「おい、もっと詰めろよ」
「無理よ!バレット、あなた自分がどれだけ大きいのか、自覚あるの?」
「ぐっ……!!」
何やら先程と同じような会話を聞きながら、ソルジャーズも別のドームの影に身をひそめる。
単なるサンプルの保管庫にしては巨大すぎるそれに、は既視感を覚えてふと眉を顰めた。
どこかで、これを見た気がする。
けれど、どこで?
一体何がそんなに気にかかるのかと記憶をひっくり返していたら、その様子に気づいたザックスが心配そうに彼女を見やった。
「どうしたんだ?。さっきから何か変だぞ」
「や、さっきとは全然関係ないんだけど……このドーム、何だか気になって……」
年を取ると記憶が薄れて仕方がないと首をひねるの横で、セフィロスがひょいとその中を覗きこんだ。
ほう、と感心したような声がその口からもれる。
「首がないな。あの宝条のサンプルにしては珍しい」
「どれど うげっ、俺こういうの駄目」
つられて横からひょいと覗きこんだザックスが、喉を押さえて吐く素振りをした。
その会話を聞いていたは、もうすでにムンク状態だ。
(そそそそうだよ、これジェノバじゃん!クラウドはともかく、セフィロスには見せない方がよかったのに……!!)
どうして忘れていたのか。
こんなに重要なものをど忘れするなんて、いくらなんでも酷すぎる。
どうしようとセフィロスを見上げると、予想に反して平然としていた。
純粋に興味をそそられたような様子をほっとしながら見ていたら、形のいい唇からぎょっとするような言葉がもれる。
「しかし どことなく、懐かしい」
「ちょ、セフィロス?」
やはりジェノバの影響力は大きいのかと青くなったの横で、ザックスが呆れたように笑った。
「おいおい、旦那ぁ。それ、昔も言ってなかったか?」
「ニブルヘイムでも言ってたな、そういえば」
クラウドも便乗して軽く笑い、宝条が動き出したのを見て行こうとうながす。
合図に従って次々と飛び出していく仲間達の足音を聞きながら、はじっとドームの中のジェノバを睨みつけた。
「負けないんだから !!」
忘れていないのは、それだけジェノバの影響力が強いから。
懐かしいと感じるのは、魂がどこかで覚えているから。
けれど。
あんたなんかに、セフィロスは渡さない。
この絆が負けるなんて、そんなことありえない。
首なしは首なしらしく、おとなしくその中でじっとしてろ!
呪詛をかけそうな勢いで念じると、軽やかな足取りで先頭のクラウドに追いつく。
「ねえ、クラウド」
「何だ?」
「後でさ、宝条一発殴っていい?」
輝かんばかりの笑顔で拳を固めるに、昔の様々な思い出がよみがえったクラウドの顔が青くなった。
こういう表情の時のは、間違いなく全力でやる。
殺る勢いでやる。
宣言通りに一発しか殴らないだろうことは予想できたが、それでも宝条の命が心配になった。
「……一応、殺さないようにしてくれ」
「もちろん」
ぐっと力強く親指を立てたにさらなる不安を覚えながら、クラウドがエレベーターのボタンを押す。
重量オーバーがやや心配だったが、何とか許容範囲だったらしい。
無事に動き出したエレベーターにクラウドが安堵の息をつくと、ザックスが軽く笑って大丈夫だとうなずいた。
「このエレベーター、実験用の機材なんかも運ぶしな。2トンくらいまでならいけるんじゃねえ?」
「へえ。ザックス、よく知ってるね」
「2nd時代に色々やらされたからな……」
驚いたように目を見開いたの言葉に、ザックスが遠い目をした。
背中にちょっぴり哀愁がただよっている。
対照的にちん!とやけに明るい音をたてて開いたエレベーターがさらに哀愁を誘ったが、当のザックスはそんなことを忘れたかのように目を見開いた。
視線は部屋の中に釘づけだ。
「エアリス!!」
大きなシリンダーの中に入れられたエアリスが、ザックスの声に反応して弾かれるように振り向いた。
掌が叩きつけられたシリンダーが、大きな音をたてて小さく震える。
「 ザックス!!」
こらえきれずに出たような叫び声に、ザックスがクラウドを押しのけて飛び出した。
力任せに体当たりをしてみたり、大剣を叩きつけてみたり、様々な方法を試してもシリンダーはびくともしない。
大きく顔を歪めて舌打ちをしたザックスは身を翻して宝条に詰め寄り、その胸倉をつかみ上げた。
「宝条!さっさとエアリスを出せ!!」
「おや、君は確か……そうか、古代種と共にいたんだな」
苦しくないはずはないのに、宝条は興味深そうに片眉を上げただけだ。
ふてぶてしいまでの態度に、ザックスの眉がつり上がる。
「古代種でも何でも関係ねえだろ!?お前がしてんのは人権侵害 」
「無駄だよ、ザックス」
激昂しかけたザックスの肩をつかんで止めたのは、静かなの声だった。
感情のない目で宝条を見る彼女は、不気味なほど凪いだ表情をしている。
ジェノバプロジェクトの、実質的な首謀者。
ガスト博士とイファルナを殺し、セフィロスの血縁上の父親であり 我が子すらも、実験材料とした男。
いや、実験のために「我が子」を作り出したというべきか。
こんな男の手中に、セフィロスを渡してはならない。
何があっても、絶対に。
誰にも気づかれないように奥歯を強く噛みしめながら、はほんの僅かに目を細めた。
|