朝焼けの闇にまぎれてさくさく移動しようと思っていたのだが、見るからにへろへろの状態のティファに気づき、がふと立ち止まる。


「クラウド、ちょっと待って」


クラウドに声をかけて引き止め、携帯でセフィロスに連絡を取り始めるを、誰もが何となく見守った。
背を向けてぼそぼそと何やら話をしていたが振り返った瞬間、その表情を見たクラウドが既視感に口元を引きつらせる。


「さて、ティファ」
「どうしたの?」




「ちょっくら、修行しよっか!」




「……え?」


輝かんばかりの笑顔で宣言したと、笑顔のままびしりと固まったティファ。
そんなティファの横で、クラウドはこっそりと遠い目をした。

こういう顔の時のがどれだけハードな修行をするかは、身をもって知っている。
そりゃあもう、嫌というほどに。


「え、あの、?ほら、ここ、モンスターが多いし……」
「大丈夫だよ、ここのは最弱レベルだから!」
「でも、早く行かないと見つかっちゃうかも   
「平気平気、昔隠れ家に使ってた洞窟がいくつかあるし!」


反論をことごとく封じられたティファは、次のの言葉で完全に黙りこんだ。


「ここのモンスターくらい楽勝で倒せるようになっておかないと、この先冗談抜きで死ぬよ?それが嫌なら、カーム辺りで別れよう」


笑顔でさらりとそう言ったは、だから頑張ろう?と首を傾げる。
それはクラウドも薄々感じていたことで、だれもが無言で成り行きを見守っていた。

この場で一番弱いのは、間違いなくティファ。
次点でナナキといったところか。
そしてそれは向こうのパーティーも同じことで、同様にバレットもしごかれるであろうことは、先ほどの彼女の電話ですでにわかっている。

足手纏いになると言外にはっきりと告げられて、ティファは強く唇を噛んだ。


   彼らに遠く及ばない、自分が悔しい。
師匠に習った格闘技は、もうすでに自己流と化していることぐらい、自分でもわかっていた。


「……わかったわ」
「OK。それじゃあまずは1週間、頑張ろうね」


励ますように笑ったは、そのまま迷うことなく洞窟へと一行を案内した。
長年無人だったそこは荒れてはいたが、総出で10分ほどかけるとそれなりに住めるだろうレベルだ。


「奥に入れば泉があるから、水浴びはそこでね。お風呂なんてないから、そこは我慢して。トイレは後で教えるよ。   あ、ちゃんと水洗だし、シャワートイレっぽいのになってるから。火をおこす時は左の道を入って少ししたところに、専用の場所があるから」


通気口も数多くあり、入口も植物でうまくカモフラージュされたそこは、なるほど隠れ家と呼ぶにふさわしい居心地だ。
風の精霊を総動員して洞窟内の大掃除をしているに、ティファが感心したような声をあげた。


「よく見つけたわね、こんなところ。そうそうないんじゃない?」
「うーん、まあ、腐っても私だからねー」


曖昧に笑って紋章云々をごまかしたは、埃をかぶっていた箱を開けて毛布を取り出す。


「とりあえず、今日はこれで我慢して。仮眠をとったら日光消毒をしよう」
「……、念のために聞くが。食料はやっぱり」
「当然じゃない、サバイバルだよ」


あるわけないと笑ったに、やはりそうかとクラウドもうなずいた。


ナナキにちらりと視線がいったのは、まあ気のせいにしておこう。
ナナキがおびえるようににすり寄ったが、それもまあ気のせいにしておこう。


「ええと、ここいらで一番弱かったのは……狼系のだっけ?」
「いや、機械類じゃなかったか?」
「あ、何かキモいのもあった気がする!!」


ああでもないこうでもないと言い合った2人は、最終的に意気投合してうなずきあう。


「まあつまり、何にせよ雑魚には違いないと」
「そういうことだな」
「全っ然安心できないんだけど……!!」


このままでは死ぬかもしれないと、ティファが恐れおののいて突っ込んだ。
その横のナナキ(やはり特訓に参加決定)の尻尾も、心なしか垂れ気味だ。
そんな2人ににっこり笑って、が小首を傾げる。


「バレット、もっときついことされてると思うよ。セフィロスもああ見えてスパルタだし、男だから遠慮はいらないし」
「てきよせのマテリア持たせて、そこらへんに放り出してるかもな……」


バレットは見た目にもムサいから、新兵の特訓気分でやりかねない。
経験値アップも忘れないだろうとうなずいたクラウドに、ティファの喉がごくりと動いた。

……どうして神羅兵のクオリティが高いのか、何となくわかった気がした。