「一緒に暮らしてると、相手の行動パターンって大体わかってくるじゃない。それから考えて、今のリョーマだったら十中八九頭そのままで来るなって思っただけ」


伊達に一緒に暮らしているわけじゃない。
リョーマのほんのちょっとした癖だって、今ならずいぶんわかるようになった。


   多分もう、私は家には帰れない。
それはものすごく悲しいけれど、こんな日常が過ごせるのは、それなりに幸せ。


小さい幸せって、とても大切なもの。
今なら、そう思えるから。


かちゃりと音がして、部屋に入ってきたリョーマを見て、得意げにみんなに微笑んでみせた。


   ほらね」


頭からタオルをかぶってはいるけれど、ほとんど濡れねずみ状態のリョーマ。
……半裸はお姉さんには目の毒だよ……!


「リョーマ、こっちおいで」


タカさんに手伝ってもらってベッドに腰かけ、リョーマを膝元に座らせる。
フジコにドレッサーからブラシをパスしてもらって、ひとまずはタオルでわしゃわしゃと水気を取っていった。


「ちゃんと乾かしてきなさいよ」
「別にいいじゃん」


生意気な口をききながらも、リョーマはおとなしくベッドにもたれたままだ。


こういうところは可愛くてたまらないんだけどね……!
ていうか、リョーマさえよければ、毎日世話焼いて一緒に寝ても全然構わないんだけど!


やっぱり、もうすぐ大学生とこの間まで小学生では、犯罪になってしまうだろう。
ブラシを使って丁寧に乾かして、つげの櫛で仕上げると、驚くほどさらさらつやつやになった(さすが私!)


「すごいにゃ、ちゃん!おチビ、超くせっ毛なのに」
「あれ?英二君だ」


いつの間に。
というか、今までどこにいたんだ?


「おかゆ作ったよ。食べられる?」


英二の後ろからひょっこりと顔を出したマザーの手に、湯気を立てているおかゆがあった。
その脇にはちょこんと梅干しもおいてあるけど……食欲ないなあ。


「うーん……」
「食べろ。治るものも治らないぞ」


渋っていたら、部長にじろりと睨まれた。
フジコも笑顔でみて来るし、ここのNo.1とNo.2はどうしてこう無意味に怖いんだ!?
英二が喜々として食べさせてくれようとするのを丁重にお断りし(ものすごく駄々をこねられた)、おかゆを無理矢理口に運ぶ。




   あ、おいしい」




意外に結構いける。
だからといって、たくさん食べられるわけではないんだけれど。
少しだけ食べてれんげをおくと、英二がめちゃめちゃ不満そうな顔になった。


「駄目だよ、もっと食べなきゃ!」
「ごめん、もう食べられないや」


ごめんねともう一度謝ると、英二も渋々黙る。


ちゃん、一回シャワー浴びてきたら?身体、べたついて気持ち悪いでしょ」
「でも、かえって悪化するんじゃないか?」


心配したマザーが口をはさんでくれても、最強フジコは何のその。


「すぐにあったかくすれば大丈夫じゃないかな。   ちゃん、替えのパジャマはある?」
「うん、リョーマが知ってる……はず。リョーマ、わかるよね?」
「当然」
「ちょっと待て」


ごく普通の会話をしたはずなのに、何故か桃が突っ込みを入れた。


「どしたの?」
「なんで越前がんなこと知ってるんスか」


え、パジャマの位置を把握しているのって、そんなに変なことなの?
わかっていないと、気温が急激に変化した時に困ると思うんだけど……。


「だって、パジャマとかタオルとかって、全員分まとめてしまっておくじゃない。みんなは知らないの……?」首を傾げてそう訊いたら、部長がほっとしたように息をついた。
「そういうことか」
「どういうことさ。   んじゃリョーマ、あとよろしくね」
「ん」


下着は自分で出すしかないけど……まさか、みんなの目の前で引き出しから取るわけにはいかない。
洗濯物、もう乾いているよね……。


薫君が送ってくれようとしたけれど、気持ちだけ受け取って丁重に断る。
そんなに重病じゃないし、何より下着を取っていけない……!












シャワーを浴びてさっぱりして、リョーマが用意してくれていたパジャマに着替えたところで、見計らったようにドアがノックされた。


、いい?」
「どうぞー?」


声をかけるが早いか、タオルをつかんだリョーマが入ってきて、何故かいきなり拉致られました(イヤー!)
ずんずん進んで私の部屋に着いて、カーディガンを着せられてベッドにコアラ座りさせられて、マザーにわしゃわしゃ頭をふかれました。


「ちょ、自分でできるよ!」
「病人はおとなしくしてるもんだよ!」


慌てて逃げようとしても、楽しそうな英二にがっちりとおさえられてしまって、できそうにない。


「くそう……!」


治ったら覚えてやがれ!!
みんなして甲斐甲斐しく世話を焼かれながら、そう固く心に誓ったのだった。