すぐに消えてしまった後ろ姿を追いかけて、互いに少しだけ歩く速度を速める。
気配はしっかりと残っているが、見通しのきかないこの場所ではあまり離れるのは得策とは言えなかった。
「」
髪を揺らして歩くに声をかけると、ほんの少しだけ曇った表情が振り向く。
一体どうしたのかと首を傾げたセフィロスに、が小さくささやいた。
「……何か、嫌な奴に会いそうな気がする。ものっすごくする」
「レノか?それともルーファウス?」
「うん、どっちにしろそんな感じ」
「安心しろ、どちらにしろ叩き潰す」
真顔で本気の発言をしたセフィロスの後ろで、クラウドも力強くうなずく。
形だけでも止める気すらないらしい。
「それなら安心!」
そして、満面の笑みで嬉しそうに答える。
諫める気すらないらしい。
揃いも揃って人として失格のような気がする会話(当人達は気にも止めていない)をしながら歩いていたら、よそ見をしていたが前を行っていたはずのザックスにぶつかった。
「ザックス?どうし 」
「 タークス」
低くもらされたその呟きを聞いて彼の視線の先を追うと、確かに行く先をツォンが阻んでいる。
さらに、脇の道から、ルードがのそりと姿を現した。
「久しぶりだな セフィロス、ザックス、クラウド……」
「あんたはずいぶん老けたわね。かなり苦労してるって顔だけど?」
「……まあな」
の問いかけに深いため息をついたツォンは、それを振り払うように鋭い目でセフィロスを見据える。
「セフィロス。プレジデント殺害および大量殺人の罪で、お前を始末する」
「……俺はやっていない、と言っても無駄なんだろうな」
セフィロスが無表情に確認すると、ツォンも当然のようにうなずいた。
「目撃証言がある。白を切っても無駄だ」
ルードが戦闘態勢をとるのを視界の端でとらえながら、は小さく息を吐く。
セフィロスが出奔せずにここにいる以上、充分に考えられた展開だ。
タークスは暗躍部隊。
神羅の敵をけして見逃したりはしない。
まして、それがトップを殺したとなればなおさら。
ゆっくりと肩幅に足を開きながら、は低い声を出した。
いつでも飛び出せるように。
どんな事態にも対応できるように。
「一応、言っとく。 そのセフィロスは、うちのセフィロスじゃないよ」
「証拠はどこにある」
「ない。だけど、その時セフィロスは牢屋にいた。看守が生きてれば、証人になってくれるんじゃない?」
ありえないとわかりつつも、はツォンを睨み据えて言い放つ。
セフィロスに濡れ衣を着せるなど、許せるはずがなかった。
「うちのセフィロスが、そんな意味のないことする訳ないでしょ!」
力一杯怒鳴ったら、横でザックスが盛大に吹き出す音がした。
だむ、とその足を思いきり踏みつけて、さらに胸を張って表情の動かないツォンを睨みつける。
え?ザックスが悶絶してるって?
知るか!
「大体ねえ、プレジデントだけならともかく、何の関係もない社員達まであんなに殺して、私が許すとでも思ってるの!?」
「……ああ」
何を言っても聞く耳を持ちそうになかったツォンが、それを聞いた途端に納得した表情になった。
むしろそれに納得がいかないだっだが、ひとまず彼に言い放つ。
「引いて。セフィロスは何もしてない」
強い口調で言い切ったに、ツォンは何かを考えているようだった。
そんな彼が何かを言いかけたその時。
「いたいた!ツォンさーん!!」
底抜けに明るい声を上げながら、イリーナが息を弾ませて現れた。
何故か、とんでもなく見当違いの場所から。
彼女をどことなく哀れむような目で見たクラウドが、ぼそりと呟く。
「……迷ったんだな」
「迷ったんだね……」
とんでもない道に迷い込まない限り、あんな場所に出ることはない。仮に誰かを追っていたとしても、絶対にたどり着かない場所だ。
ツォンも頭痛をこらえるような顔をしている。
言いたい放題情報を流してからタークスのイリーナだと胸を張った彼女に、ザックスが呆れた声で突っ込んだ。
「仮にも敵に対して情報流すって……どうよ」
「ああっ!?しまった!すみませんツォンさあああああんっ!!」
「……もういい」
深々とため息をついたツォンが、諦めたようにひらりと手を振る。
ルードに構えを解くよう示しながら、すいと半身を引いた。
「行け。今回だけは、お前の言葉を信じよう」
「あら、ありがとう」
にっこりと笑って言葉を返したは、身軽にツォンの立つ出口へと近づく。
クラウドやセフィロスの制止する声が挙がったが、構わずにそのまま一気に跳躍し、ツォンの前に着地した。
反射的に身を引いた彼の耳元に顔を寄せ(イリーナの悲鳴が上がったような気がしたが無視した)、誰にも届かない声量でささやく。
「信じてくれたお礼に、ひとつだけ教えてあげる。 ジェノバを追いなさい。あれはセフィロスに擬態したもの、全ての元凶。あれを追えば、あなた達が求めていること全てがわかる」
「何……?」
怪訝な顔をしたツォンが何かを言うよりも早く、はにこりと笑って飛び降りた。
彼女からそれ以上の情報は望めないと悟った彼もまた、無言でゆるくかぶりを振りながら出口へと向かう。
タークスが完全に引き上げた後、緊張していた身体をほぐすように、ザックスが大きく息を吐いた。
「やーれやれ。これで解決……か?」
「一応はね。 さて、ジュノンに行くよー!」
イリーナが口を滑らせすぎた目的地に向けて、が意気揚々と拳をあげる。
コンドルフォートは現時点で無視する気満々な様子を見て、クラウドは小さく苦笑した。
確かにコンドルフォートには何もない。
せいぜいコンドルの巣があるくらいだ。
しかし、疲れを癒す選択肢すら与えないとは、やはり変わらずスパルタだった。
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