リョーマの意図は全くわからないけど、とりあえず越前南次郎氏が預かっている寺(の前のリョーマの家)に着いた。
踏ん張って拒む暇もなく、ずるずると玄関まで引きずられて、あげく何故か靴まで脱がされる(何でだ…!こんなに弱いキャラだったか、私!)
「母さん、この人記憶喪失っぽいんだけど。野宿しそうだったから持ってきた」
持ってきたかよ!物扱いかよ、私!
「まあ……!!駄目よ、女の子が野宿なんてしちゃ。ゆっくりでいいから、思い出すまでうちにいらっしゃいな」
それはそれは気の毒そうにおば様に見られて、思わず謝り倒したくなってしまった。
すいません、ほんとは記憶喪失なんかじゃないんです!
ちょっぴり異世界から来てしまった不思議少女なんです☆(☆やめれ)
それにしても、あのエロ親父がよくこんな美人をゲットできたなあ…。
世界の不思議だね。
まじまじと見つめていたら、おば様ににっこり微笑まれた。
美人だ!
いいなあいいなあ、こんな美人なおば様なら、私毎日でも見てたいよ。
「です。よろしくお願いします……」
本当にお世話かけますということで、深々とお辞儀。
おば様は「いいのよ、自分の家だと思ってくつろいでね」なんて言ってくださったけど、ありがたすぎて逆に申し訳なくなる。
リョーマに連れられて、今日から(急遽)私の部屋になるところに入った。
床、フローリングでよかった……(畳だとハウスダストとかでかぶれることがある)(我ながら弱すぎる肌だ)
「今日はとりあえず布団運ぶから、それで寝て。もうすぐ菜々子さんが帰ってくるから、その人の服でも借りてよ」
窓のカーテンを開けながらリョーマが言う。
「菜々子さんて?」
知ってるけどね、とりあえず。
訊かないで納得しちゃって、後で追及されると面倒だし……。
首を傾げてそう訊くと、リョーマは初めて気づいたような顔をした。
てか、気づいてなかったんだ……。
「俺の従姉。大学生」
「へぇ」
いいなあ、大学。
私も早く受かりたいヨー。
てか、薔薇色の大学生活なんて望んでないから、早く受験地獄から開放されたい……(ガクリ)
……って、今はJ3なんだっけ……。
若返るのは嬉しいけど、今より太ってたんだよね、この時期。
何か微妙。
「じゃあね。今布団持ってくるから」
リョーマがさっさと出て行った後、改めて自分の部屋(になる場所)の中を見回してみる。
元々何の部屋だったのか、箪笥とその横のおしゃれな台以外には何もなかった。
元の世界の自分の部屋とは間取りも大きさも違うし、やっぱり違和感。
でも、今日からここが、ひとまず私の部屋なんだ。
ちょっと寂しい気持ちで息を吐くと、私は床に座り込んだ。
椅子も何もなかったら、そりゃ床に座るしかないんだけどさ。
そうこうしてるうちにリョーマが布団を運び込んできて(意外に力持ちなんだ……!)ついでに菜々子さんが帰ってきたと言ってくれたので、挨拶するために会いに行く。
「あら、あなたがさん?初めまして、リョーマさんの従姉の菜々子です」
「は……初めまして、です。これからしばらくお世話になります」
うわあ美人さん美人さんサラサラストレートが素敵ですお姉さま!(落ち着け)
「よろしくね。服は何がいい?好きなものを何でも使ってね」
そう言ってにっこり笑う菜々子さん。
ああ、笑顔がまぶしいです……!
「は……はい……」
どれがいい?と次々差し出される服は、何故だか全て超女の子っぽいものばかり。
何故でしょう(滝汗)私、そんなに似合いそうですか……?
個人的にはズボンばっかはいてたんですけど……(だって冬は寒いし夏は暑いけどハウスダストとかビニールとかいろんなものでかぶれるんだもん)(肌弱いんだヨ!)
そんな私に、ひーらひらのスカートやレースつきのブラウスを着ろと?
痛いです、自分。
「ねえ、リョーマさんはどれがいいと思う?」
そこでそいつに振らんで下さい。
お願いします。
「それでいいんじゃない?」
「え」
興味なさげにリョーマが指したのは、ピンク色のふわっとした布のついた七分丈に、裾にレース編みがついた黒いスカートの組み合わせ。
私には死んでも似合いそうにない服だ。
「あら、いいじゃない!じゃあさん、これに着替えてね」
ああ、菜々子さんたらうっきうき……!
そこに私の意志はないんですね……!!
泣く泣く着替えようとし……。
「お前は出てけっっ!!」
当然のようにそこに居座っていたリョーマを蹴って追い出し、改めましてレッツ着替え。
「よく似合うわ!すごく可愛い!!」
……似ー合ーわーねえええ……。
いまだかつて、この私がこんなラブリィチャーミー☆な服を着たことがあったか!? いや、ない!(反語)
なのに……なのになんで……。
「あら、可愛いわね」
「ふうん……いいんじゃない?」
「お!誰だ、この可愛い嬢ちゃんは?」
誰も彼も可愛いなんて言うんだ!?(しかも何か一人増えてるよ!)
わからない。わからないよ。
「は……初めまして、です。あの……?」
とりあえず、初対面だよね?
「ちゃんか?俺はえち」
「俺の親父」
妙に格好つけてエロ親父が自己紹介しようとしたのをリョーマが遮る(ナイスリョーマ!)
私としてもウザかったので(酷)さらりと無視した。
「ああ、リョーマのおじ様ですか。訳あって、これからしばらくお世話になります。よろしくお願いします」
「え!それはそれは……」
鼻の下伸びてるよー、おじさん。
「ちなみにサン、俺の隣だから」
「え?そうだったの?」
ふうん、初耳。
あーあー、妙なことしたらすぐにわかるんだからな的なオーラが出てるよ、リョーマったら。
「明日にでも必要なものを揃えに行かなくちゃ。菜々子さん、付き合ってくれる?」
「はい、喜んで。ちょうど明日は1コマも授業がありませんし」
「俺は 」
「南次郎はお寺を預かってなきゃ」
はいと手をあげたおじさんは、おば様のにっこりとした極上の笑顔であっさりと切り捨てられた。
……哀れなり。
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