとこらえ、マリンの頭をなでる。
嬉しそうに目を細めたマリンは、あっさりと爆弾発言をかましてくれた。
「セフィロスなら、もういないよ?」
「 え?」
頭が真っ白になった。
「……いない?」
ぎこちなく紡ぎ出された声は、まるで他人のもののようだった。
あの子ならば、大丈夫だと思ったのに。
ザックスとクラウドが、確かな楔になってくれていると思ったのに。
あの日交わした約束さえも、意味がなかったというの?
「うん。何年か前に北の方で何かがあって、セフィロスはいなくなっちゃったんだって」
「……北?」
( ニブルヘイム?)
「それ、誰なら詳しく知ってるかな?」
マリンから、これ以上の情報は望めない。
そう判断したは、早々にターゲットを切り換えることにした。
「うーん……わかんない。ティファなら知ってるかも!ティファ、色々知ってるから」
「そっか。ありがとね」
後でティファに訊いてみよう。
あっさりと諦めたがマリンと手遊びをしていると、酒場の方が急に騒がしくなった。
「何だろね?」
「誰かが喧嘩してるんだよ。しょっちゅうだから、慣れちゃった。すぐにティファが何とかしてくれるよ」
マリンの言葉とほぼ同時に、ティファの怒鳴り声と破壊音が耳を攻撃する。
「 ね?」
事もなかったかのようににっこりと笑うマリンにぎこちない笑みを返し、はこっそりと冷や汗を流す。
(怖っええええええ……!!)
ティファにだけは逆らわない方がいいかもしれないと、ひっそりと決心したのだった。
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