へれへれへれへれ、と携帯が鳴って、すぐに侑士だとわかった(こんな気の抜ける着信音は、あいつしかいない)
「はいはーい」
『おー、自分今から出れるか?』
今からって……もうすぐ6時だよ。
「無理。これからお夕飯の支度手伝って食事して勉強するから」
『そんな事言わんと、何とか来てや』
「無理だってばー、一体何なの?」
いつになく強引な侑士に、ちょっぴり困惑する。
いや、べったま達に大してはいつもこんななのかもしれないけど、私に対しては初めてだ。
『今日、何日や?』
「5月5日?」
『何の日か知っとる?』
「こどもの日でしょ」
日本人ならそれぐらい常識。
『ちゃうちゃう、ジローの誕生日や』
「…………へ?」
あー……そういえばそうだったような。
ごめんジロちゃん、すっかり忘れてた!
『これから誕生日パーティーするから、にも来てほしいんや』
「今から!?」
プレゼントも何も持ってないってば!
何でこんな急に連絡をよこすわけ!?
こちらが馬鹿馬鹿馬鹿と内心で思いっきりののしっているとは知らず、侑士はのんびりと肯定した。
『せや。初めて会った公園で6時半、待っとるでー』
「ちょ……ゆーし!」
……切りやがった……!
「あと30分……?」
プレゼントなんて買えるわけないじゃん!(オマイガッ!)
どうしようどうしようどうしよう。
「と……とととととりあえず、おばさま!」
おばさまに報告しなければ。
ばたばたと台所に入って、機嫌よく野菜を切っているおばさまに声をかける。
「どうしたの?」
「この間友達になった人が、今日誕生日らしいんです。それで、これからパーティーに来てくれって言われて……その……」
何時に帰りますとはっきり言えなくて口ごもっていると、おばさまはにっこり笑ってうなずいてくれた。
「行ってらっしゃいな。帰りはちゃんと連絡をちょうだいね」
「はい!」
ああ、おばさまってやっぱり素敵!
ぺこりと頭を下げて、慌てて部屋に戻る。
ちょっと余所行きの服に着替えてネックレスつけて、どうせ落ちるけどちょっぴりグロス。それだけで15分かかった。
公園まで、5分はかかる。
「行ってきます!」
バッグを引っつかんで家を飛び出して、待ち合わせ場所の公園に向かう。
ああ、髪が乱れちゃう!
「よお、来たなー」
「この馬鹿侑士!」
笑って手をあげた侑士の腹にパンチをくらわせてやった。
おお、結構いい音。
「何すんねん!」
「ジロちゃんの誕生日なら、せめて昨日言ってよ!プレゼント何も用意できなかったじゃない!」
可愛い可愛いジロちゃんには、絶対プレゼントあげたかったのに……!!
「ほんますまんかった。せやかてな、俺らも今日の部活中に言われたんやで」
「え?どし もしかしなくてもべったま?」
しまった、すっげ嫌そうな顔になった。
まあいいか、侑士だし。
吹き出してるし。
「せや、『べったま』や……ぷぷっ」
「くそっ、あの女帝め!好き勝手しおってからに!」
歯噛みしてたら、さらに侑士が爆笑した(何故だ?)
「ど……どこの人間やねん、自分……」
「生まれは埼玉、育ちは横浜。精神年齢17歳の花の女子高生デス☆」
よろしくv(キャv)なんてやってみた。キモイだけだった……(涙)
「可愛いなあ、自分ほんまに年上かいな」
でも、侑士のお気には召したようで、ぐりぐりと頭をなでられた。
ちょっと(いやかなり)恥ずかしい。
「年上だよお。それより侑士、早くジロちゃんのとこに行こ」
手を押しのけて髪を整えながら口を尖らせると(これもキモかった……)、侑士がはたと私を見た。
「ああ、まだ言っとらんかったか。行くんは俺の家や」
「侑士の? ああ、一人暮らしなんだ」
「まあな」
家族と一緒のジロちゃんよりも、侑士んちの方が融通きくもんね。
なるほどとうなずいていたら、急に侑士に声をかけられた。
「、ケーキ作れるか?」
「……へ?」
一瞬反応が遅れたけど、すぐに質問の意味を理解してうなずく。
「ああ、ケーキ?シフォンとかココアケーキとか、そういう簡単なものならできるよ」
「そんなら、シフォンでええから作ってくれへんか?ほんで、それをプレゼントっちゅうことにすればええやん」
あれ?まだケーキ買ってなかったんだ。誕生日なら真っ先に買いそうなのになあ
。
「ナイス侑士☆」
その後タクシーで侑士んちに行って(この金持ちめ!)大急ぎでシフォンを作る。
オーブンに入れたところで冷蔵庫に生クリームがないことに気付いて、侑士にスーパーの場所を訊くと、笑いながら私の頭をなでてきた。
「俺が買うてきたるわ。はオーブン見とき」
「あ、うん。ありがと」
侑士を送り出して、また台所に戻る。
ただねー……シフォンって完全に冷めるまで型から抜けないんだよね。
ジロちゃん、いつくるんだろ?
すぐに来ちゃったら食べられないよ。
そんなことを思いながら他の料理を作っていたら、ぴんぽーんとチャイムが鳴った。
「どうぞー」
どうせレギュラー達だろうと思って、ろくに画面を見もせずにマンションの入り口のロックを解除すると、しばらくしてインターホンが鳴る。
「はーい」
がちゃっと開けて、驚いた。
「ジロちゃん以外、みんなで来たの!? ヒヨ君まで!」
団体行動絶対嫌いそうなのに!!
でも何故か、向こうもみんなでこっちに驚いてる。
「え……、さん?」
ちょたが先頭で固まってるヨー。何だよ、何だってんだよー。
「うん、そうだよ?」
何でそんなにびっくりするかな、もう。
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