ここまでお膳立てをしてもらって、後に引くわけにはいかない。
大体、ここで自分だけが特訓を嫌だと言えば、間違いなくカームでさようならだろう。

一度ぎゅうと目を瞑り、ティファは決意をこめてを見た。


「……やるわ。マテリアをもらえる?」
「オッケー!レッドもおいで、装備を整えなきゃ」


顔つきが変わったティファに破顔し、がマテリア袋をあさりだす。
その横で武器入れをあさっていたクラウドから受け取った防具に次々とマテリアをはめこんでいき、何とも気軽にティファに手渡した。


「そんなに強い防具入らないと思うけど、一応能力高めのにしておいたよ。   はい、こっちがレッドの分」


まだ成長させていない魔法マテリアは、せめてもの恩情だ。
今のレベルでラ級やガ級の魔法を使ったら、すぐにMPが底をついてしまうだろう。


「明日は多分、1日中モンスターと向き合ってもらうことになると思うから。あ、その前に、夕方から軽い筋トレね。その頃になったら起こすよ。ゆっくりお休み」


寝不足でほのかにくまを作ったティファを苔の上に寝かせ、ナナキの下にも毛布を厚めに敷く。

火を弱めて辺りを暗くすると、ほどなくして深い寝息が2つ聞こえてきた。
それを確認してから、クラウドがふと表情をゆるめる。
防具を外して手入れをしていたがそれに気づいて首を傾げると、端正な顔立ちがほころんだ。


「……いつか、と一緒に任務に就きたいと思ってたんだ」
   ああ、ソルジャーとして?」
「ああ」


言われてみればと自分の格好を見下ろすと、多少ぼろぼろではあるものの、なるほどソルジャーの戦闘服。
クラウドももちろん、言わずもがなだ。
そう考えれば、任務に見えないこともない。


「6年越し、かな」
「俺にとっては7年だ」


長かったとため息をついたクラウドが、静かにの髪に手を差し入れてもてあそぶ。


「待っている間に、の年を追い越したじゃないか」
「もう21だもんねえ……。ちょっとうらやましいな」


時の流れから切り離されたには、「年をとる」行為自体がうらやましい。
若いままでいたいと、冗談混じりに笑っていたあの日々は、すでにもう遠くかすんでしまっていた。


「すっかりたくましくなって。師匠冥利に尽きるよ」




「……も、守るよ」




原作以上に格好よくいい男になっていた弟子にが喜んでいると、不意にクラウドが真顔になる。
正面から静かに微笑まれて、の顔が一気に熱くなった。


(ふ……不覚……!!何なのこの子、いつの間にこんなにフェロモン出すようになったの!?)


ほてる頬を必死に押さえながら、昔のかわいかったクラウドを思い出す。
はにかんだような笑顔がよく似合う子だったのに!
いつの間にこんなに変わっちゃったの!?


7年あれば大人にもなるだろうとか、男がいつまでも可愛かったから、それはそれで問題だろうとか。
突っ込みどころは色々あるが、本人はいたって真面目だ。

先程までのシリアス思考もどこかへと吹っ飛び、たしたしと頬を叩きながらクラウドを軽く睨む。


   守られるほど、弱くないもん」
「はいはい。昔、セフィロスも守れって言ったのは誰だったかな?」
「ぐっ……」


大人の余裕を見せるかのように軽く笑ったクラウドは、ついと手を伸ばしての髪をなでた。
確かに言った記憶がないでもない、そこを突かれては黙るしかない。

むうとむくれ、どうしようとなくなってすねたように毛布をかぶる。
勢いが良すぎて、炎の明るさに埃が舞った。


   もう寝る!お休み!」
「お休み」


頭からすっぽりと毛布を被ったその様子は、まるで子供のようだ。
苦笑して頭と思しきところをなでると、さらにもぞりと引っこむ。

あんなに遠かった彼女がとても身近に思えて、声を押し殺して笑った。