固めかけた拳を死ぬ気で開き、引きつりそうな口元を必死につり上げる。
我慢だ我慢、こいつに決定的な言葉を言わせるまでの我慢。
「もちろん、喜んで。でも その前に、お願いを聞いてくださいますか?」
「ほひ?」
「神羅」
甘い声でがそう言葉をつむいだ瞬間、コルネオがぴくりと反応した。
「神羅の副社長に、お会いしたいんですの。コルネオ様ほどのお方ならば、それもたやすいでしょう?」
誘惑するように目を伏せて、うっそりとした笑みを浮かべるに、コルネオの喉がごくりと鳴る。
なめるような視線を存分に意識しながら、さらに数歩コルネオに近づくと、はささやくように言葉を継いだ。
「コルネオ様?」
ピンク色に色づいた唇が、甘く動いて名前を呼ぶ。
「た……確かに」
からくり人形のようにぎこちなくうなずくと、コルネオは何度も唾を飲み込んでから口を開いた。
「簡単だの。儂は神羅に貸しがあるし……」
「貸し?」
「ああ、プレートを……これ以上言っても、難しくておぬしにはわからんじゃろ。ささ、こっちおいでー」
コルネオが上機嫌で手招きをするが、はもうそれ以上動かない。
「どうしたんじゃ?こっちおいでー」
「お断りします」
きっぱりと言い放ち、は高らかに宣言する。
「尻尾はつかんだよ!入っておいで、クラウド」
その声を合図として、ソルジャー服に戻ったクラウドが、待ってましたとドアを蹴破らんばかりに入ってきた。
「、何もされてないか!?」
「キス迫られた」
「殺す」
マジな目で抜き身の剣をコルネオに向けるクラウドをなだめ、も他の3人と同じように腕を組んでコルネオを見る。
ちなみにクラウド、うっすらと施していた化粧は、着替えた時に即行で落としたようだ。
それを内心でひっそりと残念がるの耳に、ひどく狼狽したコルネオの悲鳴が突き刺さる。
「だ、誰だ、お前らは!!」
「元ソルジャー1stだ」
「右に同じく」
「反神羅組織、アバランチ」
「スラムの花売り?」
エアリスだけ微妙に関係ない気もするが、それはまあ置いておいて。
斬り落とすだのすりつぶすだのねじり切るだの、あまり上品ではない脅しを聞きながら(そういえばプレイ当初は意味がよくわかっていなかったと遠い目をしつつ)、は こっそりと周囲の状況を把握する。
(そういえば、私だけ着替えてないなあ……)
下に着こんでいたわけでもなし、着替えを用意して射たわけでもなし。
ぼんやりと考えながらも鋼糸であれこれと使えそうなものを回収しているのは、あっぱれとしか言いようがないだろう。
目にも留まらぬ速さでマテリアやエーテル・ハイポーションなどを回収した彼女は、最後にちらりと天井を見上げる。
そこには、
「……檻」
が、ででんと吊り下げられていた。
今のこの位置だと、ティファがちょっと危ないだろうか。
そう判断すると、はちょいちょいとティファを手招いた。
「ティファ、ティファ、もうちょっとこっち来て」
首を傾げながらもティファが3歩、の方に近寄る。
次の瞬間、激しい音と共に檻が落ちてきた。
「きゃ !!」
「危なかったね」
色めき立つクラウド達とは違い、のんびりと構えている彼女に、クラウドが訝しげな目を向ける。
それに小さく微笑みを返し、はドレスに手を這わせた。
彼女が何をするつもりなのか瞬時に気づいたクラウドが、とっさに大声で止める。
「駄目だ!!」
「えー……だって、これ出さないと出れないよ?」
足元に仕込んである剣を暗に示すに、それでもクラウドは顔色を変えてかぶりを振る。
「俺がセフィに殺される」
冗談抜きで。
を溺愛しているあの元英雄殿は、彼女が人前で生足をさらしたと知れば、その場にいながら止めなかったクラウドに迷うことなく斬りかかるだろう。
「んー……じゃあ、人間相手じゃなきゃいい?」
「ああ」
クラウド、即答。
「わかった」
もあっさりうなずくと、勝ち誇ったような表情のコルネオをまっすぐに見据える。
「それで?私達をこうして、どうするつもり?」
「こうするんだよ」
にやけたその言葉と共に、床が2つに割れて足元がなくなった。
突然のことに、誰もが悲鳴を上げることしかできない。
「うわああああっ!!」
「「きゃああっ!!」」
「下着見えるでしょ馬鹿ー!!」
約一名全く的外れなことを叫んでいるが、そこはまあ華麗に無視して。
4人は底の見えない暗闇へと落ちていった。
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