その後意外にもセフィロスが自分で食器を返しに来たり、その際にがセフィロスを床に正座させて30分間説教をしたり(この時クラウドの中で最強説が誕生した)まあいろいろあったが、その甲斐あってか2人の関係は極めて良好だった。




セフィロスがいきなり食事をせびりに来る程度には。




「……どこで教育を間違えたのかしら。セフィロスは絶対ザックス2号になったりしないって思ってたのに」


当然のようにソファーでくつろいでいるセフィロスとザックス、そしてザックスにいじられているクラウドを見て、火から鍋をおろしながらがため息をつく。


「いいじゃんかよ、の飯はうまいんだし」
「大食らいが何人も押しかけて、うちのエンゲル係数は上がる一方なんだよ!」


ていやっと卵をフライパンに流しこみ、手早くくるくるとかきまぜながらのんきに笑ったザックスに言い返す。


「次からは食費持ってこい、食費。1人1回400ギル」
「そんなもんか?高くねえ?」
「あんた、自分がどんだけ食べてるか自覚あるの?」


もっと安くと口を尖らせるザックスに、すぱんと言い切る。
大の大人、しかもザックスにそんなことをされても、全然可愛くない!

同じ動作を4度繰り返し、プロ顔負けのオムライスをテーブルに運ぶと、仕上げとばかりにケチャップをどんと置く。


「さて。たんとおあがり、男共」


にっこりと笑って言われたその一言が、食事の合図。
待ってましたとばかりに、3本の手が一斉に皿に伸びる。

大きいオムライスが3つ、小さめのものが1つ。
小さめのものはもちろんのものだから、3人ともそれには目もくれずに少しでも大きいものを取ろうと必死だ。


「よっしゃもらいー!!」
「あー!!」


いち早く一番大きな皿をゲットしたザックスが満面の笑みを浮かべるのに対し、クラウドが心底悔しそうな声をあげた。
やはりまだまだ育ち盛り、ザックス並みにお腹は空くようだ。

仕方がないと小さく苦笑したは、自分の分から3分の1ほどを切り取ってクラウドの皿に移す。


「え、   
「食べておきなさい、育ち盛りに我慢する必要はないよ」


贔屓だ!と叫びそうなザックスは笑顔で黙らせておいて、遠慮しそうなクラウドに笑いかけた。
元々自分には少し多いくらいの量だったのだ、分けることぐらい何ということはない。
それでも遠慮しようとするクラウドに、多すぎるのだと笑ってみせる。


「だから、その分だけ食べてくれる?」
「……うん」


ようやっと納得したらしいクラウドを筆頭に、がつがつと気持ちのいい食べっぷりを披露するセフィロス達を微笑ましげに見ながら、もマイペースに食事を始める。


「今日のお夕飯はリゾットだよー」


「エビ!」
「ホタテ!」

「野菜もほしい」


のんびりとメニューを発表した途端に、ザックスとクラウドが争うように手をあげた。
その横でセフィロスもひかえめに主張する。
そんな彼らにむかって、はにっこりと輝かんばかりの笑顔を向けた。


「クラウドはともかく。セフィロス、ザックス、あんた達は自腹で材料調達してきやがれ?
「えー!?何だよ、それ!」


横暴だー!と叫ぶザックス(セフィロスは特に異議はないらしく、素直にうなずいていた)に、がびしりとスプーンを突きつける。
行儀が悪いと突っ込む者はいなかった。




「嫌なら来るな」




家事がからっきしのザックスは、そう言われると手も足も出ない。
社食の量と味ではもう満足できなくなっていたから、彼にとっては死活問題だ。

えええええ、となお騒ぐザックスの頭を、セフィロスが拳で殴った。
無言で悶えるザックスに、冷静に言い切る。


「うるさいぞ。いつまでもただで食わせてもらうわけにもいかないだろうが、馬鹿者が。   


英雄の意外な行動に固まるクラウドの前で、セフィロスが財布を取り出して札を何枚か引き抜いた。


「今までの分だ。これで足りるか?」


さすがにそこまでするとは思わなかったらしく、もあら、と目を瞬かせた。
しかしすぐに笑顔になり、それを受け取って立ち上がり、セフィロスの頭をなでる。


「いい子ね、ありがとう。でもお金って意外に汚いから、手を洗ってからまたお食事しよう?」


子供に対するような物言いだったが、それに関してセフィロスに文句はなかったらしい。
頭をなでられて微かにはにかむような表情をしていたセフィロスは(目撃したザックスがぎょっとして身を引いていた)、のその言葉にしばらく考えてからこっくりと無言でうなずいた。

連れ立ってリビングを出ていく2人を見送り、ザックスがすっげえと呟いた。


「旦那があそこまでなつくなんて、一体何者だよ、あいつ……」
「なつくって……猫じゃあるまいし。セフィロスに失礼だろ」


呆れて言い返したクラウドに、ザックスは指を立てて横に振る。
ちっちっちっちっち。


「あれは絶対猫だね。しかも、シャムとかペルシャとか、そういう高貴でプライド高そうなやつだぜ」
「はあ?」


何だかよくわからない喩えをされたクラウドは首を傾げ、まあいいかと放置することに決めた。
変なことを言っているときのザックスは、放置するに限る。

これまでの付き合いでそれを学んでいたクラウドは、とてもクールにそう決定した。












リビングでそんなやりとりがされているとは露知らず、セフィロスは素直にの後について歩いていた。
自分よりもやや小柄な身体を見下ろしながら、不思議な奴だとひっそり思う。


自分とそう歳は変わらないはずなのに、ずっと年上であるような振る舞いをする。
しかも、それが妙にしっくりときているのだ。


そう、まるで。




「母さん……」




母親がいたら、こんな感じなのではないかと、そう思う。


「母さん?私が?」


振り向いたの驚いた双眸と目が合うまで、そんなことを呟いていたことにも気づかずに。