ザックスの声に反応して、エアリスが大きく身を乗り出した。


「バレット!あの子、無事だから!安心し   きゃあっ!!」


険しい表情で心配する恋人を気持ちのいいほど無視し、彼女はバレットに向かって叫ぶ。
そんな彼女の頬をツォンが激しく張り、スキッフの奥へと突き飛ばした。


エアリスにスルーされた事で若干落ちこんでいたザックスが、それを見て一気に気色ばむ。
そんな彼をちらりと見て、ツォンは無表情で操縦士に合図を送った。


「行け」
「はい」


勢いよく上昇していくスキッフの足に、レノが片手でぶら下がっている。
目が合ったがにやりと笑われ、思わず剣をぶん投げそうになった。


、抑えろ!このまま投げると、下に人がいるかもしれないだろ!!」
「そうよ、我慢して!!」


クラウドとティファの必死の制止で、なんとか思いとどまったが。


そんな彼女に、コンピューターをいじっていたセフィロスが声をかける。


、駄目だ。プログラムにクラックできない」
   セフィロスでも駄目?」


爆破プログラムにアクセスして阻止しようとしていたのだが、ブロックが厳しいようだ。


「爆破は防げない。退避しよう」
「時間は?」
「残り15秒」
「無理だろ、んなの!!」


冷静に答えたセフィロスに、目をむいたバレットが地団太を踏む。
ちくしょう、もう駄目だと叫んだその声にかぶるように、ティファの大きな声が届いた。


「このワイヤー、使えないかしら!?」


巨大なフックがついた、太いワイヤーロープ。
4〜5人なら耐えられそうな様子だ。


「……俺とザックスは別に脱出する」


大の男が4人に女性2人(さらに獣1匹)では、さすがに切れてしまうと判断したらしい。
セフィロスが間髪入れずに申し出た。
ザックスも異論はないようで、真剣な表情で短くうなずく。


   生きて脱出できる勝算は?」
「五分五分だな」


どこまでも正直に答えたセフィロスの言葉に一度固く目を瞑り、は強い光を宿して再びクラウドを見た。


「私もセフィロス達と一緒に行く。クラウドはティファ達をサポートしなさい」
「な   
!?」


とんでもないというようにクラウドが声を荒げるが、の有無を言わせぬ表情に息をつまらせ、悔しそうにうなずく。
この表情をした彼女には、昔から勝てたためしがなかった。


「……また、後で。
「必ず」


タイマーが残り5秒を指した。
クラウド達の乗ったワイヤーのフックを2人がかりで思いっきり蹴り飛ばし、残ったが翼を広げる。


「何だよそれ!」
「ラピスの力を解放しただけ。つかまって、行くよ!!」


目をむいて叫んだザックスに怒鳴り返し、無理矢理2人の腰をつかんだが床を蹴った。
力まかせに急上昇して横に移動し始めると同時に、背後から爆風が襲いかかる。




「きゃ   !!」




自分一人ならまだしも、荷物代わりを2人も抱えている今のでは、爆風を耐え抜いてコントロールをするほどの余裕はなかった。
ぐわりと大きく揺れてバランスを崩し、あわや墜落しかける。




「シールドシールド   ヒクサク!!」




必死にが叫んだ瞬間、3人の周囲に薄い膜ができた。
安堵の息をついてよいせと気合いを入れ直したの背中を、セフィロスが軽く叩いて注意を向ける。


「シールドなら俺が張る。はコントロールに集中してくれ」
「うん」


改めてセフィロスがシールドをしっかりと張り直すのを確認し、が紋章の力を解除する。
先程よりも安定した動きで移動をした3人は、沈んだ表情のクラウド達の下へと降り立った。


「おらっ!何沈んでんだよ、エアリス助けに行くぞ!!」


こっそり背後から忍び寄ったザックスががすりとクラウドの頭を殴ると、振り向いた魔晄色の瞳が大きく見開かれる。
つられて振り向いた2人も目を見張った。


!?」
「お前ら、いつの間に!?」
「うん、ちょっとね。   スラムの人達は皆、他のスラム街に避難したはずだよ。確かに住んでた場所はなくなったかもしれないけど、生きてればまた一から始められる。人間って、そういうものじゃない?」


自分達のせいで命が失われたかもしれない。


そう思って後悔しているだろうティファに笑いかけて、だからといって魔晄炉爆破も褒められた事ではないけれどと肩をすくめる。


「何でだよ!?」
「よく考えてよ。あのテロ行為、何人が巻きぞえで死んだと思ってるの?」


くってかかったバレットに短くそう言い、は小さくため息をついた。


「私達はソルジャーだから、そういう風に命を奪う任務だって、いくつもこなしてきた。自分とは全然関係ない事で死んでいく不条理も、直接手を下す相手である私達への恨みも、全部身にしみてわかってる。だから伍番の破壊だって、同じ覚悟をもって臨んだよ」


けれど。


「バレット。ティファ。あなた達に、『関係のない人々を殺す』覚悟はあった?」


魔晄炉のメンテナンス要員、技術者、警備員。
彼らは確かに神羅の人間だけれど、ただ自分の仕事に誇りを持っていただけだった。

ましてあの時、偶然に魔晄炉の近くを歩いていただけの人々は?


その死をも背負う覚悟がなかったならば、神羅よりもむしろ劣悪。


まっすぐに見つめるの視線から逃れるように、バレットもティファも言葉をつまらせて下を向く。
そんな2人の背中を叩き、ザックスが苦く笑った。


「これから覚悟してきゃいいさ。俺達にはまだ、エアリスっていう助けなきゃいけない相手もいることだし」
「そうだ、エアリス!」


アバランチでもないのに協力してくれた彼女を思い出したのだろう、ティファが勢いよく顔を上げる。
バレットの表情にも、先程までとは違うものが見えた。


「あの嬢ちゃんは、自分と引き換えにマリンを守ってくれたんだ!今度は俺が助ける番だぜ!!」
「覚悟はいいのか?」
   おう!ここで逃げ出したら、それこそクソ野郎じゃねえか」


殺す覚悟はできたのかと訊いたザックスに勢いよく拳を振り上げ、バレットが大声で咆える。
自分を鼓舞するかのようなその様子に小さく笑い合い、ソルジャー達は表情を改めた。


、ザックス、クラウド。新たなミッションだ」
了解ラジャー、セフィロス」


それぞれの表情で一斉に同じ答えを返し、4人は何を言うでもなく同じ方角へと走り出す。
置いていかれる形になったバレットとティファも、一拍後に慌てて後を追った。

目指すはすぐ隣、ウォールマーケット。