杏ちゃんと初めて会ったあの日から、何回か2人で遊びに行った。
遊ぶって言っても、映画観てお茶したりプリクラ撮ったりボウリング行ったりしただけだけど。


で。



本日、私は、何と不動峰の校門前に来ております!!(ドンドンパフパフー)(古)



いやあ、生徒の目が痛い痛い。
「何なのこの人」みたいな目でみられとります。
さすがにこれを長時間はつらい。


杏ちゃあん……早く来てくれよう……。



ちゃん!?」



なんて考えてたら、本当に杏ちゃんが出てきた(愛の力!)


「うふふふ、来ちゃった」


ラケットを背負って友達と一緒に出てきた杏ちゃんに、にっこり笑って手を振る。
うーん……アポなしで来てみたけど、お邪魔だったかな?


「もしよかったら杏ちゃんちに行きたいなあと思って来たんだけど……やっぱ駄目か」


連絡してから来るべきだったか……。

しょんぼりと帰ろうとしたら、くいっと腕を引かれる感覚。


……ん?


くるりと振り向けば、ちょっぴり焦った表情の杏ちゃんが。


「待って!家、寄ってって?」
「いいよいいよ、せっかくお友達と一緒なんだもん。私がいても邪魔でしょ?無理しなくていいよ、また来るからさ」


こっちも焦ってぱたぱたと手を動かすけど、杏ちゃんはそれで引いてくれない。


「いいのよ、どうせすぐそこまでしか一緒じゃないんだから」
「杏ちゃん、それ彼女に失礼……」


誘ってくれるのは嬉しいけどさ……。
友達は大事にしようよ、うん。


「あ、あたしなら全然オッケーですよ。美人には甘いんで、あたし」


はい、と手を挙げて杏ちゃんの友達。



……何か。



「なかなかおもしろいですねえ、お嬢さん」
「よく言われます」
「でも、おだてても何も出ませんよ」
「構いませんよ」


眼鏡をかけた、頭の良さそうな切れ長の目の女の子。
彼女自身もなかなかの美人なんだけど、この世界の美人は美醜感覚がどこか狂ってるんだろうか。

きっとそうだ、そうに違いない。


「あたし、中原美里っていいます。杏の友達です」
です。ひょんなことから杏ちゃんの友達になりました。一応今年で15になります」


美里さんと握手を交わして、そのまま何となく流れで3人で道を歩く。


さんはどちらの学校に?」
「あ   美里」
「通ってないんですよ」


杏ちゃんが何かを言いかけたけど、それよりも先に口を開いた。
記憶があるとかないとか、そういうことで気を遣ってほしくない。

私はここでは異質だけど、悲劇のヒロインみたいに可哀相がってもらいたいとは思わないから。


「記憶をどこかにすっぽり落としてきたもので☆」
「…………マジですか?」
「マジですよ」


にっこりと笑って返す。
美里さんは相当びっくりしたみたいで、目を瞬かせて頭をがりがりとかいた。


「あー……その、ご愁傷様ですっていうのもおかしいですよね」
「うーん、この場合は縁者じゃなくて本人に向かって言う言葉だから、その用法は正しくないですね」
「いや、そういう問題でもないような」


割とあっさり乗ってくれた美里にほっとする。
うん、こういう反応を待ってました!

そうこうしているうちに別れ道に来たらしく、美里さんがすちゃりと手をあげた。


「あ。それじゃ、私はここで」
「はい。また、機会があったら」


それからは、杏ちゃんと2人きり。


「おもしろい人だね」
「ええ、ちょっと変わってるの。でも、いい子でしょ?」
「うん」


私はああいう人、好きだな。

そう呟くと、杏ちゃんは嬉しそうに笑った(可愛い!)(桃なんかにゃもったいない!)










橘家はごく普通の一軒家。


「ただいまー」
「お邪魔します」
「お帰り。お客さんか?」


はうあっ!!
そ、その声はもしや……!!


「ええ、ちゃんよ。前に話したでしょ?」



橘さーん!!(絶叫)



橘さんがリビングから出てきたよ!
私服だヨ!超レアだヨ!!(キャー!!)


「初めまして、です」


表面上は冷静にお辞儀をしながら、内心ではビッタンビッタンしまくりですとも。

外面の良さには定評があるからね、私!
「どこのお嬢さんかと思った」とか言われるからね!


「ね、杏ちゃんのお兄さん?」


小さな声で杏ちゃんに訊いたら、こくりとうなずきが返ってくる。
ここぞとばかりに橘さんをじ   っと見て、満足してうなずいた。


「うん。やっぱり、思った通りにかっこいい」
「な   っ!!」


あ、橘さんが真っ赤になった。
純情なんだねえ。


「目が違うよ。いい目してる。いいお兄さんだね、杏ちゃん」
「ありがとう。何だか照れちゃうわね」


橘さんはやっぱり意志の強そうな目をしていて、不動峰のみんながついていくのもわかる。
部長とはまた違うけど、この人もまたカリスマってものを持っているんだろうなあと。

何1の疑問もなく、そう思える。


「兄の桔平です。いつも杏がお世話になっています」
「いえ、恥ずかしながらこの辺りの地理には疎いもので……私の方が杏ちゃんにお世話になりっぱなしですよ」


とりあえず、玄関先でもう1回頭を下げ合う。


ちゃん、兄さんと同い年よ」


あ、杏ちゃん、そないなこと言わんでも……(誰だよ)


   え?」
「あ、はい。今年で15歳になります」


嘘だろって顔をする橘さんにうなずいてみせる。
そりゃ、あんた達は半端ない老け顔でしょうとも……。


それより、橘さんのことは何て呼ぼうかなあ。
「お兄さん」もおかしいし、「橘さん」だと杏ちゃんも当てはまっちゃうから……やっぱ「桔平さん」?


ちょっと私的には違和感があるけど、とりあえずこれでいこう。


「桔平さんって、テニスやってらっしゃるんですよね?」
「え?あ   ああ」
「杏ちゃんがあれだけうまいってことは、やっぱり桔平さんもすっっっごくうまいんですよね?」
「もちろんよ!」


打てば響くように杏ちゃんが横からうなずいた。
さすが!


「いいですねえ……すごいなあ……」


宍戸を相手に「そろそろ前出てもいいよな?」って!
かっこいいよ橘さん!すごいよ橘さん!(立海の切原に負けたけどネ!)(でもいいの、リョーマが仇とるから!)


そんなことを思いつつ橘さんをじーっと見てたら、照れ笑いと苦笑の中間みたいな顔をした橘さんに、くしゃりと頭をなでられた。



……うぬ?