「大丈夫?」




優しく揺り動かされて目を開けると、垂れ目の少女がほっとしたように笑いかけてきた。


「あ、気がついた?どこか痛いところ、ない?」
   教会?」


ぼんやりする頭で、助かったかと安堵する。
どうやら、無事にクラウドと同じポイントにたどり着けたようだ。

そこまで考えて、はたと気づいた。




   そうだよ、クラウド!!」




がばりと起き上がると、視界が一瞬真っ黒になった。
平衡感覚がうまく保てない。

そんなを、少女が横から慌てて支える。


「駄目だよ!まだ、完全には治ってないんだから」
「あー……血ぃ足りないや……」


額に手をあててしばらく耐え、今度はゆっくりと慎重に起き上がった。
眉をしかめてじっとしているの腕に、少女がそっと手を添える。
ここにいるということは、エアリスだろうか。


「クラウドなら、そこ」


少女(エアリス(仮))の指につられて自分のすぐ横を見ると、何やら今まで微妙に下敷きにしていた感のあるクラウドが。


「ギャー!!クラウドー!!」


今度こそ慌ててクラウドを揺り動かすと、小さなうめき声と共に、色白の瞼が震える。
ゆっくりと目を開いたクラウドの表情が、の姿をとらえて安堵にゆるんだ。


「……?」
「うん。大丈夫?」
「ああ。は?」
「私も平気。この人にケアルラかけてもらったみたい」


この人、とエアリス(仮)を示したに、クラウドの血の気がざざっと引いた。


「エ……エアリス……」
「エアリス?」


うん、やっぱり正解。
いやあ、茶髪の巻き毛って色っぽいね!!


「おはよ。お花、つぶしちゃったね」
「悪い!!」


にっこりと笑うエアリス、大慌てで平謝りのクラウド。
の中で、エアリス最強説が確定した。


「ごめんなさい!クラウド、きっと私をかばってくれたせいで……」


可愛い笑顔の裏に、何やら黒いものが見え隠れする気がする。
このままでは、クラウドが死ぬ。多分。




   って、その前に。




「2人とも、知り合いなの?」


まずはそこから確認すべきでした。


もしかしたらザックスが紹介でもしたんだろうかと首を傾げたら、ちょうどいい具合に話題をそらせたようだった。
エアリスもクラウドもの方を向き、合点がいったようにうなずく。


「一緒になんでも屋をやってるんだ」
「あ、通いでお食事作ってくれてる!」


なるほどねー、ザックスが生きてるならありえるか。
てっきり他のメンバーも男かと思っていたので、エアリスというのは盲点だった。

うなずくに、エアリスが話しかけた。


「ええと、?だよね。私、エアリス。をかばってたんなら、クラウドもしょうがないよね。お花、強いから平気だよ」


真っ白なオーラで笑いかけるエアリスは、まさに聖女のようだ。
だがしかし、見かけ通りでないことは、すでに痛いほどによくわかっていた。


「本当にごめんね。改めて、初めまして。クラウドの友達で、一応師匠のです。   もしかして、私のこと知ってる?」


先程の口ぶりからすると、まるで以前からのことを知っていたかのようだ。
首を傾げたに、エアリスがあっさりとうなずく。


「うん。みんなから、よく聞いてたよ。やっぱり可愛いね!」




ちょっと待て。




「可愛い?私が?」
「うん!」


力一杯うなずくエアリスに、は頭痛を覚えてこめかみをおさえた。

自分の方が数倍も可愛いのに、あえて私を可愛いと言うか。
嫌味ではなく、純粋にそう思っているらしいあたりが始末におえない。


「……エアリスって、変わってるよね」
「そうかな?」


無邪気に首を傾げたエアリスにうなずき(エアリスに同意したそうなクラウドは黙殺した)、がさらりと話題を変える。


「ミッドガルにも花が咲くようになったんだね。すごく綺麗」


黄色い花が地面から咲き乱れる光景は、贔屓目を抜いても充分綺麗だ。
この場所以外に咲いていないのは百も承知でそう言ってみると、エアリスが寂しそうにかぶりを振った。


「ううん、どこにでもじゃないの。ここだけ。……不思議でしょ?」
「そっか……なんでだろうね?」


首を傾げたの肩を叩き、クラウドが身軽に立ち上がる。
その視線は、教会の入口に固定されたままだ。


「エアリス、話は帰ってからにしよう。タークスが来たら面倒だ」
「とか言ってる間に、すぐそこまで来てるけど?」


7年前はよく知っていた気配を感じ取ったが口を挟むと、その後の2人の行動は早かった。


「エアリス、抜け道は?」
「屋根から行けるよ。こっち」
「よし。、立てるか?」
「あ、うん」


エアリスがてきぱきと花の手入れ道具を片付け、クラウドが退路を確保しつつを立ち上がらせる。
思いがけず力強い腕で引き上げられて、は軽くたたらを踏んだ。


「クラウド、準備できたよ!」
「よし。行くぞ」


タークスがやって来る前にすたこらさっさと屋根裏から逃げ出した3人は、そのまま屋根伝いにエアリスの家へと向かった。


「……エアリス、身軽だね」
「もう何年も、こういうことしてるもの」
「そっか……」


本編では確か、足場に飛び移るのにも苦労していた気がするが。
存在そのものが規格外のソルジャーズと一緒にいると、こういう変化が起きるものか。

ひたすら感心しながらひょいこらひょいと移動するは、自分もその規格外に含まれているとは露とも思っていなかった。