「Happy birthday!」
言うと同時に、思いっきりクラッカーを鳴らす。
8人分の音がほぼ同時に重なって、結構すごい……。
ちょっぴりおかしくなっている耳を軽くマッサージして、気持ちだけでもいつもの状態に戻す。
こちらは驚きすぎて固まっている薫君の肩を叩くと、勢いよく振り向いて口をぱくぱくさせた。
うーん、ナイスな反応だ。
散々準備した甲斐はあったね!
「お誕生日おめでとう。んでもって、今日一日お疲れ様」
1日中プレゼント攻撃の嵐にあっていたねぎらいをすると、薫君は少しげんなりした顔でうなずいた。
……うん、あれは傍から見てても大変だなあって思ったもん。
部活中だけであれなら、多分日中はもっと酷かったんだろう。
「まあ、ゆっくりしてってよ。おじさまは追っ払ってあるし、おばさまも菜々子さんもまだ帰ってこないから」
そのかわり、料理はしょぼいけどね。
本当に、私が作れる料理なんてたかが知れている。
そんなに手の込んだものなんて無理だし、一人暮らしなんてしようものなら餓死しそうな勢いだ。
それでも、みんな喜んで食べてくれるのが嬉しい。
「ちゃん、これうまい!」
「どーもー」
「これもうまいっスね!」
「ありがと」
ここらへんはまあ、雑食だからいいとしても。
「うまいな」
「うん、おいしい」
部長とフジコにまで褒められちゃったヨ!(あ り え な い !)
絶対舌肥えてそうなのに、この2人!
あんまりうかれすぎて、思わず失言。
「ケーキは家で食べるだろうから、今日は作らないでおいたよ」
「今日は?」
「 あ」
し ま っ た !
リョーマの眉がぴくりと動いた。
コンチクショウ、なんでこんな時に限ってスルーしてくれないのさ!!
「どういうこと?今日はってことは、前に作ったことあるんだよね?」
「いや、それは言葉のあやであっ」
「作ったんでしょ?」
「いや、だから」
「作 っ た ん で し ょ ?」
「あの」
「誰に」
断定かよ!と突っ込みたくても突っ込めない。
てか近寄んな!詰め寄んな!!
こうなったら逃げ 。
「どこに行くのかな?」
魔王が退路を断ってます(泣きたい……)
「いやあの、落ちつこうよ」
「俺は落ちついてるよ」
目がすわってんだよ!(怖い!)
「で。誰?」
目の前にはリョーマ、後ろにはフジコ。
前虎後狼ってやつだね☆(根本的に間違っている)
「 っ、友達!この間泊まってきた時の!」
やけっぱちでそう叫んだら、部屋の温度が一気に下がった。
「泊まった……?」
し ま っ た !!
低い低い声で呟いたのは、一体誰だったか。
部長とリョーマ以外には、侑士んちに泊まったこと(いや、2人にも侑士んちとは言ってないけど)言ってなかったヨ!
くそっ、墓穴掘った!(オマイガッ!)
「泊まったとはどういうことだ?」
「どこに泊まったの?」
「何で黙ってたのさ、ちゃん!」
ああ、やっぱり詰め寄られるのね……。
だから言いたくなかったんだよ。
可愛い顔が間近で拝めるのはお姉さんすっごく嬉しいんだけど(変態)、ちょっといやかなり怖いんだよってば!
「いちいち言うほどのことじゃないでしょ!迷子になんてならないもん!」
『そういう問題じゃない!!』
アウチ!ユニゾンで怒られた!
「だ……だって、行動をいちいち報告して、全部把握されるのはやだよ!」
ばれると色々問題がある人々と会っている身としては、がちがちに拘束されるのはちょっと、いやかなり困る。
「私だっていろんな友達いるもん!みんないい人だってわかってるし 私、そんなに信用ない?」
最終手段でしょんぼりしてみせたら、案の定単純組(英二&桃)が真っ先に慌てふためいた。
「あ、いや、そういう訳じゃないんだよ!?」
「そ そそそそうっスよ!」
「だって、みんなして……」
心配してくれているのはわかるけれど、ここまでされると信用されていないんじゃないかと不安になるのも確か。
窮屈なのもあるけれど、もっと信用してほしい。
「それだけさんが心配なんだよ」
マザーがぽんぽんと頭をなでてくれて、顔を上げると苦笑した瞳と目が合った。
「どこに行ってもいいが、どこに行くのかぐらいは誰かに教えてくれ」
乾にまでそう言われ、仕方なくうなずく。
「わかった……」
くそう、年下に負けた!(どうせ負けっぱなし)
不承不承うなずくと、満足そうなフジコに頭をなでられた。
「じゃあ、ケーキ作ってくれるよね」
「ちょっと待て、なんでそうなるのさ」
「海堂も食べたいよね?」
無視かよ!!
「……っス」
ああ、もう!
そんな恥ずかしそうな顔で小さくうなずいたりしないでよ!
もう作るしかなくなっちゃうじゃない!!(頭なでたい!)
「……マーブルケーキしか作らないよ!!」
今現在型が2つあるのは、マーブルケーキの型だけ。
いや、別にこれでチョコケーキもプレーンも焼けるけれど、やっぱり作り慣れている種類の方が安心して作れる。
大体、こいつら相手に1つで足りるなんて思っちゃいませんからね!
「全然オッケーにゃ!」
「英二のケーキじゃないだろ」
「う……で、でも、楽しみだもん!」
やっほうと万歳をした英二がタカさんに突っ込まれて、ぐぐっと詰まっている。
……馬鹿な猫は可愛いねえ☆
「はいはい。1時間以内にできるから、ちょっと待ってなさい」
ちょっぴり呆れ気味にそう言うと、はーいといいお返事。
「手伝おうか?」
「んー、平気。ありがと、タカさん」
ちゃっちゃと適当に作ったケーキは、餓えた獣達によって冷めきらないうちに食いつくされた。
……うん、まあいいけどね。
それだけ好評だったってことなんだろうし。
でもね、本当は冷めてから食べるものなんだよ……(哀)
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