背中から正宗で串刺しにされたプレジデントに駆け寄り、一応息を確かめる。
生命反応がないことを確認したザックスが首を振るのを見て、バレットが呆然と呟いた。


「死んでる……。神羅カンパニーのボスが死んだ……!!」


どこか感極まったようなその言葉に重ねるように、クラウドがぽつりと呟く。


「だが、神羅が死んだわけじゃない」
「んだと!?」
「確かになあ。むしろ、プレジデントよりやっかいなのが残ってるか……」
「はあ!?」
「ああ……ルーファウスか」
「誰だよそれ!!」

「プレジデントの息子。血がつながってるとは思えないくらいイケメンで冷徹、ついでにやり手だよ」


いちいち反応するバレットに答えながら、金髪の冷たい美貌を思い出してがため息をつく。

あの男にはいい思い出がない。
またあれとやりあうのかと憂鬱になりかけた彼女が、柱の影で動くものに目を細めた。




   ん?」




あの丸くて小さくて卑屈な形は   
そういえば、キャハハとガハハの他にも、幹部に妙な口癖のチビがいた気がする。
ええと、名前は確か   


   あ、パルマー」
「何!?」
「バレット、捕獲!」
「よっしゃ!!」


あっという間に捕まったパルマーは、震える声でセフィロスが、と繰り返す。


「俺が   ?」


訝しげに呟いたセフィロスにびくりと反応し、パルマーがますます震え上がった。
力の限りに抵抗して逃げようとしつつ、必死に叫ぶ。


「お、お願いだ!うひょっ!命ばかりはお助けを……!」


間に挟まる口癖のせいで緊迫感がいまいち半減だが、本人はいたって真面目だ。
尋常ではないその怯えように、さすがに誰もが首を傾げた。


「おい。セフィロスが、一体何をしたんだ?」


しびれを切らせたクラウドの問いに返ってきたのは、信じられない答えだった。




「セ……セフィロスが、セフィロスがやった!」




誰もが凍りつく中、正宗をセフィロスと共に検分していたが動いた。
つかつかとパルマーに近寄り、にっこりと笑って。




「うちのセフィロスをそれ以上侮辱したら、ただじゃおかねえぞ?」




真っ黒なオーラで圧力をかけた。


「ほ、ほほほ本当だってば!うひょっ!約束の地がどうとか言ってた!!」
「約束の地……?」


エアリスが口元に指をあてて何かを考える横で、セフィロスは小さく眉を顰める。


「何だそれは?俺は知らんぞ」
「って、当のセフィロスが言ってるけど?」


が目だけ笑っていない笑顔を向けると、パルマーが今にも泣きそうな顔になった。
それでも必死に本当だと言い張るあたり、どうやら確かなようだ。


「俺の偽者、か……」
「ジェノバかもね」


考えこむセフィロスにそう言って、はあまり気にするなとその背を叩く。
名声高い『英雄』故に偽者は昔からいたし、そのせいで犯罪者になったところで、神羅から身を隠す生活に変わりはないのだから。


「血の跡の最終地点がここ。それに、この正宗……本物に瓜二つ。普通、こんなことはできないよ」
「ジェノバなら、それが可能だと?」
「多分ね。能力は定かじゃないけど、おそらく誰かに擬態することはすごく得意だよ」


むしろそれが、ジェノバ最大の能力と言っても過言ではない。
その能力を利用して、ジェノバは今までいくつもの星の力を奪ってきたのだから。
そんなジェノバにとって、正宗一本程度を模写することなどたやすいだろう。

訝しげなセフィロスにコピー能力が異様に高いモンスターだと思えばいいと手を振り、は肩をすくめる。
しかし、相手が何であろうと濡れ衣は真っ平だとセフィロスが眉を顰めた時、窓の外からヘリのプロペラ音が響いてきた。
そちらに気をとられたバレットの隙をついて、パルマーがすたこらさっさと逃げ出す。


「あ!!」


叫んだティファが、逃がすものかと真っ先に駆け出した。
慌ててその後を追いながら、はこっそりバレットに恨めしげな目を投げつける。


あそこで確実に捕獲していれば、ルーファウスとの交渉もまた違った展開になるはずだったのに。

初めに与えられた情報というのは、良くも悪くも判断に大きな影響を与える。
セフィロスがやったという先入観を植えつけられてしまったら、たまったものではないのに。


「ああもう、ちょこまかと目障りな!」
、苛つくのはわかるからファイラはやめてくれ!」


苛立ちまぎれにうっかりとファイラを唱えそうになったを、クラウドが必死に止めた。
この上パルマーまで黒焦げにしてしまったら、詳細な目撃証言を搾り取れなくなってしまう。
などと考えているあたり、クラウドもなかなか毒されているようだ。


逃げ足だけは異様に速いパルマーを追いかけて外に出ると、ヘリポートに悠然と構えるルーファウスが待っていた。


どうでもいいが、強風吹き荒れるヘリポートで、あの白衣もどきの前を開けっ放しとはいかがなものだろうか。
邪魔だからボタンを留めろ、ボタンを。


そんなことを思いっきり突っ込みそうになったに気付いたのか、ザックスが小さく彼女の腕を小突く。
そんな彼らに気付いたのはセフィロスだけで、シリアス一直線のパーティーに気づかれないよう、こっそりとため息をついた。