「、お客さんよー」
いつも通りにマリンと遊んでいたところにティファから声がかかり、ははてと首を傾げる。
「……誰だ?」
クラウドが来たのならば、ティファもそう言うだろう。
それ以外に訪ねて来る知り合いなど、いないはずなのだが。
「ごめんね、一人で遊んでて?」
「うん」
よい子の返事をしたマリンの頭をなでて、ほてほてと下に降りる。
店へのドアを開けた瞬間に、視界が真っ黒になった。
「 っ!?」
遠慮のない力で締めつけられて思わず抵抗をしかけたが、その気配がよく知ったものであることに気づいて動きを止める。
「ザックス?」
「おう!何だよお前、マジで全っ然変わってねえのな!!水臭えじゃねえか、6年間も消えちまって」
ようやく見えたザックスの顔も、6年分の年月を重ねて大人のそれになっていた。
それでも、太陽のような笑顔は変わらない。
そのことに無性に安心しながら、笑顔でザックスを見た。
「クラウドに、私のことを聞いたんだね」
「旦那もな。すっげえ喜んでたぜ」
「そう……」
セフィロスが、昔のままで待っていてくれている。
目の縁がわずかに熱くなった。
私は救えたのだろうか。
彼の碇と、なることができたのだろうか。
「 長い間、待たせてごめん」
「気にすんな、留守は守ったぜ」
ばしばしとの肩を叩いたザックスは、そのまま彼女の腕を引いた。
「行こうぜ。みんな、お前を待ってる」
「 うん」
ほんの数瞬ためらった後に静かにうなずいて、はティファを振り返る。
「ティファ。私、行くよ。伍番の時にはちゃんと手伝うから」
「……わかったわ。またね、」
仕方なさそうに苦笑したティファにうなずいて、はザックスと連れ立って店を出た。
「どこに住んでるの?」
「5番街スラム。3人ですんで、なんでも屋をやってるけど……あと1人、通いで他のメンバーがいる」
「へえ……。あんた達に付き合える人がいたんだ」
それがエアリスであるならば嬉しいと思いながら茶化して、ふと違うことを思い出す。
「クラウドはずいぶん男前になったね。ザックスが面倒見てるの?」
「主になー。旦那も時々見てやってるぜ。相変わらず、10合もたないけど」
「ああ、やっぱり。セフィロスの実力は半端じゃないからね。……料理は?」
最も基本的な疑問だ。
昔はばかり料理をしていたし、第一ソルジャーズでまともに料理ができるのは、せいぜいクラウドぐらいだった。
「クラウドと、通いのメンバーで半々。夕飯はさすがにクラウドだけどな」
「ああ、違うところに住んでるんだもんね。お夕飯は作れないか てか、あんたらいい加減に料理覚えろよ」
「やだよ、めんどくせえ。 着いたぞ、ここだ」
雑談をしながら歩いていたら、いつの間にか目的地に着いていたらしい。
意外にも小洒落た一軒家のドアを開けてずかずかと入っていくザックスに続いて、も中に入る。
「ただいまー、連れてきたぞー」
がったん!
どさっばたばたばたばたバンッ!!
「!!」
ものすごい音を立てて飛び出してきた彼は 淡い金の髪だった。
それでも、その手首に不釣り合いなブレスレットは。
「セフィロス?」
冷静な彼らしくなく、大きく目を見開いてを見ていたセフィロスは、その呼びかけに泣きそうに顔を歪ませた。
「ずっと、待ってた……」
けして触れようとせずに、かすれた声で呟いたセフィロスに、がゆっくりと近づく。
「遅くなって、ごめんね。ただいま」
静かにきゅうと抱きつくと、ようやくセフィロスもの背に手を回した。
ゆっくりと、おそるおそる。
すがりつくように抱きつくセフィロスの背をあやすようにぽんぽんと叩き、はその手をそっと滑らせた。
「それよりも」
むぎゅう。
「この髪はどうしたの、この髪は!今のもそりゃあ綺麗だけど、あの綺麗な銀髪はどうしちゃったの!!」
「……痛い……」
見事な金の長髪を力の限りに引っ張って、がくわっと目を見開く。
「当たり前でしょ、痛いようにしてるんだから!」
「、セフィロスがハゲになっちゃうぞ!」
「それは嫌だ!!」
奥から出てきたクラウドが慌てて叫ぶと、も反射的に手を離した。
それをザックスががっちりとホールド。
さすがソルジャーズ、息もぴったりだ。
「旦那の髪の色は目立つだろ?ひっそり暮らすためには、しょうがなかったんだよ」
「……ちぇー、あの色好きだったのになあ……」
ふてくされたようにさらさらとセフィロスの髪を梳いていたが、不意に何かを思いついたように目を輝かせた。
「セフィロス、これって染めてるんだよね?」
「ああ」
「やった!それなら、元に戻せるや」
がごくごく軽ーく言うやいなや、セフィロスの髪が元の銀髪に戻った。
「な !?」
「ありがと、ヒクサク、ラピス」
驚く男共をよそにそっと呟くと、は満足げにセフィロスを見る。
「うん。やっぱり、そっちの方が好き」
「そうか」
「うん」
長男と母親、ごくごく普通に会話。
「それより、どうしてあの時のままなんだ?」
服装が変わっているとはいえ、彼女の姿そのものは時間から切り離されたように変わっていない。
首を傾げたセフィロスにうなずいて、は3人をリビングへとうながした。
それぞれが思い思いの場所に座ると、彼女がおもむろに口を開く。
もうすでに、どこで何度繰り返したかわからない説明をするために。
「セフィロスにはもう言ったっけ?」
もうそれすら、定かではない。
時の流れは無情なものだと苦笑して、は3人を見渡した。
「 私は、この世界に属する人間じゃない」
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