っくしっ!」


あー……誰かが噂してら。


「何、風邪?」


くしゃみを聞いて、前を歩いていたリョーマが振り返った。
心配してくれるのは嬉しいけど、風邪って感じじゃないんだよなあ。


「ううん、平気。部活行こ」


安心させるために笑ってリョーマの手を握ったら、何故かリョーマが驚いたように目を見開いた。
そのまま逆にぎゅっと強く握られる。




   帰るよ」
「え?」




くるりと180°回転。

おいおい、もうすぐ地区予選だろ!?
練習を休めるはずないじゃない!


「ちょ、何馬鹿言ってんの!」
「馬鹿はそっちだろ!」


思いがけず怒鳴り返されて、意外にも強い力で半ば強引に引きずられていく。
有無を言わせず部屋に連れていかれて、ベッドに押し込まれたところで体温計を突きつけられた。


……いつの間に、どこから持ってきたんだよ……。


「測って」
「え、熱なんかないってば」
「いいから!」


何だってんだよ、まったく……。
内心でぶつくさ言いながら体温計を脇に挟んで、出てきた数字に目を疑った。




   え?」




何だこの数字は。


「寝てなよ」


壊れているんじゃないかと何度も確認していると、べしっと額に冷たいものが押しつけられる。
何かと思って触ってみたら、冷えピタだった。


「リョーマは部活行きなよ」
「39℃以上熱がある奴、一人で放っとけないでしょ」


いいから行けと手を振っても、リョーマはそう言って携帯をかけだした。


「あ、桃先輩。ちーっス。今日はが熱出したんで、部活休みます。   うち、今日は誰もいないんで。……っス」
「ちょ、リョーマ!」


一人でも平気だってば!


慌ててそう言っても、リョーマはそれをさらりと無視。
ぷちっと電話を切って、起き上がりかけていた私の肩をぐいと押してベッドに戻す。


「いいから寝てな。今、水持ってくるから」


ちゃんとパジャマに着替えときなよ。


言いたいことだけ言ってさっさと出て行ってしまったリョーマを見送って、慌ててパジャマを手繰り寄せる。
あの子はああ言ったら、本当に着替え中だろうが何だろうが構わず入ってくるんだヨ!(すでに何回か経験済)

焦りで滑る手をなだめながらどうにかこうにか着替えたところで、おざなりにノックをしたリョーマが氷水を持って入ってきた。


「はい、これ」


手渡されたそれを飲むと、喉に冷たさが心地よくて、自分でも思っていたより酷かったのだと気づく。


「ちゃんと寝なよ。ここにいるから」
「ん……」


リョーマに優しく頭をなでられて、いつもと立場が逆じゃんと思いつつも目を閉じる。




眠気は、意外にも早く訪れた。