侑士に愚痴ってちょっとすっきりしたけど、やっぱりショックは抜けきらなかったらしい。
結局お夕飯までに間に合わなくなってリョーマに怒られるし、おば様達にも心配されたけど、そんな事はもうどうでもよかった。
一応用意してくれてた食事を食べて、言い訳もそこそこにさっさとベッドに入ると、どうやら風邪にでもなったんじゃないかと思われたらしい。
一晩中菜々子さんがつきっきりで心配してくれた。
大丈夫ですから、明日も1限から大学あるんですからって言っても菜々子さんは頑として譲らなくて、結局私が眠るまで傍にいてくれた。
翌朝もみんなからいっぱいメールが来たけど無視して(ごめんみんな!)、気分転換に街に繰り出す。
昼間は何度か補導員につかまったけど、「高校行ってないフリーターです」って堂々と言ったら(半分嘘だけど)(ちゃんと女子高生してました、私)全員あっさり解放してくれた。
昔からよく大人っぽいって言われてたもんね。
老け顔とかもよく言われたけどさ……!
今のこの、いかにも女の子です!みたいな服は正直どうかと思うけど(おば様達がそういうのしか買ってくれなかった……)
お昼に1回家に帰って髪を切りたいと遠慮がちに申し出たら、おば様は喜んでお店の予約をしてくれた。
菜々子さんの行きつけらしいけど……青山かよ!
確かにすごくセンスいいしカットもうまかったけど!(何をどうやったのか即日カットの予約が取れた)
J3の頃の髪型とおさらばして、私はこの間までの髪型(耳の辺りだけちょっと長いボブ)(友達に「慊人カット!」とか言われてた)(違うって!)にした。
眉もきちんと整えて、後は顔の丸みがなくなれば(ちょっと太ってたのだ、J3の私)(そんなに気になるほどじゃなかったけど)完全にS3の私になる。
ちょっとすっきりして再び街を歩いていたら、曲がり角でベタに人とぶつかった。
よろける私。
慌てて支えてくれる美形のお兄さん。
見つめあう2人。
そして恋が……。
なんて訳はなくて。
「すいません!」
慌てたように謝ってきたのは、何の因果かまたもやテニプリ関係者だった。
ちょっと固めの茶色の髪、おでこの傷、ルドルフの制服。
おまけに、後ろにはアヒルと赤ハチマキ。
……裕太だ!
「いえ、こっちこそよそ見してて……」
うわあうわあ不二家の常識人ユータだー!!
可愛いなあ可愛いなあ弟にほしいなあ。
ああ、でもやっぱり目元とか輪郭とかフジコと似てるんだ。
いくら嫌でも、やっぱり兄弟だもんね。
「……あの、何か?」
おっと!凝視しちゃってたみたいだネ!
裕太が居心地悪そうにしてるよ……(ごめん!)
「あ、ごめんなさい。知り合いに似てる気がして」
「知り合い?」
「ええ。不二周助っていうんですけど……ご存知ありませんか?」
さてどう出るかと思ってたら、案の定機嫌悪くなった。
あからさまにむっとするなよー、お兄ちゃん可哀相だゾ!(何)
「 知らねえな」
「あ……やっぱり私の勘違いですよね。すいません」
やっぱり「兄貴」嫌いなんだ。
わかってても何か寂しいなあ……。
しょんぼりして謝ると、何故かアヒルが援護射撃をしてくれた。
「裕太、嘘はいけないだーね!不二はお前の兄貴だろ?」
ナイスアヒル!
「お兄さん?やっぱり血縁関係あったんだ!ええと、裕太君?だよね。お兄さんにはいつも世話をかけられつつもお世話になってます」
ぺこりとお辞儀をするとよく意味が把握できなかったらしく、「え?」と怪訝な顔をされた。
「持ちつ持たれつ。青学生じゃないのにメール1本で呼び出されて、さらにマネージャーもどきのお手伝いをさせられる代わりに、時々遊んでもらってるの。あ、ちなみに私もお兄さんと同い年ね☆」
中3とは言わない。
学校行ってないし。
「あー……それはどうも、兄がお世話になってます」
微妙な顔して頭を下げる裕太に、私も笑ってかぶりを振る。
「いえいえ、あんなお兄さんだと君も大変でしょ」
いろいろと……ね。
思わず遠い目になってしまった私をわかってくれたのは、やっぱり弟の裕太だけだった。
フジコったら黒魔術は使わないけど、代わりにめっちゃ怖いんだヨ!
黒い笑顔でくすり……とかやられてみなよ、マジで泣きそうだから!(涙目)
あの怖さは言葉では表現できません。
や、ほんとに。
「それにしても、君もテニスやるんだね」
とりあえず話題を変えようとして、裕太のしょってるテニスバッグを見る。
「はい」
「すごいねえ、私だったらあれだけうまい兄弟がやってたら、絶対コンプレックスでやらないよ。運動神経切れてるしねー……。裕太君はテニス好きなんだね」
そう。それだけで裕太はすごい。
世の中にはすごい兄姉に憧れて同じ世界に入っても、できない自分と騒がれる兄姉に対するコンプレックスと世間からの比較の目に耐えられず、やめていく人は腐るほどいる。
それなのに、この人はそうはしなかった。
あれ?裕太の顔が赤い。
照れてる?
「裕太君?」
「……え、あ、はい!!」
「何慌ててんのさ。 ね、今度、裕太君のテニス見てみたいな。全然わかんないけどさ」
えへへと笑って、ぽんぽんと裕太の腕を叩いて、じゃあねと手を振る。
「あの 名前!」
裕太の慌てた声で、まだ名前を言ってなかったことに気づいた。
いけないいけない、忘れるところだったよ。
このままじゃ怪しいお姉さんAだネ!
「。漢字にはこだわりがあります!よろしくねー、ばいばーい!!」
ひらひらと手を振って、家への道をたどる。
ちょっと鬱だった気分は、裕太のおかげで吹っ飛んでいた。
裕太に感謝!
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