落ちて落ちて、落ちること数秒。
視界が開けたところで下を見たエアリスが、悲鳴と共に叫んだ。
「クラウド!下、下水道!!」
「ちょっと、冗談じゃないわよ!!」
エアリスのそれにティファノ悲鳴がかぶり、クラウドも口元を引きつらせる。
「げ……」
さすがに、あの臭さの中にダイブするのは遠慮したい。
冗談抜きで。
どうやって回避しようかと頭をフル回転させていたクラウドに、が声をかける。
「クラウド、ちょっと荒技いくよー」
「え !?」
その言葉に横を向くと、彼女は空中で器用にバランスを取っていた。
両手に魔力の風が渦巻いている。
「 !!」
「平気平気、水はかぶらないか……らっ!!」
クラウドが止める間もなく、がそれを勢いよく後ろから前に向かって放った。
当然前方に向かって激しい風が吹き、全員身体を持っていかれる。
「きゃ 」
「ちょ 何!?」
「、何を 」
「うるさい!気が散るでしょ!!」
驚いて問いかけようとしたクラウドに、が鋭く怒鳴りつけた。
全神経を集中させて風力と風向きを調整し、全員を無事に床の上に着地させる。
さすがに疲労の色を隠せないに、エアリスとティファが両側から抱きついた。
「ありがとう!!」
「助かったわ!!」
「どういたしまして……」
とっさのことで、魔力の大きさを調整することができなかったらしい。
小さく微笑んだを遮るように、表情を固くしたクラウドが声をあげた。
「何か来る」
下水をさざめかせ、何か殺気が。
クラウドに続いてそれに気づいたは、特に驚いた様子もなくうなずいた。
「大きいね。そこらの雑魚とは、ちょっと違う」
常と変わらない声とは裏腹に、気配だけが張りつめる。
ティファもエアリスも戦闘体勢に入り、現れたそれは。
「……これ、よく下水道で生きていられるよね」
巨大なゴリラもどき。
こんなに巨大なものがよく住んでいられるというか、生きるだけの餌があるというか。
「コルネオのペットかな。首輪がついてる」
「どうでもいいだろ、。いくぞ!!」
「あ、はそこにいてね!せっかくのドレス、汚れちゃ嫌だし!」
「……ありがと……?」
気にするポイントはそこなのか。
エアリスに何とも微妙なことを言われ、お礼を言うべきなのかどうか悩んでしまった。
その間にもクラウド達が3人でアプスをめっためたのギッタギタに叩きのめして、晴れやかな顔でこちらに向き直る。
「さ、行きましょう」
拳にちょっぴり体液をつけたティファに笑顔でそう言われ、はかくかくとうなずいた。
「クラウド、を抱っこしてあげて!ドレス、汚れちゃう!」
下水道に入らなければならなくなる度にエアリスがそう言い、クラウドも素直にそれに従う。
心なしか顔色が悪いあたり、どうやらエアリス最強説は間違いないようだった。
3人がそこはかとなく汚れてきているのに自分だけ綺麗なままなのが申し訳なかったは、せめてと最後のマンホールを持ち上げた。
「いよいっ……しょ!っと」
意外に重い蓋をがっこんと横にのけて腕の力だけで這い上がり、続いて出てきたティファに手を貸す。
「、着替えは?」
「セフィロスが持ってる……。まさか私が選ばれるとら思ってなかったから、コルネオの手下だけぶちのめしたら、館を出てセフィロスと合流するつもりだったんだ」
しょんぼりとうなだれたがティファに答えているその横で、携帯で連絡を取り終えたクラウドが振り向いた。
「七番プレートに移動するように頼んだ。多分これで大丈夫だろうとは思うが……急ごう」
「了解」
途端にソルジャーの顔に戻ったが、先人をきって飛び出していく。
「待って、!ここ、列車を動かしたりしないと 」
慌てて止めようとしたエアリスの声は、鈍く耳障りな金属音で途切れた。
「……エアリス、には『障害物』っていう概念はないんだ」
「……そう、みたいだね……」
疲れたようなクラウドの言葉を聞きながら、ドアを剣でぶった斬って進むを見て、エアリスは乾いた笑いをもらす。
「まあ、手間がはぶけてよかった……かな?」
彼女の後に続いて走っていくと、ほどなくしてプレート支柱が見えてきた。
「 戦ってる」
風に乗って低くもらされた呟きには、もどかしさがにじんでいる。
何かとを見たエアリスに、彼女が短く告げた。
「先、行くね」
「、待て!」
言った瞬間にぐんと速度をあげた彼女を呆気にとられて見送っていると、やや後ろからティファの声が響いてきた。
「ちょっと……待って!!」
行きも絶え絶えのその声に思わず足を止めると、死にそうな様子のティファがよろけながら走ってくる。
ぜいぜいと膝に手を突いて荒い呼吸をしながら、ティファはエアリスを見上げた。
「エ……エアリス、あなた、どうしてそんなに速く走れるの!?」
「え?うーん……クラウド、私、速い?」
訊かれたエアリスも焦ったが、話を振られたクラウドも困った。
なにせ、一緒に行動している相手が相手だ。
「普通」の基準がわからない。
「速い……んじゃ、ないのか?ティファがそう言うなら……」
実はティファも十分「普通」の基準からは外れているのだが、その事実を指摘する人がいるわけもなく。
「 とりあえず、行こう」
「そだね」
3人はプレートに向かって走り出したのだった。
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