クリスマスイブだからといって、神羅の機能が停止するわけはない。
むしろ、エネルギーを大量に消費するこの日こそ、稼働率は跳ね上がるというものだ。


そして同様に、兵士達が休暇をもらえるとも限らず。




「ちっくしょおおおぉぉぉぉ!!訓練さえ……訓練さえなきゃ……!!」
「今日ぐらい休ませろ鬼教官!!」
「あああ、ルビィちゃん……!!」




ことごとく意中の相手に振られた一般兵達が、教官の消えた鍛錬場で男泣きに泣き崩れる。
古今東西、女というものはとてつもなくシビアなものらしい。


同じくお相手なしのクラウドは、しかし部屋にいるの顔を思い浮かべて表情をゆるめた。


   今年のクリスマスも、一緒に祝ってくれる人がいる。


今年は一人きりかと覚悟したこともあったから、誰かと一緒にいられることがこの上なく嬉しかった。
それに気づいた他の兵士が、これでもかとクラウドを小突く。


「何だよお前、約束ありかよ!」
「い、いや……単に、同じ部屋の人と祝うだけだけど……」
「何だよ、紛らわしいなあ」


言いたいだけ言ってさっさと帰ってしまった同僚を見送り、そんなにわかるほど顔がゆるんでいたかと慌てて引き締めた。


今日はごちそうを作って待っているよと、手を振って見送ってくれた同居人を思い浮かべる。
一体どこで身につけてきたのか、彼女の作る料理はいつもおいしかった。


叱って、褒めて、励まして。
母とも姉とも思えるような関係は、ひどく心地よかった。


ザックスは多分一緒にはいられないだろう、けれどがいるだけで充分だ。


鞄に忍ばせた彼女へのプレゼントをそっと確かめて、小さく笑う。
晩ご飯は何だろうとわくわくしながら部屋に戻ったクラウドは。




「あ、お帰りー」
「……は?」




あまりにも予想外の光景に、思わずかくりと顎を落とした。


「こらこらクラウド、顎はずれちゃうよ」


これまたかくりと顎を押し戻したを勢いよく振り仰ぎ、クラウドは何度も口を開閉する。


「なっ……どっ……!!」


驚きのあまり言葉にならない単語を繰り返す彼に、が朗らかに笑った。


「クリスマスパーティー!たまには楽しまなきゃね」
「早く入れ、部屋が冷えるぞ」


ツリーの頂上に星を乗せ終えたセフィロスが、オーナメントを数個抱えながら出てくる。
そのあまりのミスマッチさに、ショッキングすぎてヒューズが飛んだらしい。
こくこくとおもちゃのようにうなずいて入ったクラウドに、これまた部屋の飾りつけをしていたザックスが陽気に笑う。


「お帰り!準備、もうすぐ終わるぞ」
「ほら、クラウド」


セフィロスからオーナメントを渡され、不思議な気分になりながらツリーに近づく。
綺麗に飾りつけられたツリーは、けれどまだところどころにスペースがあって、わざわざ空けておいてくれたのかとくすぐったい気分になった。


最後の1個を飾り終わると、が次々に食事を運んでくる。
サラダ、シャンパン、温かいスープ、そして大きな七面鳥。


「うわ……」


まさか本物の七面鳥を見る日がくるとは思わなかった。


歓声を上げたクラウドに目を細めて、が誇らしげに胸を張る。


「大変だったんだよ、七面鳥を焼くの。初めてだから勝手がわからなくて、厨房の人に訊きに行っちゃった」
「すごい、……!」


食欲が旺盛すぎる彼らのこと、1匹丸ごとでも完食できるだろうと踏んで焼いてみた。
こんなに喜んでもらえば、それこそ作った甲斐があるというものだ。

この後用事があるザックスも、ひとまずは一緒に席に着く。


「食べすぎないでよ、この後デートなんでしょ」
「別腹別腹」
「デザート前にした女の子みたいなこと言わないの!」


わいわいやりながら夕飯を食べて、途中で謝りながら抜けたザックスを見送って。


「クラウド、ミッドガルに来てよかったと思う?」
「……うん」


食後のシャンパン(クラウドだけはノンアルコールシャンパン)を飲みながらに訊かれ、クラウドは少し考えてからうなずいた。


「すぐにソルジャーにはなれなかったけど、に会えたし。ザックスもいい奴だし、それにサーにもお会いできたから」


まっすぐに見上げてくる純粋な目の中に、やはりまだ尊敬と敬愛の色を読み取って、セフィロスはそっと苦笑する。
弟のようなものとに言われ、自分でもそう思うようになってきてはいたが、やはりこの少年の中ではまだ自分は「英雄」らしい。


それも仕方のないことかと思いながら、意外に柔らかい金髪をゆっくりとなでる。


「もう2、3年もすれば、お前ならソルジャーになれるだろう。心配するな」
「……はいっ!!」


途端に嬉しそうに顔を輝かせたクラウドに、とセフィロスは視線を交わし合ってそっと微笑んだ。




テレビを見たり最近の社内の噂(主にが仕入れてきたゴシップネタ)をしながらのんびりとしていたら、いつの間にか日付が変わっていたらしい。


「どうせだから泊まってきなよ。そんなに遠くじゃないけど、わざわざ帰るほどでもないでしょ?」


ザックスが頻繁に転がり込むから、布団ならあるのだとが笑う。


返事を待たずに寝室に用意を始める彼女を見て、セフィロスは思わず貞操の危機を感じないのだろうかと眉根を寄せた。
そんなセフィロスにクラウドが近づき、小さい声でこそりとささやく。


「あの……、ザックスの時もいつもああなんです。あんまり気にしないでください」


何故か申し訳なさそうな表情のクラウドをじっとみつめ、そういえば普段からこの2人は同じ部屋で寝ているのかと思い出した。
ならば、こういうことに無頓着になるのも、ある意味仕方がない。


後でラザードあたりに文句の一つでも言ってやろうとこっそり決心しながら、セフィロスも一つうなずいた。


当然のようにストックしてあるザックスの着替えを出されて、彼のこめかみに青筋が見えるのは、また別の話。