跡部さんが部活中に、急にジローさんの誕生日パーティーをやるとか言い出して(もちろんジローさんには秘密で)、部活帰りに慌ててプレゼントを買った。
夕飯も食べないで、着替えて駅前集合。
問答無用で会場に決まった忍足さんの家に行ったら、女の人の声がしてエントランスのロックが開いた。
忍足さんの家には、他に家族はいないはず。
ならば、誰?
どうせ先輩の誰かが呼んだクラスの人だろうと思ってたらさんで。
しかも、いつもよりも可愛い服にちょっぴり化粧をして、白いフリル付きのエプロンまでしていて。
一瞬誰だかわからないほど、綺麗だった。
っていうか、その格好にそのエプロンは反則だろ!?
ほら、跡部さんでさえ見とれてる。
「え……、さん……?」
何だか信じられなくて思わず呟くと、さんは不思議そうに首を傾げた。
「うん、そうだよ?」
そうしてしばらく俺達を見た後、少し身体を引いて道を開ける。
「私が言うのもなんだけど、まあ上がってよ。今ね、侑士買い物行ってていないんだ」
確かにここに突っ立っているわけにもいかないので、ぞろぞろと家に上がらせてもらう。
最後に樺地が入るまでドアを押さえていたさんは、俺たちが持ってる荷物を見て驚きの声をあげた。
「すごい荷物だね!」
そりゃそうだ、全員(あの跡部さんですら)ジュースやらお菓子やらがいっぱい詰まった袋を下げてるんだから。
自分でも、よくもまあこんなに買ったものだと思う。
「冷やした方がいいの、ある?冷蔵庫に入れちゃうから、こっちちょうだい」
さんはそう言って手を出したけど、とても1人で運べる量じゃない。
何となく誰もが気後れしていたら、さんが何気なく跡部さんの袋を覗き込んで大きな声をあげた。
「ほれ、景君の貸して って、あんた何で酒なんて買ってきてんのよ!?」
ああ、やっぱりこの人酒買ってたんだ……。
「未成年だよ?あんた達。店員も何で中坊に売るかなあ!」
んもう、と怒りながらもしっかりとそれを冷蔵庫に持って行くあたり、何とも言えない。
「俺も行きますよ。さん1人じゃ持ちきれないっスから」
「そう?ありがと、ちょた君」
申し出たら、さんは嬉しそうに笑った。
うわあ、綺麗だなあ。
「景君達はどうせ、前にも来たことあるんでしょ?適当にくつろいでてよ」
さんが言うまでもなく、先輩達はもうすでにくつろいでいた。
俺も整理を手伝ってから、日吉の横で2人して何となく居心地の悪い思いをしていると(俺達はここに来るのは初めてだ)ドアが開く音がして、忍足さんが帰って来た。
「何や、もう来てたんか。 、これでええか?」
「お帰り、侑士。 うん、これで十分。ありがとね」
顔を寄せて話している忍足さんとさんは、まるで 。
「新婚かよ」
そう、宍戸さんがぼそりと言った通り。
仲睦まじい新婚夫婦みたいだ。
「ジロちゃんはいつ来るの?」
「8時ごろに来いっちゅーといたからなあ。それぐらいに来るんとちゃうか?」
「うーん、あと1時間か……」
難しい顔で少し考えて、さんはケーキの型を持ち上げた。
「一番奥の部屋、立ち入り禁止ね」
「何でだよ、あぁん?」
「寒いから」
跡部さんに一言言い置いて、さんはすたすたと行ってしまった。
……寒い?
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