、その……俺も行くから、さ。そんなに落ちこむなよ」


怒鳴るだけ怒鳴ってがっくりとうなだれたを励まそうと、クラウドはこれから行くのが「英雄」セフィロスのところだということも忘れ、懸命に声をかける。
がここまで感情をあらわにするのは初めてで、だからこそどうしたらいいのかわからない。




……」




途方に暮れて名前を呼んだクラウドに、は疲れたように微笑んだ。


「ありがとね。   さ、冷めないうちにサー・セフィロスに持って行こうか」


気を取り直したが保温性の高い器を出し、2人で手際よく器に盛りつけ、トレイに乗せて部屋を出る。
セフィロスに会うのが初めてであるクラウドは(今更ながら)かなり緊張しているが、はそんなものなどどこ吹く風だ。

あまりにもいつもと変わらず普通通りなので、クラウドは思わず前を行くに尋ねていた。


「なあ、何でそんなに普通でいられるんだ?」
「慣れだよ、慣れ。確かにセフィロスはオーラがあるけどね、それよりもさらにオーラのある人達に囲まれてれば、そう緊張もしなくなるって」


くすりと笑って、は到着したドアをノックする。
インターホンがないあたり、やや旧式だ。


   誰だ」
「ソルジャー・ザックスの代理で参りました、ソルジャー1stのです。ザックスの代わりに昼食をお持ちしました」
「帰れ」


一応上司だからと、完璧な口調で言ったは、間髪入れずに返ってきたにべもない返事にぴきりと青筋をたてた。


「今朝から何も召し上がってないと伺いました。少しだけでも召し上がってください」


それでもまだ丁寧な口調で言えたは、賞賛に値するだろう。
はらはらと見守るクラウドの前で、は何とか理性を保つ。


「必要ない」


だがしかし、さらに言い放たれた言葉に、あ、限界、という呟きを聞き取ったクラウドが、ぎょっとしてを見た。
目が笑っていない笑顔を浮かべ、はやけに静かな声で再度問い掛ける。


   どうしても、召し上がらないおつもりですか」
「くどいぞ」

   そうですか。では」


失礼しますと言うが早いか、白刃がきらめいた。
真っ青になるクラウドの目の前で、それはあっさりとドアに吸いこまれていく。

金属同士がこすれあう嫌な音の後にが遠慮呵責なくドアを蹴ると、それは2つに分かれながらゆっくりと内側に倒れた。


「こんにちは。お久しぶりです、サー・セフィロス」


にっこりと笑顔を向けられたセフィロスは、デスクについたままの状態で驚いた表情をしていた。




「人がせっかく自分達の昼食を分けてやろうと持ってきてあげたんですから、ありがたくいただきやがれ?」




、それ、敬語違う…!


声にならない声で悲鳴をあげるクラウドを置き去りにしたまま、が乱暴に八宝菜の皿をデスクに置いた。


「冷めるとこの上なく不味いので、とっとと食べて下さい。スープは別に冷めてもいいんですけど、まあ温かい方がおいしいですよね。食べ終わったら、私たちの部屋まで食器を戻して下さい。そこまで面倒見きれません。なんならザックスを使っても構わないから、とにかく必ず戻すこと。いいですね?それでは」


口を挟ませる隙を作らずに一気に言い終えて、はくるりと踵を返す。
その動きで我にかえったクラウドも、慌ててスープをデスクに置いて礼をした。


「あの、失礼します、サー・セフィロス」


ドアの残骸を踏み越えて部屋を出ようとしていたが、不意に足を止めて振り向く。




「ああ、それから   私、明日から貴方の補佐になりますので。よろしくお願いしますね?サー




あてつけのように最後につけ足して、後はもう振り返らずにずんずんと歩いていく。
ようよう追いついたクラウドは、の表情を見て青くなった。


怖いよ、……!


あんのサラサラキューティクル美人……!誰も彼もがあんたのファンだと思ってんのか、くっそむかつく!ミーハーかどうかなんて態度見れば分かるだろうが、ああん?ふっざけんなよ!!


憤怒の表情と押し殺した声で柄の悪い言葉を吐くは、できれば先程のセフィロス並みに近寄りたくない状態だ。
今にもそこらへんの壁を蹴り出しそうなに、しかしクラウドは黙ってついていくしかない。




   クラウド」




不意に静かな声で名を呼ばれてを見やり、クラウドは驚いた。


「待っててね。絶対早く仕事を終わらせて、鍛錬につきあうから」


今までの怒りが嘘であるかのように、静かに微笑んでいたのだ。
自分とそういくつも違わないのに、こういう時に彼女をひどく大人に感じる。


   うん」


きっと、どんなに忙しくなろうとも、彼女が自分との約束を破るようなことはないのだろうと思う。
今までだって、どんなに疲れている時でも、鍛錬をつけてくれた。



「ん?」


だからこそ。


「無理、するなよ。疲れてる時にまで無理に見てもらうことないから、ちゃんと休めって」


涼しい顔をして、様々なことをこなしてしまう
いつか限界がきて、倒れてしまうのではないかと不安で。


「サーの仕事だって、その、持って帰ってこれるやつだってあるはずだろ?そしたら、俺にできるのがあればやるし」


思いがけないクラウドの言葉に、は一瞬きょとんとした。
次第にそれが笑顔になる。


   ありがと」


くしゃりと笑ってそう言い、クラウドの肩を叩いた。