伍番魔晄炉ですと?
「この間、壱番がどうのこうのって言ってなかったっけ」
「それは今日やったのよ」
「……さいですか……」
疲れたようにうなずいたは、そこではたとマリンの存在を思い出した。
奥で一人、不安にしているかもしれない。
「マリーン、出ておいでー」
奥に向かって呼びかけながら、ついでにクラウドの腕をべりりとはがす(クラウドが寂しそうな顔になった)
「うわあ、綺麗なお兄ちゃん!」
「クラウドっていうんだよ。クラウド、この子はマリン」
「よろしく」
「よろしくね、クラウド!!」
おおはしゃぎのマリンと会話をするクラウドを見ていたバレットが、驚いたように呟いた。
「何だよあいつ、さっきまでとずいぶん態度が違えじゃねえか」
「そんなに違う?」
たまたまそれが聞こえたが首を傾げると、バレットが大きくうなずく。
「可愛げがないっつーか、すかした野郎っつーか」
「ああ……ええと、『興味ないな』とか?」
「そう!それだ!!」
ザックスの無駄話をばっさり切り捨てる時の、セフィロスの口癖。
本編でもよくクラウドが言っていたのを思い出してみたのだが、図らずも当たってしまったようだ。
思わず吹き出してしまったに気づき、クラウドがマリンと遊ぶのをやめて近づいてきた。
「?」
首を傾げるクラウドには、確かに昔の面影が残っていて、は何故だか無性に安心した。
からかうような笑みを浮かべながら彼の顔を覗きこみ、先程の言葉を繰り返してみせる。
「『興味ないな』?」
「なっ……!!」
途端に真っ赤になったクラウドに、こらえきれずに声をあげて笑ってしまった。
ひとしきり笑った後、気が済んだがクラウドをまっすぐに見る。
「いい目になったね。クラウド、君は『強く』なった?」
「 まだまだです。師匠みたいにはなれていません」
心底悔しそうな顔で答えたクラウドの肩に触れて、はおかしそうに微笑む。
「私みたいになんて、ならなくていいんだよ。セフィロスみたいにも、ザックスみたいにもならなくていい。誰かの完全なコピーなんてとてもつまらないし、何よりもむなしいものなんだから」
「師匠……」
師弟だけの世界になりかけたところに、遠慮がちなティファの声が割って入った。
「あの……ちょっといい?って今、確か18よね。クラウドの師匠ってどういう 」
「18?が?」
そのティファの言葉をさらに遮って、クラウドが訝しげにを見る。
それはそうだろう、6年前にも彼女は18歳だったのだから。
サバを読んでいるのかという目でじとりと見てくるクラウドに、は小さく苦笑した。
「あー……うん。私は確かに、18だよ?それも今度詳しく話すよ」
ぽむぽむとクラウドの頭を叩いて話を強制終了させると、それよりもと彼の耳に手を伸ばす。
「ピアス、つけてくれてるんだね」
「……だってこれは、が遺してくれたものだろ」
恥ずかしそうに目をそらしたクラウドは、記憶よりもずっと細くて小さいの手に戸惑っていた。
この人は、こんなにも小さかったか?
「 クラウド?」
不思議そうに声をかけられて、クラウドがはっと我に返る。
そんな彼の顔を覗きこみながら、(実はこっそりラピスの力がこめてあった)ピアスを触っていたに、慌ててかぶりを振った。
あまりの至近距離に、顔から火が出そうだ。
「何でもない」
「そ?それならいいんだけど。この後はどうするの?」
シナリオ通りならば、この場で契約続行がなされた気がするのだが。
「クラウド、次も手伝ってくれない?お願い!!」
ここぞとばかりにティファが頼みこむが、クラウドは何故か渋り顔だ。
「 はどうする?」
「私は元々、アバランチの手伝いって名目でここにいるからね」
ここから動くつもりはないと言外に告げたに、クラウドはしばらくためらった後にうなずいた。
「がいるなら、俺も手伝おう」
途端に明るい表情になったアバランチの面々とは対照的に、バレットが小さく毒づく。
「けっ、女に左右されんのかよ」
「バレット!!」
ティファがたしなめても、バレットは態度を改めようとはしない。
どうやらやはり、元ソルジャーのクラウドを嫌っているようだ。
気を悪くしてはいないかと、気遣わしげに見上げたに、クラウドは軽くうなずいて。
「長年逢いたいと焦がれていた相手だ、仕方ないだろう?」
あっさりと爆弾を落とした。
「……っ、クラウドーっ!!」
「え?ええ?もしかして、2人って……」
「違う違うちっがーう!!断じて違う!!」
「でもよ、今の言い方は」
「どう考えても……ねえ」
「っスねー」
「クラウドの阿呆ーっ!!どこでそんな言い回しを覚えてきたのさ!?さあ吐け、今吐け、きりきり吐け!!」
がっくんがっくんとクラウドの両肩を揺さぶるは、もはや半泣きだ。
一体誰なの、あんなに純粋で可愛かったクラウドをこんなタラシにしたのは!?
「ちょっ……!落ち着けって」
脳みそシェイクで昇天の危機に陥ったクラウドが必死にの肩をつかみ返して止めると、今度は打って変わって暗い笑みを浮かべた。
「そうか、ザックスだね……?うふふふ、待ってらっしゃいザックス。今度会ったら根性叩き直したるわ」
いつぞやのセフィロスの補佐になった時を彷彿とさせる表情に、思わずクラウドの表情が引きつる。
(ザックス……強く生きろ)
心の中でザックスに合掌して、それ以上の言及を避けたクラウドは、懐かしい師匠の姿にもう一度頬をゆるませた。
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