「こいつ、人の心を持ってないもの。今までだって、数えきれないほどの人体実験をしてる」


人工的にモンスターを作り出したのも、十中八九この男だろう。


ニブルヘイムの魔晄炉を思い出しながらまなじりをきつくし、は無意識にセフィロスをかばう体勢になる。
それに気づいた宝条が、おもしろそうに口元を歪めた。


「ほう……君は知っているのかね」
「何が?」


さらりと訝しげに訊き返しながら、が横目でザックスに合図をする。
だがそれよりも、宝条が手元のボタンを押す方が早かった。


「さあ、絶滅寸前の種族同士の交配だ。珍しいものが見られるぞ」


クァックァックァッと高笑いをあげる宝条を、気配を殺して背後に立ったクラウドが無言でどつく。




「アヒルかお前は」
「クラウドうまい!」





座布団一枚!とでも言い出しそうなの頭に、セフィロスが手を置いて黙らせた。
さすがセフィロスとティファが尊敬の目を向けたその先で、当の本人も無言で親指を立てる。


よくやった。前からこいつは気に食わなかったんだ」
「宝条を好きな奴なんていないだろう?」
「まあ、それもそうだな」


完全にノビている宝条を見下ろしながら、かなり酷いことを平気で言い合う二人。
その横ではザックスが一人エアリスを助けようと奮闘しており、最終的にバレットの手を借りてシリンダーを破壊していた。


「エアリス!!無事か!?」
「ザックス!!」


感動の再会を果たす二人の横を、赤い風が通り抜ける。
シリンダーの中にいたのがエアリスだけではなかったと、ザックスが気づいた時にはもう遅かった。




   !!」




ザックスの絶叫に、宝条をぼろくそにけなしていた3人が顔を上げる。
瞬時に身構えるセフィロス、炎マテリアに手を伸ばすクラウド。
だが、二人が行動するよりも早く、赤い獣がに飛びかかった。


「うわ   っ!!」


床に倒れこんだを助けようと、セフィロスが正宗を抜き放つ。
しかし、それが獣に向けられるよりも早く、本人の掌がそれを止めた。


「大丈夫!」
「おい、大丈夫なはず   大丈夫だな、そりゃ」


エアリス共々慌てて駆け寄ったザックスが、べろんべろんと盛大に首筋をなめられているを見て、気が抜けたような顔になる。
腕に力をこめて起き上がったは周囲に微笑み、懐かしい毛並みに顔をうずめて小さくささやいた。


「久しぶり、ナナキ」


応えるように彼女の耳を甘噛みしたナナキは、クラウド達に向かってレッド13だと名乗る。
やはり少々警戒しているらしいと小さく息を吐いて、ナナキの背中をなでた。

彼らは大丈夫だと伝えても、きっと今のナナキには聞こえないだろう。
自分で見て話して、感じてもらうしかない。


「行こう。いつまでもここにいる必要もないでしょ?」
「そうだな」


うなずいたクラウドが、目立たないようにとパーティーを2つに分け始めた。


「俺と、ザックスと   エアリスと、レッド13。セフィロス、アバランチは頼めるか?」
「任せろ」
も、頼む」
「OK」


ナナキの実力を把握できていない今、妥当なパーティー編成だろうともうなずく。
互いの幸運を祈り合った後、エレベーターに乗り込んだクラウド達を見送ったセフィロスと視線を交わした。


「行くか」
「うん。……ティファ、バレット、もう1回頑張って」


階段で戻るのだと暗に示したは、二人の返事を見ることなくエレベーターに乗りこむ。
手早く60階のボタンを押して一息ついたは、しかし大事なことを忘れていた。


がっこん。


「あれ?まだ62階だけど……」


ティファが首を傾げたその時に開いたドアの向こう側を見て、の顔が思わず引きつる。


「げ……」
「よう、


のっそりと気だるげに入ってきたのは、見覚えがありすぎる赤毛。
どうして忘れていたのかと内心頭を抱えながら、はぎりとレノを睨んだ。


「レノ……」
「クラウド達も今頃、ルードがつかまえてるだろ、と。おとなしくした方が身のためだぞ?」


ここでレノを叩きのめしてもいいが、狭い空間の上にティファ達がいる。
うかつには動けないこの状況が、ひどく腹立たしかった。


   後で、覚えときなさい」
「こっちも仕事だっての!!じゃなきゃ、こんなおっそろしいことしねえって!!」
「口調崩れてるってばあんた」


冷静に突っ込んだが小さくため息をつき、ちらりとセフィロスを見上げる。
視線を受けたセフィロスも、小さくうなずいた。

一体どうなるのかと不安に顔を曇らせたティファの前で、は投げやりに肩をすくめる。


「連れてきなさいな。どうせルードも、私達のことをダシにして、クラウド達をつかまえるにきまってるもの」
「……やけにおとなしいな、
「殴られたいの?」
「スンマセン」


瞬時に平身低頭で謝ったレノに、アバランチが生ぬるい目を向ける。
それに気づかなかったのは、本人にとって幸いだっただろう。


多分。