「お?珍しい、女の新兵だぜ」


入隊式を見ていたザックスは、珍しいものを見つけてセフィロスにささやいた。
ザックスが示す方を見たセフィロスの目に、確かに漆黒の長い髪が映る。


「……単に髪が長いだけの男じゃないのか」
「いーや、絶対に女だね。俺は男と女を見間違えたりしないさ」


妙に自信満々に言い切って、ザックスは楽しそうに目を細めた。
それを気配だけで感じ取ったセフィロスは、周囲にわからないようにそっとため息をつく。


思えば半年前、金髪のチョコボ頭が入った時にも、この男は同じような目をしていた。
そしてその直感は正しく、時たま仕事をさぼってまであの兵とつるんでいる。


頭が痛いとこめかみに指を押し当てたセフィロスを、女がちらりと見た気がした。












あ、セフィロス発見。


ぶっちゃけプレジデントの話などどうでもいいと言うよりもむしろ目障り耳障りだったので、遠慮なく(そして本人にも気づかれないように)英雄殿を堪能することにした。


隣にいるのは、もしかしてザックスかな?
後で会いに行かなきゃなあ。


そんなことを思いつつ、ほかのソルジャー達も見回してみる。




……うーん、これといって腕が立ちそうな人はあんまりいないなあ……。




さて、これからまずはクラウドに接触して師弟関係とりつけて、それからザックス達に会って。

そんな風に思っていたら、式が終わってすぐに、何故かザックスの方から(しかもセフィロスを引っ張って)に近づいてきた。


「おーい、そこのお姉ちゃん」
「何でしょうか、サー?」


立ち止まって微笑んだに、ザックスはにやりと笑う。


「お前、すげえ目立ってたぜ?気づいてないだろ、春の入隊はレベルが高いんだ。その中で女なんて、お前どんだけ強いんだよ」
「特別なことをしているわけではありませんよ、サー。ただ、自分の為すべきことをしただけです」


子供のように目を輝かせるザックスに苦笑して、はゆっくりと諭すように答える。


「それより、サー?お名前を伺っても?私はと申します」


見事なまでの猫かぶりで名乗ったに、ザックスは気恥ずかしそうにがりがりと頭をかいた。


「ああ、悪い。俺はザックス、こっちの旦那はセフィロス。旦那は知ってるだろ?」
「はい。お噂はかねがね」


セフィロスにむかって軽く会釈し、が右手を差し出した。
対するセフィロスはそれにぴくりと眉をあげたが、ザックスに小突かれてしぶしぶその手を取る。
軽く握手を交わした後、はセフィロスには目もくれずにザックスを見た。



「それよりも   サー・ザックス?」
「へ?俺?」



てっきりセフィロスにばかり話しかけると思っていたのだろう、ザックスが間抜けな声をあげる。
そのザックスにうなずいて、は胸元のポケットから一通の手紙を取り出した。


「もしや、ゴンガガ出身のザックスさんではないかとお見受けするのですが   ご両親からのお手紙をお預かりしています」


そして伝言が、と付け加え、はにっこりと微笑んだ。




たまには顔を見せに来い、この親不孝者。彼女の1人でも連れて来なさい、だそうです」




それを聞いたザックスが、苦笑して天を仰ぐ。


「あっちゃあ……お前、親父達に会ったのか」
「はい。1日しか立ち寄りませんでしたが、偶然お会いしまして」
「そっか。ご苦労さん、年寄りの話は長かっただろ」
「いえ。ご両親は大切になさるべきですよ」


たしなめるように微笑んで、は一礼して踏を返す。
歩きだそうとして足を止め、肩越しにちらりと2人を振り返った。


   お話はまた、2週間後に」


待ってなさい。
2週間で、ソルジャー3rdに上りつめてやる。


その足で急いで兵舎に向かうと、やはり女性ということもあってか、だけ1人部屋になっていた。


「別に男と一緒でもいいんだけどなあ……襲われても返り討ちにする自信はあるし」


プレートを見上げながらひとりごち、ごろりとベッドに寝転ぶ。
目を閉じれば星の悲鳴が聞こえてきて、は知らず眉を顰めた。



「……鍛錬、するか」



ザックスが剣を使っていたのだから、そのための演習場もあるだろうと予想して、よっこらしょと身を起こす。
そのままふらふらと歩いて演習場にたどりつくと、おもむろに剣を喚び出して舞い始めた。

いや、舞うというのは正しくはない。
仮想敵を配置して、それらを相手にしている。




「おい、あいつ……」
「何だよ、あれ……」




その場にいた兵達が、手を止めて彼女の方を見る。
それを気にも留めず、彼女は一新に剣を振るい続ける。


(これが終わったら射撃をやって、槍術やって、杖術やって、体術やって、それからええと   !)


突如風を切って襲いかかった背後からの攻撃を、とっさに後ろに回した剣で受け止めた。
ぎりぎりという耳によろしくない摩擦音を聞きながら思い切りはねのけ、最小限の動きで反転して相手と対峙する。


「ほう……やるな」
「……伊達に死線をくぐり抜けてきていないので」


男に見覚えはなかったが、身のこなしで手練れかどうかはわかる。
油断なく男の様子を見ながら、は短くそれだけを答えた。


数瞬の後に始まる、激しい攻防。


あまりにも直接刃を交わしすぎると、刃こぼれを起こしてしまう。
双方それがわかっているからこそ、むやみに受け止めようとはしなかった。


かわし、ふるって、またかわし。


「お前、どこでその腕を身につけた?」
「遥か遠く、誰も知らない川のほとりで」

「師は?」
   義兄に」


攻防の合間に、短い会話が交わされる。


「なるほど。いい男だったか?」
「もちろん」


即答すると同時に、男が戦闘態勢を解いた。
それにならっても剣を下げると、いきなり男がずかずかと近寄ってくる。
何だ何だと思っていたら、そのままばしばしと肩を叩かれた。


「……痛い……」
「お前、それだけの腕がありゃあ充分だ!ソルジャーに推しといてやるよ」

   は?」