「女の子は守るものであって、頭から串刺しにするものじゃありません!!そんなこともわからないの、あんたは!」
「 お前に言われる筋合いはないだろう。誰だ、お前は!!」
「私はセフィロスのお母さんだ!!」
なんだかよくわからないことを唐突に言われ、セフィロスBが反発するようにを睨みつける。
睨みつけて、打てば響くような返事にまたまた呆気にとられた。
……何を言っているんだ、この女は。
頭がおかしいのではあるまいかと思いもしたが、もう一人の自分(らしい人物)は嬉しそうな表情をしている。
一体どういうことだと、困惑を隠しきれなかった。
「 私の母は、ジェノバだ」
「そのジェノバは、セフィロスに何かしてくれたの?愛してくれた?抱きしめてくれた?敵から守ってくれた?」
ようやく紡いだ言葉にも、畳み掛けるように返される。
それに一つも答えを返せないことに、今更ながら驚愕した。
「それは 母さんは、私を必要としているから、リユニオンを 」
「ああしろこうしろって命令するだけで、何もしてくれないあんな物体は、あんたの母親じゃありません!いい加減目を覚ましなさいな、あんたはジェノバを利用しているつもりかもしれないけど、結局利用されてるんだよ」
そこに直れと足下を指差したのプレッシャーに、セフィロスBは反射的に従ってしまった。
オプションで正座状態だ。
「いい?母親っていうのはね、ぎゅって抱きしめて大好きだよってささやいて、何がなんでも死に物狂いで敵から子供を守るものなの。それを一つもクリアできていないあのよくわからない物体に依存するのはやめなさいな」
「私は依存など……!」
「してるしてる。星を乗っとろうとする行動、ジェノバそのものじゃない」
ずばりと言い切られ、セフィロスBが絶句する。
母と言いつつも、その力を吸収して利用しているつもりだった。
足りない力をコピーとリユニオンすることで補い、この星の神となるつもりだった。
しかし、それは本当に自分の望みなのか ?
うつむいてだまりこんだセフィロスBの頭を、がゆっくりとなでる。
未熟なまま大人になってしまった子供に、ただ慈しみをこめて。
それをセフィロスBが拒絶しないことを確かめて、今度はゆるりと抱きしめてみた。
さすがに身を固くされたが、正宗を握る手をさりげなく押さえながら大丈夫だと背をなで続ければ、やがて力が抜けていく。
「私は、セフィロスのお母さんなんだよ。親権ももぎとったし、一緒に暮らしてるし、いつでも大好きだって伝えられる」
抱きしめる腕に少しずつ力をこめて、は小さくささやいた。
「 どこの世界のセフィロスであっても、私は君のことが大好きだよ。君を傷つける人がいたら全身全霊で守るし、悪いことをすれば全力で怒る。君が君でいるために、私は協力を惜しまない。 君が望むなら、みんなで一緒に散歩に行こう。世界は綺麗なものであふれているよ」
大切なんだとささやくに、セフィロスBが戸惑ったように眉根を寄せる。
「何故、お前は 」
「君が好きだから。大切だから。家族だから。それじゃあ理由にならない?犯した罪は消えないけれど、これから償っていくのを見守ることはできるよ」
おかしそうに笑ったが、子供をあやすように背を叩いた。
「セフィロス。今まで守ってこれなくて、本当にごめんね。よくできましたって褒めることも、陰口叩いた連中をぶちのめすことも、お帰りなさいって出迎えることもできなかった。それでも、どのセフィロスでも、私にとっては大事な息子だよ」
「 」
思わず名前を呟いたセフィロスの手を取り、は柔らかく微笑む。
「どうしたの?やきもち妬いちゃった?」
「 そんな、子供みたいなことをするとでも?」
「あら、しそうに見えたんだけど」
くすくすと笑いながら、はセフィロスBを覗きこんだ。
「これからも、一緒にいることはきっとできないけれど。忘れないで、どこにいようとも、何をしていようとも、私は君を愛しているよ。君が私の大切な息子であることに変わりはない」
生まれて初めて無条件に与えられる愛情。
生まれて初めて抱きしめてくれた腕。
生まれて初めて、全てを肯定してもらえた。
その温かさに溺れてしまいそうだ。
はねのけろと、頭の中でジェノバの声がする。
そんな愛情などまやかしだと、金切り声が叫んでいる。
だが 。
「……お前は、もういらない」
呟いた途端に、ジェノバの声が一気にうるさくなった。
お前は私の細胞から生まれたもの、どうして私に逆らうのか、何故私が拒否されねばならないのか。
頭中に響き渡るそれは、しかし小さくて温かな手が触れた瞬間に収束していった。
「ちょっとお前、人の大事な息子に何しやがってるんだ?」
少し黙っていろと地の底を這うような声で言い切ったに、セフィロスBの中のジェノバが怯えて震える。
「ついでにちょっと、そこから出ていってもらえるかな?」
笑顔のままで恐ろしい声を出したが、自分の左手に一瞬口づけた。
その拍子に手の甲が瞬き、何とも言えない残骸がセフィロスBから弾き出される。
「紋章持ちなめんな? このまま踏みつぶしたいんだけど、オッケー?」
笑顔で恐ろしいことを訊いたに、何故かセフィロスが無言で親指を立てる。
迷惑料だと言わんばかりの清々しい表情に、セフィロスBが憑きものが落ちたような顔になった。
「 私も、もっと早くにお前に出会えていれば、あのようになれていたんだろうか」
「してたよ、私が。絶対に」
独白に近かったそれに、が自信満々に答える。
それに小さく苦笑して、セフィロスBは正宗を鞘に納めた。
「エアリス。クラウド」
呼びかけられた2人がびくりと反応するが、セフィロスBが小さく頭を下げたのを見て、今度はひどく驚いた表情になる。
「メテオは私が何とかしよう。お前達にも、悪いことをした」
「あ、メテオは私が処理するよ。エアリス、白マテリア貸してー」
横からひょいと顔を出したが、固まったままのエアリスに向かって手を差し出す。
ザックスにも促されておそるおそる差し出されたそれを手に取ると、は自身の魔力を最大まで高めた。
「よーい……しょっ、と!!ホーリー発射ー!!」
ぐわりと空間が歪むような錯覚と共に、彼女の身体から真白い光が迸っていく。
それはまっすぐに空に向かっていき 。
「メテオが !!」
「消、えた……!?」
ものの見事に相殺されたメテオに、クラウドB達もセフィロスBも驚きを隠せない。
そんな中、平然と空を見上げていたクラウドが、しみじみと呟いた。
「、エアリスに仕込まれてたもんな……」
「……だな……」
しんみりとザックスも呟き、目の前の存在と似たようで違う気配におや?と首を傾げる。
「エアリスが呼んでる……?おーい、帰れそうだぞー」
「ちょ、ちょい待ち、今動けな 」
「俺が運ぶ」
へたりこんでいたをセフィロスが抱き上げ、4人が一ヶ所に集まった。
「待っ !」
「セフィロス、これ!!」
思わず手を伸ばしたセフィロスBに、が力を振りしぼってピアスを外して投げる。
彼が受け取ったことを確認して、は満面の笑みを浮かべた。
「また、来られたら来るから!忘れないで、君を愛してる!!」
それを代わりに置いて行くと、そう叫んだのが彼女達の姿を見た最後だった。
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