がしゃんという重い音で目を覚ましたのは、2人ともほぼ同時。
同じくほぼ同時に入ってきたセフィロスが、2人の状態を見てぎしりと固まった。
一つのベッドの中で同じ毛布にくるまり、身を寄せあうクラウドと。
顔は近すぎるし、密着しすぎている。
どう考えてもまずすぎた。
明らかによくわかっていないの横で、同じくぎしりと固まったクラウドは、だらだらと冷や汗を流しながらもセフィロスから目を離せない。
蛇に睨まれた蛙状態だ。
しばしの膠着状態の後、セフィロスがさりげなく正宗に手をかけながら目をそらした。
「……クラウド、後で話がある」
「……ああ」
……何か俺、人生終わったかもしれない。
うなだれたクラウドの横で、やっぱり何もわかっていないが、冷静に常識的な質問をする。
「セフィロス、どうやってここに?」
「ああ 」
訊かれてようやく我に返ったセフィロスが、クラウドから視線を外しながらじゃらりと鍵束を掲げてみせた。
目線で右を示し、端的に一言。
「看守が死んでいる。俺達のところとエアリスのところ、奥2つの鍵が開けられていたぞ?」
その言葉を聞いて、は固く目を瞑った。
ああ、やはり 。
けれど、本来リユニオンすべき存在はここにいる。
ジェノバに汚染される事なく、ここにいる。
ならば何故、ジェノバは動き始めたのだろう?
セフィロスと、エアリス。
ジェノバプロジェクトの実験体と、セトラの民。
あまりにも因縁めいていて、気味が悪かった。
口元を引きしめるの手を引いて外に出ながら、クラウドが看守の惨状に眉を顰める。
「……行こう。とにかく、逃げるチャンスだ」
「待って、クラウド!まだ、生きてる人、いるかもしれない。怪我してたら助けなきゃ!この血の跡、たどってみよ?」
さっさとビルを出ようとするクラウドを引き止め、エアリスが気遣わしげに上を見上げた。
助けられる人がいるならば助けたいという願いが、痛いほどよく伝わってくる。
脱出できなくなるかもしれないと渋る様子を見せたクラウドだったが、エアリスの視線に耐えきれずにうなずいた。
「……あまり、派手な動きはしないでくれ」
「了解!」
ぱっと顔を輝かせたエアリスに続いて、全員でぞろぞろと血痕(というよりも血の帯)をたどっていく。
あちらこちらに転がる死体、むせ返るような血の臭い。
クラウドに寄り添うようにして歩いていたティファが、青ざめた顔でぽつりと呟いた。
「これ、どれくらいの人の血なのかしら……」
人一人の血液を全て搾りとっても、まだまだ到底足りないような量の血液。
一体どれほどの人数が犠牲になったのだろう。
今にも倒れそうな顔色のティファを、が反対側から支える。
「ティファ。どんな理由にせよ、人を殺せば血が流れることは、そう少なくない。人が生きていた証だよ、これは」
だから、あまり気味悪がらないで。
怖がっていいから、その気持ちは無理に押さえ込もうとしなくていいから、その人達が生きていたことまで否定しないで。
励ますように置いた手に力をこめたの顔を見て、ティファも小さくうなずいた。
まだ残っているかもしれない敵を警戒しながら進んで行くと、前方からザックスの大声が飛んでくる。
「おい、さっきのサンプルがいないぞ!」
弾かれるように駆け寄ったの目に写ったのは、内側から破壊されたような形状で開け放たれているドームのドア。
声を失った一行の中で、ただ一人だけが拳を握りしめる。
「 ジェノバ……!!」
何故だ、何故ジェノバは動き出した。
一体何があった、どこへ行った、本当にこれで正しいのか 。
様々な思いがぐるぐると頭の中を回り続ける。
そんな彼女の顔色を見かねて寄り添ったエアリスに、はぎこちない笑みを見せた。
「……コレが、社内で殺戮をしているんだと思う。血液の付着と感想の具合からいって、多分間違いない」
ドームのすぐ傍で息絶えている研究員。
その回りに飛び散った血痕は最早完全に酸化し、どす黒く凝固している。
そこを支点として始まる血の帯からいっても、ほぼ間違いないだろう。
「ジェノバ、と言ったな。、お前はあれが何なのか知っているのか?」
「どうしてあんな状態でここにあったのか、それはわからないけど。何なのかは知ってる」
セフィロスの問いに小さくうなずき、は微かに眉根を寄せる。
そう。
両腕をもがれて別々に磔にされたあげく、全身に酷い裂傷があるジェノバなど、彼女の記憶のどこにもなかったのだ。
「。あれは何だ」
「……ジェノバ。星から来た、災厄。私からはそれしか言えない」
固い声で短く告げると、はそれ以上何も言おうとはせずに踵を返す。
どうしたのかと目を見張る一行に、軽く振り返って微笑んだ。
「行かなきゃ。生存者を確認するんでしょ?」
「あ……ああ」
その笑顔からは、これ以上何も聞かせないという意思が透けて見える。
彼女が隠そうとしているものは、一体何なのだろうか。
ぎこちなくうなずいたクラウドに目を細め、は迷うことなく足を進める。
エレベーターで上ってはフロア内を確認し、その惨状に眉を潜めながらまた上る。
それを繰り返しながら最上階までたどり着いた一行は、信じられない光景に目を見開いた。
権力を誇示するようなデスクの前、あれは 。
「あれは 正宗!?」
「プレジデント神羅!?」
己の欲に忠実に動き続けた男の、哀れな末路だった。
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