「あ」
そういえば。
と、カレンダーを見て唐突に気がついた。
……明日ってば、薫君の誕生日だわさ。(どこの言葉だよ)
「どうしよう……」
お小遣いはためてるから(だって使い道ないんだもん)お金の心配はないけど、何あげたらいいんだろ?
ファンブックに載ってたデータベースも、ぶっちゃけそんなに覚えてるわけじゃないし。
薫君の好みって全然わからないなあ……。
でもまあ、本来ならこうやってあれこれ悩んで相手を知ってくのが正しいプロセスだよね。
漫画を読んでるわけじゃあるまいし、みんなちゃんと生きてるんだから。
今度からもうちょっと、みんなのことを知ってくように頑張ろう!
んでもって、忘れないように気をつけよう!!(最悪)
あ、その前に、やっぱりジロちゃんの時みたいにパーティーやりたいよね。
クラッカー鳴らしたり、お料理食べたりしてさ。
でも、侑士んちみたいに自由勝手に使える広い場所はないしなあ。
さて、どうしたものか。
「どしたにゃ?何か考えこんでるけど」
目の前で手をひらひらとされて気がつくと、英二が私の顔を覗きこんでいた。
「んー、ほら、明日って薫君の誕生日でしょ?」
「あ、そういえば。よく知ってたね」
「フェンスに群がってるお嬢さん方が言ってた」
そういうことにしておこう。
「あー……あの子達、熱いからねえ……」
待て。
そのしみじみとした言い方はもしや。
「 英二君も?」
「去年はすごかったよ……」
ああ、丸まった背中が寂しい……。
そうだよね、レギュラーたるものそれは当然のオプションみたいなものだもんね!
普段こんなに騒がれてるんだから、あの子達が誕生日なんてイベントを逃すはずないよね……!
疲れきった様子で呟いた英二の頭をよしよしとなでてあげながら、それじゃあ明日の薫君は疲労困憊しているか機嫌最悪のどっちかだなあとぼんやり思う。
案外、両方いっぺんになってそうな気もするけど。
「じゃあ、明日パーティーやりたいなって思ってたけど、やめた方がいいよね」
「え!?」
え?何でそんなに驚くの!?
「やろうよパーティー!いいじゃん、楽しそうじゃん!」
「でも、薫君が疲れてるんなら」
「仲間にやってもらうのは別!俺も去年やってもらって、すごく嬉しかったもん!」
英二が頭の後ろで手を組んで、にゃははと無邪気に笑う。
王様ゲームとかしたんだよーと言われて、どこも同じかよ!と心の中で突っ込んで(ジロちゃんの誕生日でもやった)ふと浮かんだ疑問をぶつけた。
「去年は、桃ちゃんも薫君も英二君のパーティーには出なかったの?」
「うんにゃ、俺の誕生日は11月だからねー。もう桃達もレギュラーになってたよん」
あ、そっか。
英二の誕生日は11月末だっけ?
それなら1年も充分レギュラーになってる時期か。
「なるほどねー。じゃあ、特に改まって連絡しなくても平気だね」
「おチビ以外はね」
確かにリョーマにだけは一から説明しなくちゃいけないか。
「あ、そっか。リョーマには私から言っとくね。あと、ケーキも作れたら作るよ」
海堂家の雰囲気からすると、あの優しそうなお母さんが特大のホールケーキを作ってる可能性は大きいけど。
部活が終わってからだし、場合によっては作らない方がいいかもしれないなあ。
「マジで!?ケーキ作ってくれるの!?」
万歳っっ!!と叫びそうになった英二の口を慌ててふさぐ。
本人に聞かれちゃうかもしれないでしょ!(気をつけてよ!)
慌てて窓の外を見て、近くに薫君がいないかどうかを確認する。
「英二君、しー!」
「ご……ごめんにゃ」
しょぼんとなった英二の頭をぽむと叩いてなぐさめて、誰に何を持ってくるように頼むかとかを相談していたら、いつの間にか部活が始まっていた。
「英二、練習始まってるぞ!」
マザーが呼びにきて初めてお互いそのことに気づき、英二が真っ青になる。
「げっ!!ちゃん、じゃあね!」
脱兎のごとく駆け出していった英二にひらひらと手を振って、こりゃグラウンド10周はくるなーなんてのんびりと思っていると、遠くから「ギニャー!!」なんていう断末魔のような悲鳴が聞こえてきた。
強く生きろ、英二!
ついでにいうと猫語はやめた方がいいぞ、英二!
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